17.
「...きみ」
声をかけてきたのは、おそろしく顔のいい男の人だった。
一番に目を引いたのは、およそ日本人にはありえない見事なプラチナブロンド。緩くひとつにまとめられた長い髪は、毛先まで手入れが行き届いているのが見てとれる。
同じ色の眉は凛々しく、宝石のような紫色の瞳を長い睫毛が囲っている。すっと通った鼻筋と、ぽてっとした唇。
人形みたい。コスプレ...?
――目が紫の人...初めて見た。
ぽかんと口を開けて見入ってしまうのも仕方ないと思う。なんて綺麗な人だろう。
こんな、ゲームの中のグラフィックそのものみたいな人がいるんだ。
「あの、その、大丈夫...だろうか?」
気づかうように声をかけられ、はっとする。
相手は困ったように眉を下げ、そっと視線を逸らした。
しまった。不躾に見すぎた。
「す、すみません」
「いや...こちらこそ」
しかも、日本語が通じる。
このビジュアルで流暢な日本語。
すっごい違和感。
なんとなく気まずくて、背中に落ちていたフードをそっと被り直した。あまりの美形に気後れしたのもある。
長身な彼からは、私の平凡な地味顔は見えなくなっただろう。
フードの影からそっと覗き見ると、人形のように美しいその人は、なぜか沈痛な面持ちで俯いていた。
...ため息が出るほどに美しい。
服装を見るに、警備の人か何かだろうか。
防具と剣。軽装っぽいけど、武装してる。同じような格好の人達ばかりだから、制服なんだろうな。
いや、そうかもしれないなーとは思ってたけど、
ここ、日本じゃないっぽい。
***
少し遠い目をしていると、また声をかけられた。
「魔獣の討伐、見事でした。感謝します」
魔獣...?
いや、そんなことより、その控えめな笑顔と、真っ直ぐな感謝の言葉に胸を撃ち抜かれた。
膝から崩れ落ちそうだ。
実際、とてもとても疲れていた。
ここ数日、飛んだり跳ねたり回ったり、キャパ以上の運動量に体が悲鳴をあげている。剣を握る腕も、もう限界。
カラン。
ほっとして気が抜けたこともあって、短剣を取り落としてしまった。次いで、ぐらりと体が傾ぐ。
「っ...大丈夫ですか、怪我を...?」
支えてくれたのは逞しい腕。細身かと思ったが、意外や意外。しっかりと抱きとめてくれたので、これ幸いと身を委ねてみる。
男の人の鍛えられた体だ。
こんな美形に触れる機会は二度とないだろうし、なんだかいい人そうだし、私、弱ってるし、疲れたし、眠いし、お腹空いたし、なんかもう...良しとしよう。甘えてしまおう。
お風呂入ってないから臭いかもしれないけど、ごめんなさい。
森を抜けた。目標達成。もう、限界だ。
私は、全身の力を抜いて意識を手放した。




