第5話 攻撃力
俺は、鏡に映った▽へ触れて、鑑定スキルを使ってみた。
ようするに俺のステータスである。
――――――――――――――――
【鑑定】
名前: 本田 祥吉
年齢: 29(肉体年齢:17)
HP: 20
MP: 0
攻撃力: 7(銅の剣+30)
守備力: 12
身のこなし: 16(風の腕輪+200)
魔法: なし
スキル: 鑑定、建設、索敵、索アイテム、成長率3倍
EX:50
――――――――――――――――
肉体年齢17歳か。
たぶん一番体力がある状態を再現されたんだろうな。
部活やってた時だから。
あと、こうして見ると『風の腕輪』のありがたみがわかる。
元の身のこなしが16のところに+200ということは、やっぱすごい効力なんだろう。
「問題は攻撃力だよな……」
そう。
元の攻撃力が7だし、銅の剣だってそんなに強い武器じゃなさそうだ。
これじゃオークを倒せなかったのもうなづける。
「攻撃力ってどうやって上げればいいんだ?」
と思ったので、『攻撃力』を鑑定する。
≪攻撃力 = 敵へ攻撃する力。武器やパワーストーンで高めることができる≫
パワーストーン?
≪パワーストーン = 力を高めるアイテム。ひとつ消費すると攻撃力を+10する≫
なるほど、アイテムか。
それならレア度☆×6の『索アイテムスキル』があったな。
というワケで、俺はひとまずモンスター・ハントは中断して、攻撃力を高めるアイテム『パワーストーン』を集める方針に切り替えた。
◇ ◇ ◇
索アイテムスキルを使い、領地の辺りを探索していると、なんとなくここらはずっと森なのだということがわかってきた。
今の俺は『風の腕輪』のおかげでかなり速く移動できるのだけれど、行けども行けどもずっと木ばかりで、人里の気配がない。
【索アイテム】
―――――――――――――――
◇
☆
領
◇
―――――――――――――――
【索アイテム】縮小×10
―――――――――――――――
◇
◇
◇
◇
☆
◇
◇
◇
―――――――――――――――
アイテムはもっと広い範囲であっちこちに散らばっているようだ。
場所がわかってもたどり着くのが大変である。
それで行ってみると『薬草』だったり、『毒消し』だったり、『怪しいキノコ』だったりして、なかなか骨が折れた。
しかし、そのうちのひとつで。
木の根元に緑色のクリスタルが埋まっているのを見つけた。
パアアア……☆
かすかに光っている。
あやしく思って鑑定すると≪パワーストーン≫とあった。
「やった! これだ!!」
そして、最初のひとつ見つけると、手に入れたことのあるアイテムは指定して探知することができた。
【索アイテム】縮小×100
―――――――――――――――
◇ ◇
※
◇
◇
☆
◇◇
◇
―――――――――――――――
※が指定したパワーストーンだ。
ただ、パワーストーンはめったにあるアイテムではないようだ。
縮小×100でひとつしかない。
場所はわかっても、こいつを求めて長い距離を行かなければならなくなる。
その日は、なんとか全部で3つのパワーストーンを手に入れた。
「さて、ちゃんと攻撃力があがっているか確認しよう」
領地に帰ると、俺は小屋の鏡の前で自分を鑑定してみた。
すると、攻撃力のところにこうある。
≪攻撃力7→97(銅の剣+30)≫
「へ? パワーストーン1個で+10なんだろ? 3個だから+30で37じゃないの?」
一瞬、鑑定がバグったのかと思ったが、よくよく考えてみるとガチャで『成長率3倍』というのを引いていたのでその効果か。
最初は『成長率3倍』が『索敵スキル』と同じレア度☆×6というのが過大評価のように思われたが、とんでもない。
こうなってくると大変ありがたい特典である。
次の日。
起きるなりにガチャを引くと『成長率3倍』が出たので、3倍×3倍で9倍になるのかと思われたが、ステータスを見るとどうやらそういうワケではなさそうだった。
成長率はそのまま3倍で、ダブったものは無効というワケだろう。
