信じるもの、裏切るもの
「村民はもう麓まで来ておりますが……火葬が思いのほか増えてしまったという理由で、まだ村に入れておりません。それでよろしい……ですよね?」
実峯が聞いてきた。
「お気遣い、かたじけのうござる」
と返した。
……夜草の時と同じだ。リヒトの兵と一緒に小十郎も火葬することになる。
八曜の信徒であれば骨にした後は川に流すことになる。
それも小十郎ほどの敬虔な信者となれば、そうするべきなのだが……
「しばし……待ってはくれぬか」
晶は、焼き終わった小十郎の骨を抱えて目を閉じた。
そして、寺子屋を見下ろせる勾配の上を見た。
「……小十郎は、あそこに埋めよう」
「え、だけどお前……」
綾鶴が何かを言いかけると……
「小十郎も、きっとそれを望んでいるはずでござる。
……あそこで、子供たちが大きくなっていくのを、見せてあげるにござるよ」
穏やかな声だった。晶がいうと、周りは黙り込んでしまった。
「……拙者が、小十郎と秋綾まで行った時、居場所のない混血の京人たちを見た。
それ以来拙者は誓ったのにござる。この地に、全ての人を受け入れようと。
八曜の流れの元にいる者は、皆等しく八曜の子にござる。
京もリヒトもない。信仰により、全てを許す村を作ろうと、そう誓ったのにござる。
……小十郎には、その村が出来上がるのを、拙者の側で見ていて欲しかった……」
骨を抱え、穏やかな表情で言う。
こうして、墓を作らない京人にとっては、異例の墓が中荒隅学校の校舎裏に建てられた。
それは現在も残っており、三枝小十郎の銅像とともに、少し高いところから生徒たちを見下ろしている。
* * * * *
その後に晶が呼び出されたのは、村の兵営。
先ほどの戦にて、リヒト側の将を捕らえたとのことだった。
問題はそれが、京人だったのである。
痩せ気味の壮年で、将というより農家の気のいいおじさんと言った印象だ。
拘束はされているが、すっかり観念しており、椅子に座らされてじっと、足元を見ている。
「……名は?」
晶が問うと、男は小さく、
「朧。小手朧」
と応えた。
「……お主は混血か?」
低い声で、晶は問う。
男は首を振った。
「八曜への信仰は?」
わかりきった質問だが、晶は敢えて問うた。
男は、一間おいて、やはり首を振った。
「なぜ信仰を捨てて……国を売った?」
「いくら神に祈っても……俺の息子は救われなかったからだ。
別にリヒトじゃなくたっていい。京国をぶっ壊してくれるなら、どこの国だってよかった」
いつもは自制心のある晶も、宗敵となれば話は別である。
いつ斬りかかってもおかしくない晶に対し、後ろにいる菊千代が釘を刺した。
「おっと。そいつを殺したらダメだよ晶。
……そいつはラムシュタインの居場所を知ってる」
晶は震える膝を押さえて、男を睨み続けた。




