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絆値、測定不能。〜親友4人でまとめて異世界転生〜  作者: ある


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第86話 角の実力査定

「これより、新規登録者ヴィクの、実力査定を行う!!」


ギルド裏の訓練場に、ヘクトルさんの声が響いた。


査定は、本来、事務的なものである。模擬戦を少々、魔法の出力を少々、それで終わり。そのはずが、柵の外は満員だった。「魔族の実力査定」なる歴史的イベントを、フォルテの野次馬が見逃すはずもない。ドワーフの賭け板には『査定でヘクトル教官が転がされる』1.8倍の文字。教官への信頼が、ひどい。


「賭けるな!!査定だぞ!!」


「(教官、あの倍率、ちょっと傷ついてる顔ね)」


開始前、俺は応援の口上を買って出た。


「案ずるな、我が眷属よ!!貴様の背には、常に我らの——」


「圭吾。緊張が、増える。黙っててくれ」


「応援すら却下だと!?」


「ん。ヴィク、これ。げんきのでる、あめ」


「……もらう」


「兵站長の飴は受理されるのか!!口上と飴の、何が違う!!」


「「「「実用性」」」」


「では、模擬戦から。……手加減は無用だ、角の。俺も、しない」


「……ん。分かった」


ヴィクは、腰の短剣を、抜かなかった。素手のまま、すっ、と構える。


「?武器は」


「要らない。……あんたの査定は“実力”だろ。なら、私の実力で、受ける」


「ほざけ!!開始ッッ!!」


——結果を、先に言う。


模擬戦は、九十秒で終わった。


ヘクトルさんの初撃(本気の踏み込み)を、ヴィクは半身で流した。二撃目を、指二本で軌道を逸らした。三撃目の瞬間、ヴィクの姿が、掻き消えた。


「なッ」


「終わり」


気づけば、教官の背後に回ったヴィクの指先が、首筋に、ちょん、と当てられていた。紫紺の光を、灯さないまま。


訓練場が、しん、とした。


「(……おい。俺たちの監視長、魔法なしでもあれか)」


「(五年間の一人旅、伊達じゃないのよ)」


「(そういえば最初に会った頃から、屋根の上を音もなく走ってたわね……)」


ヘクトルさんは、しばらく固まって、それから、天を仰いだ。


「……また、俺は……また、規格外に当たったのか……この支部は、規格外の巣か……」


「教官!賭け、的中ゥゥ!!」


「黙れ野次馬ァァ!!」


——続いて、魔法の出力測定である。


測定用の的(岩)に向かって、一発。じいさんが計器を構える。


「では、ヴィクさん。軽くで結構ですじゃ」


「……軽く、だな。分かった」


紫紺が、瞬いた。


的の岩が、消えた。砕けたのではない。上半分が、綺麗に、消滅していた。断面が、鏡みたいに滑らかだった。


計器は、と見れば、じいさんの手の中で、白い煙を上げていた。


「「「「…………」」」」


「……か、軽く、って言ったよな、私。今の、かなり抑えたんだが」


「支部の出力計は、今月これで三台目ですじゃ……ひなたさんの時と合わせて、計器予算が尽きましたじゃ……」


「(また私たちのせいで備品が)」


「(“私たち”に数えたわね、今、自然に)」


——査定結果の発表は、その場で行われた。


ヘクトルさんは、査定板に何かを書き殴り、ばん、と掲げた。


『査定結果: 測定不能。ではなく、Fランク規定の測定範囲を超過。よって暫定Cランク(パーティ同格)を上申する』


「「「「おおー!!」」」」


「Fランクの査定基準では、測れんということだ!!文句あるか!!」


「異議なーし!!」


「賭けの配当ォォ!!」


「だから帰れ!!」


柵の外では、配当の精算が始まっていた。


「教官が転がされる、的中!!1.8倍!!」


「わし、外した……“教官が意地を見せる”に張ったのに……」


「教官への信頼で損をする賭場、世知辛いのう!!」


「全員、聞こえてるからな!!」ヘクトルさんの耳が、ぺしゃんと伏せられていた。俺たちの査定のたびに、教官の何かが削られていく。すまない、教官。


かくして、冒険者ヴィクは、登録二日目にして暫定Cランクとなった。ギルド史上最速である。台帳の備考欄が、また、賑やかになった。


——帰り道。


「……なあ。ひとつ、白状していいか」


ヴィクが、ぽつりと言った。


「実は……ちょっとだけ、緊張してたんだ。査定。……人前で、隠さずに力を使うの、生まれて初めてで」


「ほう。あれで緊張してたのか」


「したさ!!……でも、途中から、気づいたら、楽しく、なってた。隠さなくて、いいんだって思ったら、体が、勝手に……」


「……そうか」


「五年間、私は、力を“抑える”練習ばっかりしてきた。……これからは、逆の練習が要るな。“ちゃんと出す”練習が」


「なら、ちょうどいい相手がいるぞ」


「?」


「俺たちの大砲だ。出力お化け同士、稽古をつけ合え。ただし、屋外でな」


「ん。いっしょに、どーんって、しよ」


「ど、どーん……ま、まあ、手加減は、するけど……」


「議事録に書くわよ。“出力お化け二名、合同稽古は街の外・許可制”。太字でね」


俺たちの戦力表に、また一行、恐ろしい項目が増えた。


なお、その晩の観測日誌には、新しい欄がひとつ、増えていた。ヴィクの手で、几帳面な字で。


『本日の“隠さなかった”回数: 三回。——記録開始』


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