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絆値、測定不能。〜親友4人でまとめて異世界転生〜  作者: ある


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第77話 コルン村防衛戦

群れが丘を下り始めた時、コルン村の防衛線は、できていた。


村の北側、畑の手前に、荷車と木柵の即席の壁。壁の後ろに、鍬と斧の若い衆。見張り台に隼人。壁の前に、俺と沙耶。避難所(集会場)にヴィクと、子供と年寄り。そして、もうひと隊。


「ちちちっ!!」


村中の地面から、ホリネズミが湧き出して、一斉に南の巣へ走った。警報網、作動。群れの位置と速さが、ネズミの波の形で、手に取るように分かる。


「餌場条約、最高の配当ね!!」


「動物との縁も、縁のうちってことだ!!来るぞ!!第一波!!」


夕闇の畑を、影の群れが押し寄せてきた。狼型が先頭。三十、四十。数えるのを、やめた。全部の目が、淀みの色に濁っている。


「よし、沙耶ァ!!開戦だ!!口を回せ!!」


「言われなくても!!ちょっと、あんたさっき私の分の干し肉食べたでしょ!!」


「今それか!?食った!!うまかった!!」


「開き直ったァ!!」


罵倒が回る。バフが乗る。大群相手の、正当な非常時である。俺と沙耶は壁の前を旋回し、群れの先頭を、罵声と挑発で引きつけた。


「隼人ォ!!中央!!」


「あいよッ!!」


見張り台から飛び降りたエースが、群れの先頭に突っ込んだ。人生三番目の調子の剣が、狼型を三頭まとめて薙ぎ払う。


「ひなた!!右翼、猪型二頭、抜けてくる!!」


「ん。——“えんりょの、いちげき”」


ゴッ!!ゴッ!!と、二連の鈍い音。壁を抜けかけた猪型二頭が、眉間に黒パンを受けて、その場に崩れた。足元に置くのが遠慮の一撃である。眉間は、遠慮ではない。


「兵站長!!それは講座で言う“事故”では!!」


「ん。じこ。……ふかこうりょく」


「俺たちの大砲が今日も強い!!」


「村の衆!!壁を越えた奴だけ叩け!!深追いは無用!!」


「「「おうよ!!」」」


黒パン速習講座の成果は、正直、五発に一発だった。だが、五発に一発でも、数が撃てば壁になる。祭りの日に鍛えた投擲窓口(射的)の経験者が、意外な戦力になった。


「ゴッ!!当たった!!当たったぞ、わし!!」


「ようしジジイ、次はわしの番じゃ!!」


「シニアの皆さん、弾は計画的に!!」


シニア射撃隊は、そのうち、勝手に階級を名乗り始めた。


「わしは今日から“パン大隊長”じゃ!!」


「なら、わしは“パン元帥”じゃな!!」


「階級の天井が早い!!」


「けいご様!!弾の補給!!」


「特売の黒!!二十個!!大事に撃ってください、元帥!!」


そして、避難所の炊き出しからは、湯気と、おばあちゃんズの声援が飛んでいた。


「けいご様ー!!腰が入っとらんよー!!」


「今の駆け込み、88点!!もうひと声!!」


「戦場で採点返しをされる日が来るとは!!」


「あんた、蒔いた種でしょ!!」


「手厳しい!!」


戦況の合間、俺は避難所に、声だけの伝令を送っていた。


「避難所ー!!状況どうか!!」


「異常なし、だ」窓の奥から、聞き慣れた声が返る。「子供が十二、年寄りが九。全員、僕の視界の中だ。……それと、子供たちが、外の音を怖がらないように、歌をうたわせてる」


「歌?」


「“からまりしものは、といてはならぬ”。……あの遊び歌だ。皮肉なもんだろ。この状況で、いちばん効く子守唄が、これなんだ」


窓の奥から、細い合唱が、戦場の縁まで流れてきた。妙なもので、その歌声を背中に聞くと、こちらの足も、よく回った。


——第一波は、捌けた。


だが、視えていた。群れは、退いていない。畑の向こうで、円を描くように回りながら、数を集め直している。


「……変だぞ、やっぱり。獣の群れは、こんなに統率よく“再集結”しない」


「ん。むれのなか、いっこだけ、“すごくまずそうなの”が、いる」


「……操縦席、か」


俺は、視線を絞った。群れの渦の中心。ひときわ大きな、熊型の影。その分厚い胸の毛が、一箇所だけ、渦を巻くように割れている。割れ目の底から、粘つく色の光が、脈を打つように漏れていた。迷宮の主の口の奥で視た、あれと、同じ色だ。


「見つけた。群れの“芯”だ。熊型の胸の奥。あいつが中継して、群れ全体を操ってる」


「なら、話は早いわね。……氾濫の時と、同じ勝ち筋」


「ああ。芯を、撃ち抜く」


問題は、距離と、護衛だった。芯持ちの熊型は、群れの一番奥。しかも周りを、狼型が幾重にも囲んでいる。


「ひなた!!投擲の距離、届くか!!」


「……とおい。それに、むれが、じゃま。まっすぐの、みちが、ない」


「なら、道を作る!!隼人!!楔になれるか!!」


「三番目の調子で、どこまでやれるかな……ってのは冗談で!!」


エースが、にやりと笑った。


「——道くらい、いくらでも!!」


「よし!!第二波が来る前に、仕掛けるぞ!!作戦名——」


「「「言ってる暇ない!!」」」


「せめて聞け!!」


畑の向こうで、群れの渦が、解けた。


第二波。本波が、来る。今度は、全頭、一斉に。


「総員ンン!!——俺たちの流儀で、行くぞォォ!!」


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