明日に祈りを
間も無く夜になり、村中が湿気で満たされていく。
村の人間達は、京武士、金座の戦死を悲しむ間もなく、西部方面軍三千に対応しないとならない。
大勢の人間が策を立てたり、戦の準備をしている。
晶とマーラ、レイドヴィヒは、藤文にリヒト軍の橋頭堡が村から見える三ヶ所を案内された。
「あそこが一つです。一番西側ですね。傾斜も緩く、こちらに攻め込むには一番適した場所かもしれません。
白丸様の情報ですと、率いているのはアドラー・シュタイナー将軍」
マーラが割って入る。
「知らナイ将軍デス。おそらく、本国カラ派遣されたのかも」
晶達は、二か所目に案内される。村の裏門付近だ。
「あそこに小さく見えるのが中央の橋頭堡です。傾斜がきつく、距離もあるのですが、中荒隅村の井戸や学校、病院から一番近いです。率いているのはグスタフ・ヒス将軍」
「グスタフ将軍!!」
マーラが大きな声を出す。
「……知り合いにござるか」
「知り合いジャないですが、名将デス。京武士に対シテ、最モ強硬テキな姿勢ヲ取ってイル事デモ有名デス」
三か所目に案内されたのは、傘槍川付近だった。
藤文は暗闇の彼方に指を指す。
「あそこが三か所目です。傾斜もなだらかですが距離が遠いいです。
カスパー・ディール将軍が率いております」
「前カラ、西部にイル将軍デス。ラムシュタインの機嫌ヲ取ること以外、特に特技もナイ男デス」
晶は空を見た。北東からの分厚い雲が、頭上で停滞している。
今晩攻め込まれたとして、明日の朝も雨。
……雨の場合は、例の鳥は攻撃してくるだろうか。
敵の総数は三千。対してこちらの兵力は、鏡面の牙、百。
金座将軍の部下の兵、百。
ボーゾムの兵、百。
村の義勇兵を集めて五十。
三千に対して三百五十でこの村を守らねばならない。
「晶様!!」
村の入り口から、小笠原舞が走り込んできた。
「ただいま、商人達を使って隅扇島と仙神堀に連絡を入れたのが、早速返事が返ってきました」
「ご苦労にござった。して、向こうはなんと?」
「はい。村人を避難させることについては前向きに検討してくれるそうです。
特に子供や女性、老人を優先的に、隅扇島に向かわせてほしいとのことでした」
「かたじけない。……して、援軍は」
「それが……現在首都が本土決戦に入っているようでして……とても兵力を送る余裕がないとのことですので……」
「なんとか我々だけで三千を追い返せと、そう言っておるか……」
「……はい」
晶は目を閉じた。
「やるだけやろう。では、すぐにでも兵士以外は隅扇島へ非難させてほしい。
舞殿、頼めるにござるか」
「は、はい!」
「それとマーラ」
晶に声をかけられ、マーラが振り向く。
「……賭けに出ねばならんかもしれん。一点、確認したいことがあるにござる」




