第99話 速きこと雷光の如し
「あーっと!次の蔦のコースで最初に現れたのは……またもやブライア選手だー!」
「蔦のエリアは相当茂っているからなあ……ここでどう回避するかが勝利の近道だな!ガハハ!」
次の蔦のコースに現れたのは罠に引っかかる事なくその場を回避したブライアだった。ブライアは蔦を見るなりにゲーッと言いながらこう話す。
「な、んだここの蔦!!まるで人を歩かせる気がないかのようだ!」
「おっと!またもやブライア選手スピードダウンか?」
ブライアがモタモタと走行してるうちに次々と他の生徒達が走ろうとする。だが他の生徒も同様。蔦に引っかかりなかなか走行できずにいた。
「あーっと!やはり蔦の威力が強いのか!先に進めない生徒達が続々と現れている!」
「あのエリアに行く奴はなかなかいないからなあ……あの蔦のせいで人が近寄らない訳さ……ガハハ!」
マートル先生が言うようにブライア達は蔦のエリアからなかなか抜け出せずにいた。これだけこんがらがった蔦があるのだ。そうそう走れないだろう。と思いきやブライアの近くにいたエルが何やら試行し始める。
「……できた」
「おっと?エル選手何やら板のようなものを取り出した模様……これは一体……?」
「どうやら魔力の粉で作り出したみたいだな、ガハハ」
するとエルは何を思ってか。板に乗り走行し始める。そして蔦を魔力の板で切り解き、1人颯爽と駆け抜けていった。
「おお!これはすごい!エル選手、魔力の板でそこらじゅうの蔦を切り刻んでいっていますわ!」
「ガッハハ!やるじゃないか!」
「まるで異世界本にあったスノーボードみたいですわね!」
「スノーボードってなんだ?」
「解説役のマートル先生にも分かるように説明すると板に乗って走る競技の事ですの!」
スノーボード。まさにその言葉が相応しいとヤスチヨは思った。マートル先生は腑に落ちてないようだったが……ここに異世界本があってそれを見せればすぐにでも頷く事だろう。
「ずりぃぞエル!」
「ふん!悔しかったら同じように走ってみな」
「くっそおおお!……ぺぺ!ガジュマル!エルに続くぞ!」
「「お、おう!」」
「ちくしょうー!的当てどころじゃねえだろこんな道!」
ブライアが悔しそうにぶうたれるとぺぺ達が一斉にエルの後を追うように走る。
「ブライア選手、お得意の炎魔法をお見舞いしないのでしょうか?」
「うーんここで炎魔法使ったら下手すりゃ火事になるから使わないんじゃないか?」
「なるほど!使いどころを弁えている訳ですわね!」
一方その頃ユラ達は未だに網のトラップから抜け出せないでいた。
「ふぬぬ……はあ、はあ……どれだけ頑丈なのよこの網!」
「困ったなあ」
これでは優勝から遠のいてしまう。そう考えたユラが内心諦めモードでいるとミオリオがコソコソと手を動かし始める。
「……なにやってるの?」
「何って脱出に決まってるじゃない!」
それはそうなんだけどと思ってミオリオの動向をこっそり見てみるユラ。するとどうやらミオリオは魔力で作り上げた小さなナイフで網を切り開こうとしているようだった。
「これでよしっと!へへっ!お先に失礼!」
「あっ!ちょっと!」
このままではまずい。完全に遅れを取ってしまう。そう思ったユラは網の中で必死にもがき始める。ミオリオは器用でいいななどと考えているとユラの頭にふと何かが思い浮かぶ。そうだ。先程池のコースで的当てに使った光線。あれを全身に纏うことができれば。そう考えたユラは深く息を吸い何やらイメージを始める。雷光のように速く鋭い光。イメージとしてはそんな感じだ。そのイメージをそのまま全身に纏うように小さく呪文を唱えると、ユラの身体はどんどん輝きを纏い始める。そしてあれだけ頑丈だった網はいとも簡単に破壊されようやく脱出する事に成功した。
「よし!これなら!」
光を纏ったユラが地面に着地すると勢いよく蔦のコースへと向かい走り始める。その身のこなしはまるで雷光のよう。通常よりも速く駆ける事に成功したユラは的を当てながらミオリオの後を追うように走り去っていった。




