光
中荒隅城にて、囲炉裏を囲む。
金座は未だに落ち着かないようである。
女性と異人の常備兵。リヒトの将。
ここは本当に京国か? と思わなくもないだろう。
「慣れれば、良い村にござるよ。ここには悪人などござらぬ。皆等しく、八曜の流れの元にござる」
金座の気持ちを察してか、晶が答えた。
「それより金座殿。お聞かせ願えぬだろうか。本国で何が起きておるのか」
ふむ……。と金座は座り直し、重たい口を開いた。
「私めにも、知っている事と存ぜぬことがある」
と前置きした上で……
「大将軍と、光橋院様の間で意見が割れておる」
「なんと……!?」
「イヤ、イヤ志すところは一緒なのでござる。しかし、京国にしても初めて経験する戦争にござる故、誰もが正解を出せない状況なのにござる」
晶はますます意味がわからぬ。
「何にござるか。殿と光橋院様の意を分つものとは」
すると、やや熟考の末に、金座は答えた。
「主に『リヒト』についてにござる」
「は」
「『彼らをなんとする』か、恥ずかしながら、ここで意見が割れているばかりに、晶殿には色々と辛い目に遭わせているのにござる」
「『リヒトをなんとするか?』」
「左様。我々は今までリヒトを隣人と思っていた。しかし、今では完全な悪敵にござる。これはなぜか? 我々がリヒトをあまりにも知らない事から生じる誤解はあるのではないのか? というのが光橋院様のご意見なのにござる」
京本光橋院。大将軍光国の母親である。
父親、荒光は他界しているために、大将軍に意見できるのは光橋院だけである。
「一方で、攻撃を仕掛けてきたのもリヒトにござる。ならば徹底的に排除せよというのが大将軍のご意見にござる。
片方は早期講和を望み、片方が望むのは徹底抗戦。
意見のまとまらぬうちに、仙野多摩と淀桂まで占領され、京浜大志まで落ちたあたりで、互いの派閥による責任のなすりつけあいにまで発展したのにござる。あまつさえ……」
金座の声はどんどん申し訳なくなる。
「晶殿に裏切りの疑惑もかける始末にござる。『リヒトの兵を率いて荒神に攻め込む晶殿を見た』などと一部の兵は根も葉もない噂をたて、
晶殿を更迭することにより、リヒトに講和を持ち込もうとしたのにござる」
「つまり、拙者に疑惑をかけたのは……」
金座は頷いた。
「光橋院様にござる。もちろん。それを信じているのは一部の兵士。そして、それを信じたい者だけにござる……」
そこに……
「で、伝令! 伝令!!」
晶はすぐさま立ち上がる。
「敵襲にござるか!!」
「い、イヤ、そうではないのにございます……」
晶は、グタ……と倒れた。
「もう三度目にござる! 今度は何が門の前に現れたにござるか!!」
「そ、それが……村の門前ではなく……」
* * * * *
晶は、目の前に広がる光景に「あんぐり」としてしまった。
城の真前に、いつの間にか一筋の光が天に向かって伸びている。
こんなものはどこでも見たことも聞いたこともなければ、誰かが話していたこともない。
一体何が起きているというのか。
ボンヤリと光の筋を見ていると……
その光の周りを回るように人間が降りてくるのが見えた……。