レア度が高くても同じものを引いてしまってショックというのはガチャの『あるある』である。
で、その日はパワーストーンを求めつつ、遭遇したモンスターと少し戦ってみた。
領地の回りはアンデッドが多いのだけれど、場所が変わると出現モンスターも変わるらしい。
例えば、レッド・アンデッド。
これもアンデッドはアンデッドなのだが、白い骨に赤いラインが入っているのが違いである。
そして、一匹で魔石が10個出る。
このレッド・アンデッドを一匹倒して、それからゴブリンも一匹倒した。
攻撃力が高まっているからだろうか、どちらも一撃でやれたぜ。
しかし、≪魔石15≫とあったゴブリンの躯の上に、
≪※解体の必要があるモンスターです≫
と表示され、残念ながらそれはどうすることもできない。
解体なんてできねえし……
結局ゴブリンの魔石15はあきらめざるをえなかった。
一方。
パワースト―ンの方は、その日も3つ手に入った。
でも、近くのものから取っていくので、次第に遠い距離まで取りに行かなければならなくなる。
「明日はもっと遠くまで取りに行かなきゃならないだろうな」
そう考えつつ領地に帰ると、
≪攻撃力97→187(銅の剣+30)≫
と攻撃力の伸びを確認する。
「よしよし、ちゃんと伸びてる」
それと一応レッド・アンデッドを倒した時に得た魔石が10個あるので建設スキルで消費しようと思う。
「うーん、どうしようかな」
既存施設のレベル上げに消費しようかと思ったけど『祠(小)』というのが建設可能だったので、試しに建ててみた。
――――――――――――――――
≪祠(小)を建設しました≫
□□□
井□□
家□祠
――――――――――――――――
鑑定によると、この『祠(小)』をレベル3まで上げると『祠(中)』が開放になるらしい。
また、『祠(中)』を建設してレベル3まで上げると『祠(大)』が開放になり、『祠(大)』までレベル3に上げると、『お社(小)』が建設可能になる。
そして、お社(小)が建てば、『女神降臨』によって、(一体どういうふうにやるかはわからないけど)領民を産んでもらうことができるはずだった。
で、その次の日のことなんだけど……
ガチャで『銀玉』が出た。
「よっしゃ!」
と、ひとりガッツポーズする俺。
しかし、銀玉でダブったら目も当てられないぞ。
前の銀玉は『鑑定スキル』だった。
どうか、鑑定以外を……
そう念じながら玉を開けるとこうある。
≪レア度☆×9 アイテムBOX≫
「やった! これは使えるヤツだろ」
鑑定で調べると、アイテムBOXはその名の通りアイテムを収納するスキルである。
ようするにネコ型ロボットのポケットみたいなものだが、スキルであることが大きな違いだ。
つまり、俺が『このアイテムを収納したい』と思えばそれは亜空間へ収納され、『取り出したい』と思えば手元に出てくるスキル。
何かアイテムから出し入れするわけではないから『スキル』なのである。(※ただし、生きている物は収納不可)
そして収納した物の時間は内部で停止状態らしい。
さて、それで思い出したのは昨日倒したゴブリンの躯である。
「解体することはできないけど、これで倒したモンスターを保存しておくことはできるかもしれない」
そう思って、パワーストーンを拾いに行く道中、途中でゴブリンの躯を回収し、アイテムBOXへ収納してみた。
収納はうまくいった。
ゴブリンの死骸はちょっと腐敗していたのであんまり気持ちのよいものではなかったけど、時間停止しているし、触れるワケでもなかったからまあセーフだ。
この日はパワースト―ンを4つ回収し、倒したゴブリンの躯を3つ回収した。
◇ ◇ ◇
それから10日ほどがたつと、この辺りのパワーストーンはあらかた取りつくしてしまった。
≪攻撃力1217(銅の剣+30)≫
攻撃力はずいぶん上がったと思う。
「さすがにもうオークくらい倒せるんじゃないかなぁ」
と思ったのだけど、あれ以来オークには遭遇しなかった。
