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絆値、測定不能。〜親友4人でまとめて異世界転生〜  作者: ある


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第78話 楔と、芯抜き

本波と、俺たちの仕掛けは、ほとんど同時に始まった。


「隼人ォ!!行けェ!!」


「おおおおおッッ!!」


エースが、群れの正面に、単騎で突っ込んだ。無謀に見える。だが、これが楔である。群れの操縦者は、最大の脅威に、群れを集める。集めた分だけ、脇が、空く。


「今よ!!圭吾!!」


「おう!!」


俺と沙耶は、空いた右脇を、罵り合いながら駆けた。


「ほら走る走る!!あんた朝の観測をサボった分の埋め合わせよ!!」


「サボってない!!あれは戦略的二度寝だ!!」


「言い訳に戦略をつけるな!!」


「そっちこそ、昨日の宿で俺の毛布を強奪しただろ!!」


「あれは接収!!寒がりは正義!!」


「行政用語で罪を洗うな!!」


バフ全開。狼型が二頭、こちらに逸れる。が、遅い。俺たちの足は、今、羽根である。


「ひなた!!位置!!」


「ん。ここ」


畑の脇の、干し草の山の上。投擲手が、最短射線の高台に立った。手には、黒パン。


熊型が、隼人の楔に気を取られ、胸を、開いた。


「射線、通った!!ひなた、胸の奥だ!!“一番まずそうなの”を、撃て!!」


「——とう」


ゴッッ!!!と。


夕闇を裂いた一撃は、狼型二頭の隙間を縫い、熊型の胸に、深々と、めり込んだ。


熊型が、棒立ちになった。


胸の奥で、ぱきり、と何かの砕ける音がした。黒パンが抉じ開けた裂け目から、粘つく色のものが、霧になって噴き出し、風に散っていく。——芯だ。砕けた。


——直後。


群れが、止まった。


畑を埋めていた魔物が、一斉に、糸の切れた操り人形みたいに立ち尽くし、それから、きょろ、きょろ、と辺りを見回した。濁っていた目から、淀みの色が、潮のように引いていく。


「……操縦、切れた」


「ん。“まずそうなの”、きえた」


我に返った魔物たちは、蜘蛛の子を散らすように、北へ、東へ、散っていった。もともと、戦いたくて来た獣は、一頭もいなかったのだ。ここに居た全部が、操られて、押し出されて、歩かされただけの、被害者である。


見張り台の隼人が、剣を担いだまま、ぼやいた。


「……なんかよ、俺、途中から気づいちまったんだよな。あいつら、目がもう、怯えてんの。操られてるだけで。……斬った分は、仕方ねえけど、さ」


「ああ。だから、芯抜きなんだ。頭数を減らす戦じゃない。“手綱を切る”戦だ」


「勝ちどきは、なしだ。……見送ってやれ」


村の衆は、木柵越しに、去っていく群れを黙って見送った。誰かが、ぽつりと「……あいつらも、大変だなあ」と言った。この村の連中の、こういうところが、好きである。


そのとき、だった。


「けーご!!」


ひなたの声が、裂けた。


「むらのなかに、さんびき!!みなみ、はしってる!!」


血の気が、引いた。


南。村の、南側。防衛線の、ない側。そこにあるのは——


「避難所!!」


芯が砕ける寸前、操縦者は、最後の命令を出していたのだ。三頭の大型に。防衛線を迂回して、一番柔らかい場所を突け、と。命令が連れて行ったのは、そこまでだ。


手綱は、あの三頭でも切れている。だが切れた時、あいつらはもう村の中にいた。濁りの引いた目に映るのは、知らない壁と、知らない火と、逃げ惑う人影。大きすぎる獣が、狭い場所で、怯えている。……出口を探して、暴れる。その先に、子供がいる。


「走れェェ!!」


走った。全力で。バフの足で。それでも、村の反対側までは、遠い。


視界の先、集会場の前の広場に、三つの巨影が躍り込むのが見えた。猪型が二頭、狼型の大物が一頭。避難所の戸口には、逃げ遅れた子供が、二人——


「間に合わ——」


「間に合わせる」


凛、と。


聞き慣れた声が、広場に響いた。


避難所の戸口の前に、小柄な影が、立ちはだかっていた。


フードの、我が眷属である。両手を広げ、子供二人を背に庇い、三つの巨影を、正面から見据えて。


「(馬鹿!!一人で三頭は、死ぬ気か!!)」


「(いや、見ろ、圭吾)」


ヴィクの構えは、俺たちが知っている「格の睨み」ではなかった。


腰を落とし、両手を前に。指先に、見たことのない色の光が、集まり始めていた。


「子供たちに、指一本、触れさせない」


低い声が、歌に、変わった。


北方古語の詠唱、ではない。もっと短く、もっと鋭い、命令形の一節。俺が講座で習った範囲で言えば、それは——


“燃えよ”。


猪型が、突っ込んだ。


——広場が、光った。


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