18.side キース
腕の中で、天使が眠っている。
鼻が少し苦しいのか、ぷすーぷすーという可愛らしい寝息が聞こえてきて微笑ましい。
俺が笑うと、周りの空気が凍りつくから笑わないが。
不意に「ん...」と天使が身じろいだ。
もぞもぞと俺の胸元に身を寄せ、きゅっと丸くなるとまた寝息が再開する。
「っ...」
身悶えしそうだったが、天使の眠りを妨げるようなことは出来ないので耐える。
そうだ、耐え続けろ、俺。
「キース副団長、どうするんですか?」
「目が覚めて1番に見るのが副団長の顔なんて、また気絶しちゃいますよ」
部下たちからそんな声が飛ぶ。酷い言われようだ。
しかし、本当のことだ。
いや...本当にそうだろうか。
この子は、まっすぐに俺と目を合わせてくれた。
驚いた様子で呆けていたが、ちゃんと会話ができた。
子どもに泣かれなかったのは久しぶりだ。
しかし、すぐにフードで顔を隠してしまったのは、やはり俺の顔が見るに絶えなかったからだろうか...
「ずいぶん綺麗な子ですよねぇ」
「ほんとだよなー」
「どっかのお貴族の隠し子とか?」
「それにしちゃあ、身なりがなぁ。...それに、剣の腕が立ちすぎる」
「あれは、すごかったな」
「...正直、勝てる気がしねぇ」
「何者なんだろうなぁ」
部下たちが思い思いに考察する。
何者なのか。
見事な剣技だったが、取り落とした短剣を拾うと特別なものではなく、一般に量産されているものだった。
よくこれであの魔物を倒したものだ。
こんなに美しい人間が、魔術を使わず、己の体を武器に戦っているのを見たことはない。
本当に、軽やかに踊っているかのようだった。
力強さとは反対の、不思議な闘い方。
鮮烈に、脳裏に焼き付いた。