遭いたいと思った時にはむしろ遭えないのがモンスターである。
「ちょっと遠出してみるか」
というのは、この10日間のガチャで遠出にかないそうなアイテムがけっこう出たからでもあった。
レア度☆×2『1000フレン』
レア度☆×2『銅の剣』
レア度☆×7『通語スキル』
レア度☆×2『携帯食10日ぶん』
レア度☆×1『薬草×10』
レア度☆×7『建設スキル』
レア度☆×1『テント』
レア度☆×2『ランタン』
レア度☆×2『魔石50』
レア度☆×4『薬草(上)×5』
ダブって意味のない建設スキルとかもあるけど、こうして見るとアイテムはダブってて問題ないことが多いよな。
そして、レア度が低くても、携帯食、ランタン、テントなんかは遠出にありがたい。
マッチがそろそろ切れそうなのが気がかりだが、一日で行って戻ってこられる辺りのパワーストーンは取り尽くしてしまったという問題もある。
それに、どうやら領地から遠ざかれば遠ざかるほどモンスターが強くなるっぽいのだ。
ちなみに現状、領地はこんな感じ。
――――――――――――――――
□□□
井田□
家□祠
家=小屋 レベル1(50%)
井=井戸 レベル1(70%)
田=田んぼ レベル2(20%)
祠=祠(小) レベル3(10%)
――――――――――――――――
ガチャやアンデッド系の魔石で少し開発されたけど、まだまだ魔石が足りない。
もっと強いモンスターを倒す必要があったし、そのためにも遠出できるようにしておきたいというワケ。
ただし、1日1回のガチャ券が10日で期限が切れるので、なるべく10日以内に帰って来たいところではある。
「じゃあ女神さま、行って参ります」
こうして、神棚へ柏手を打つと領地を後にした。
俺は森を行く。
索アイテムでパワーストーンを、索敵であの△を探しながら、である。
今の状態でオークと戦ってみたいと思ったからな。
ただ、パワーストーンはいくつか見つかるけれど、一日行っても、二日行っても△は見当たらなかった。
「なんだよ、この前は簡単に遭えたのに……」
とつぶやいた時である。
ウウウウ……
聞き覚えのある唸り声が。
索敵に△はないけど?
と思って声の方へ駆けると、果たしてオークと冒険者風に武装した人が4人これと対峙していた。
魔法を使う男が一人、少し太った拳法を使う男が一人、僧侶風の男が一人、戦士風の女が一人である。
「やべっ、マスクしねーと……」
人がいたので反射的にそう思ったが、そういえばここは異世界だったと苦笑いする。
「ウウウウ!」
くだらないことでモタモタしていると、冒険者たちは一人、二人と倒れていく。
「あっ、よく見るとあのオーク、色が違うぞ?」
そう思って鑑定すると、
≪オーク・メイジ 魔石1000≫
とある。
これはただのオークより全然強そうだ。
これはまだやめておいた方がいいかもしれない。
「アイツはプロの冒険者たちに任せよう」
そう思って草影から戦いを見ていたのだけれど、冒険者たちは三人が倒れ、いよいよ戦士風の女がひとり残されるのみとなっていた。
キン! キーン!
女戦士はパンツのような鎧にたくましいお尻をしていて、剣の振りも鋭い。
互角の戦いを繰り広げているように思われた。
仲間は倒れてしまっているけれど、これならいけるんじゃないだろうか?
「ウウウ!!」
しかし、どうにもオーク・メイジの方がタフである。
最初は拮抗していた戦況も、ダメージの蓄積と共に女戦士の方は次第に押されていく。
「っ!……」
やがて魔物の剛腕が彼女の腹筋を殴ると、女戦士は膝をついてしまった。
起き上がれないようだ。
「ウッ、ウッ、ウッ!」
オーク・メイジは豚鼻を鳴らすと、倒れた女戦士だけを抱え、立ち去って行こうとする。
殺さずに巣へ持ち帰ろうとしているのだろう。
女戦士は暴れるが、もはや抵抗するだけの力を残していない様子だった。
「お……おい!!」
そんな時。
気づくと俺はそちらへ足を踏み出していた。




