送られてきたもの
仙野多摩を奪還し、中央方面軍を壊滅させた晶一行を中荒隅で待ち受けていたのは、到底信じられない景色だった。
彼方に京武士。こちらに京武士。どこを見ても京武士。
仙野多摩に向かったはずの兵以上が居座っており、全員、狭すぎる中荒隅にどうしたものかと戸惑っているようである。
自分の頭をぐしゃぐしゃと掻いて、晶は軍議室に入った。
「これは何事にござるか!?」
「おかえり。晶」
晶が帰って、一番最初に目があったのは、宇津木琴音であった。
「あ……姉さん!?」
「晶。なんて呼び捨てにしちゃもうダメなのよね。
中央方面軍壊滅、おめでとう存じます。晶将軍」
「よ、よしてくだされ姉さん。しかし……どうしてここに……?」
見渡せば、横になってる菊千代、あたふたしている実峯そして……見覚えのある子供が座っている。
子供は、琴音の隣でソワソワと落ち着きがない。非常に身なりの良く、育ちの良いお子様なのであろう。
ハテ……誰だったか……
「……み、光人殿下にござるか……!!」
晶は咄嗟にその場に居直った。
京本光人。大将軍光国の一人息子である。
それがどうしてここ中荒隅にいるのだ!?
晶の頭で、嫌な言葉が再生される。
『戦況をひっくり返す重要物資が送られてくる』
殿下のことか!? 殿下がどうして戦況をひっくり返す重要物資なのだ!?
決戦を乗り越えて早々に、晶は目を回して倒れそうだった。
「それより、至急兵営を作れってさ。ここに三千の兵を常駐させるんだと」
相変わらず興味なさそうに菊千代が言う。
「三千!! そんな無茶にござる!! 中荒隅にかつてそんな人口がいたことなどござらん!!」
「まあ、加賀美から前々から言われてたし。土地なら余ってるからさ。なんか適当に作りなって伝えておいたよ。
もちろん自分で住むんだから自分達に作らせるよ。ここには京武士も農民もないからね」
「姉さんは……それで良いのでござるか……?」
「ええ。中荒隅の暮らしのことは聞いてます。
少し慣れるのに時間がいるけれど。今やここが京国の希望ですから」
それと、忠盛殿の通訳は今後誰が執り行うのだ!?
晶は不安が絶えない。
「……あ、僕用事思い出したわ」
突然菊千代が立ち上がり、どこかに消えていく。
すると、入り口の襖がガラリと開いた。
「こんばんわー」
入ってきたのは、いつぞやか『天から降りてきた』男である。
今は村の経理を任されている。
「菊千代様ー!? なんですかこの『高揚品代』って言うのはー!!
あと木材をこんなに買ってどうするつもりなんですかー!?」
喋りながら、男は菊千代の部屋まで歩いていく。
「これから……賑やかになりますね……中荒隅は……」
まさか殿下の住む村になるとは……
晶はもはや出てくる言葉が見つからなかった。
この後だった。全てをひっくり返されたのは。




