第98話 敗走となるきっかけ
「ここでユラ達の活躍が見られるのですのね」
「ガハハ!!まあそういう事になるな!」
ヤスチヨ達が来たのは地下にある体育館。そこには今回だけ特別に用意された大きなモニターがそこらじゅうに設置されていた。どうやらこの画面越しでユラ達の動向が見れるようだ。
「……魔物があまり学校内をうろつくのは困るとクロノス先生が言っていたのですが……」
「まあまあ良いではないか!ガハハ!」
ヤスチヨを見るや否やフランベル先生がそう述べると、マートル先生がなあなあな態度でその場を仕切る。マートル先生はそう言うが……この場にクロノス先生がいたら黙ってはいないだろう。まあ幸いこの場にはクロノス先生を除く複数の先生と生徒が魔法使いだと知らされている保護者達だけなので大丈夫だが。
「せっかくの機会ですし実況プレイがしてみたいですわ!人間こういう時に実況すると盛り上がるとミオリオからお聞きしましたわ!」
「魔物が実況ね〜まあいいんじゃないの?」
「ガハハ!サルビア先生は実況に肯定派なんですな!」
近くで腕を組んだサルビア先生がそう話すとマートル先生が高らかに笑う。相変わらずの音量に思わず耳を塞ぎたくなるフランベル先生だったが、気にする事なくその場を流した。
「という事で、本日実況するのはわたくしヤスチヨと解説役のマートル先生がお送りしますわ!」
「ガーハッハッハッ!解説役ときたか!!」
そんな調子でヤスチヨ達が画面を覗くと、今まさしく池のコースへと向かって走っていくユラ達の姿が見えた。スタート地点から現れていた白い線。あれが矢印となってユラ達を導いているのが分かる。
「解説役のマートル先生、あの白い矢印はなんですの?」
「ガハハ!あれはクロノス先生がスタート時に召喚した特殊な線だと見た!あの線が分離して矢印となり、池のコースまで誘導しているのだろう」
「なるほど!さすがクロノス先生!自ら手を汚す事なくそちらへと向かわせるなんて……見事な誘導っぷりですわ」
そうこうしてるうちに池のエリアに到着したのは火の魔法が得意なブライアだった。
「池のコースを最初に訪れたのはなんと!火使いのブライア選手だ」
「ブライアは体術が得意だから走るのも人一倍速いだろうな……ガハハ!」
マートル先生が言うようにブライアは池のコースを颯爽と駆け上がっていく。そして魔法を使い池の水面を軽々と走っていった。
「くそっ!今年はどこに的が隠されてるんだよ!」
ブライアがそう言うと隠れているであろう的を見つける為に辺りをウロウロ探し始める。
「あーっと!どういう事だ!ブライア選手ここでスピードダウン!」
「おそらく的を探しているのでしょうな」
「ガハハ!探せ探せ!青少年達よ!」
教頭先生がそう話すとまたもやマートル先生が高らかに笑い始める。あの辺の的は前日にマートル先生が設置した物だ。相当高度な場所に隠したに違いない。
「おっと!ここでミオリオ選手率いるその他の方も池のコースに到着いたしましたわ!」
ブライアの次に池のコースへと順に現れたのはミオリオ、エル、ガジュマル、そしてユラだった。
「悪いね!おっさきー!」
「こらっ!てめえ待ちやがれ!!」
ミオリオがブライアに対しそう言うと軽快なステップで池を渡りながら適当に的を当てていく。
「さすがは優等生」
「ブライア様も頑張って!」
その場を見ていたユラがそう呟くとガジュマルはブライアに対し声援を送る。
「チッ!まあ見てろよ!」
ブライアがそう話すとミオリオに続いて水中に隠された的を的確に当てて去っていった。ミオリオほどではないがその正確さにユラは感心を抱く。
「よし!私も!」
ユラがそう言うと水面を渡る為に分厚い氷を張る。まあ多少凍った範囲が広いがこれなら渡れるだろう。
「な、なんと!ユラ選手池のエリアを氷のエリアへと変えてしまった!……なんという力技!」
そして何を思ったのか。ユラは水面に向けて小さく呪文を唱え始める。
「祝福ノ樹木!《アビエス・フェルマ》」
すると発動して出た光は水中をえぐるように進んでいく。そして発光した光は池に隠されていた的と共に地面を削っていった。
「なんと豪快な的当て!ですがこれなら確かに隠れた的を的確に狙えるでしょう!」
「地形まで変わっちまったがな!ガハハ!」
ヤスチヨが言うように的はこれでもかというぐらいに変形し破壊されていた。そしてその跡を辿るかのようにユラは勢いよく進んでいく。
「おっと?破壊された的がどんどん修復されていきますがこれは?」
「これは前日に施した修復の魔法ですな……ガハハ!」
全てではないがマートル先生の言うとおり破壊された的が少しずつ直されていく。これなら後から来た生徒がいても大丈夫だろう。
「おーーっと!後から来たエル選手が破壊された的の破片も含めて正確に当てています!これは点数が気になるところです!」
どうやらユラの後ろから来たエルも的当てに成功しているらしい。まさか飛び散った破片まで当てに来るとは夢にも思わなかったが。
「……さすがエル」
ユラがそう呟きながらその場を走り去ると今度は前の方から大きな悲鳴のような声が響き渡った。一体どうしたのだろう。そう考えていると上前方で網に引っかかったミオリオの姿が見えた。どうやら前を駆けていたミオリオが大きな罠に捕まった事らしい。
「言い忘れていたがコース内には大きな罠もあるから生徒達は注意して行かねばならんのがこの競技の醍醐味だな、ガハハ」
「おっと!まさかの罠にミオリオ選手は捕まってしまった模様!一体このレースはどう進むのか!」
そんなミオリオに視線を向けていたユラだったが、それが原因となったのか……。自らも大きな網に包まれ捕まってしまう。
「きゃあああああああああああ!!」
「なんという事でしょう!ユラ選手もミオリオ選手と同じ罠にハマってしまったようだ!」
実況席で言っているようにユラはがっちりと網に包まれ動けなくなっていた。これをほどくにはかなり手こずるだろうと予想できるほどの頑丈な網。一体どうやって抜け出せばよいのやら。ユラがそう考えていると後方から残りの生徒達が続々と走り去るのが見えた。
「ごめん、先に行くね!」
「ああっ!ちょっと!待ってよおおお!!」
シルビィーが頭を下げながら大きく駆け巡ると、ミオリオがこれでもかというほど声で叫ぶ。この罠をどうにかしないと大幅なタイムロスになる。そう分かってはいるもののユラ達は身動きの取れない状態のまま。そうこうしてる間にユラ達はとうとう最下位となってしまった。




