第82話 気迫の拳
始まりの光だ。ユラは思った。ただその光があけるとそこは何の変哲もないテントの中で。本当にテレポートしたのか疑問に思ってしまう。
「さあ着いたよ、ここがエバーグレスだ」
ティグリスはそう言うが……果たしてここは本当にエバーグレスなのだろうか。とユラが思うとティグリスがちょこまかと探りを入れるユラに対しこう話した。
「大丈夫、ここは本当にエバーグレスだ、テント内を行き来したから分からないだろうけど……外を見てごらん?」
そう言われると早速テントを捲り探索しようとするユラ。すると外は別世界で。見事な沼地と湿った陸地が広がっていた。
「ここがエバーグレス……」
噂では知っていたものの来た事のないユラは辺りをじっくり眺め続ける。すると周りには今出てきたテントとは違うテントがびっしり立ち並んでいて。思わずユラは圧倒される。
「すごい数のテントですね」
「まあ他のメンバーも集まってきてるからね……おっと噂をすれば……」
ティグリスがそう話すと他のメンバーもタイミングよくテントから出てくる。そしてこちらを見るなり見知らぬ顔の人物が次々と集まってきた。
「よお、ティグリス隊長!久しぶりだな!……おっとそこにいるのは噂の雑草娘か?」
「雑草娘って……まあそんな所かな……紹介しよう、彼は状況視察部隊隊員のオレガノ・バルガレ」
「はっはっはーこのオレガノ・バルガレがこの度マルス討伐に参ったぞ!はっはっはー!」
なんか随分と陽気な人が現れたなとユラは内心思った。金髪の髪と鋭い金色の瞳。それを見ただけだったが彼が余程の自信家というのがなんとなく分かった。
「よおティグリス、元気にしてたか?」
「おっとこれはこれはマスタング隊長、ご無沙汰しております」
マスタング隊長と呼ばれる彼がティグリスの元に現れるとティグリスは深々とお辞儀をし挨拶した。どうやらかなり偉い人のようだ。
「で、こちらが噂による雑草殿かな?」
「ユラって呼んでください……」
「おっほっほ、これは失礼……ユラ、今日は頼んだぞ」
「ユラ、こちらは国際保護部隊隊長のマスタング隊長だ」
「以後お見知りおきを」
ティグリスがマスタング隊長と名乗る人物を紹介すると後ろからも人がぞろぞろと集まり出す。今日は大勢の人と退治に向かうようだ。ユラがそう思うと緊迫した顔でその場に佇む。
「そして今僕の後ろにいるのがアスター、それからその左にいるのがケストルムとリクニスだ」
「よろしく」
「どうも」
「よろしくね雑草ちゃん」
こうして各人物がユラに対して軽く自己紹介をすると、一行はマスタング隊長を基準に整列し始める。マスタング隊長。どれ程偉い人物なのだろうか。とユラが考えているとティグリスがユラの緊張をほどくように小声でこう宥める。
「まあ皆ベテラン揃いではあるが悪い性格じゃないから安心して」
「け、けどまさかここまで大勢とは思ってなくて」
そう、テント側には先程紹介された者以外にも多くの人員が揃っていた。ここまで人を集めたのだ。きっと大きな戦闘になるに違いない。そう思っていたユラはなかなか緊張がとけないでいたのだ。
「大丈夫、彼らはただの見張りだよ……旅人やたまたまここに来た民間人に危害が及ばない為のね」
「なるほど、どおりで……」
ティグリスが言うには戦闘要員はユラ含め合計7人との事。その他の隊員達は見張りや隊員達の治療、外部との連絡をする係である事をティグリスから説明を受けた。
「まあ色々あるだろうけど気を抜かず頑張ってね」
「は、はい」
なんだかんだ荷が重い役目を持たされた気がしたが……まあ何とかなるだろうと踏んだユラは頑張ろうと1人意気込む。初めてのチーム戦。一体どうなる事やら。それにマルスの木というのも気になる。マルスの木。一体どんな大きさだろう。とユラが疑問を抱え込むと知らぬうちにマスタング隊長の演説を聞いていたチーム達が結託の意を示す。空に向かって大勢が拳をあげるとユラの緊張がさらに増した気がして。なんだかとてもいてもたってもいられなくなった。




