第69話 甘いひと時の後日談
エル達と無事帰った黄昏時。ユラが寮のベッドに飛び込むと近くにいたヤスチヨに声をかける。
「疲れた……色々大変だったね……」
「そうですわね、こちらも蜘蛛退治に勤しんでましたから何がなんやらでしたわ……」
忙しさで記憶が混乱しているが……あの後なんやかんやでヤスチヨと合流してテレポートで帰ったユラ達一行。正直忙しいという簡単な言葉では表せない。だが無事に帰れてよかったという気持ちでいっぱいだった。
「あの後窓閉めたり室内の蜘蛛退治したりで大変でしたのよ?」
「……こっちだって怪我したエルを介抱したりして色々大変だったんだからー」
そう2人で談話をしていると一日の疲れが少しだけほぐれる気がして。ユラはヤスチヨにあの後何があったか少しずつ話した。
「……そういえばヤスチヨ、合流の時人間の姿から戻ってたけど大丈夫だったの?」
あの時ヤスチヨは確かに人間の姿だった。だが戻ってきた頃には蝶の姿に逆戻りしていて。不思議に思ったユラはそれについて疑問を問う。
「ああ、あの時別の駅に乗り換えたいという人が多く出てきて……それでごった返しになったので急いで変身を解いて貴方達を探し回っておりましたの」
ヤスチヨがしおれたようにそう話すと、ユラはなるほどと納得しベットの上で寝転がる。一日のうちに本当に色々な事があった。ユラがそのように考えていると、ふとカサギが言っていた事を思い出す。
「……ねえ、ヤスチヨ」
「なんですの?」
「植物って恋愛するのかな?」
「……はい?」
ユラが不思議そうな顔で呟くと困惑したような態度で返事を返すヤスチヨ。確かに今のはおかしな質問だったかもしれない。ユラがそう思っているとヤスチヨが羽を羽ばたかせながらこう語り出した。
「……愛ですわ」
「…………え?」
「ワタクシの種族ヤスズリチョウも片思いしては振られたり成就して子供を授かったり色んな愛がありますわ」
「…………そうなんだ」
「ですから植物にもそのような感情があると見てますわ」
「……たとえ種族が違ったとしても?」
「ええ、間違ってヤスズリチョウに似た別の種族に恋する蝶も中にはいます……ですからたとえ相手の種族が違ったとしても、それが成就しないものだったとしてもあるのではないでしょうか?」
まさか真面目に解説してくれるとは。ユラの戯言に真剣に答えてくれたヤスチヨに感謝しつつ、その意見を受け入れると心がスっとしたような気がして。先程までの心のモヤモヤが嘘のように消えていった。
「ですから……って何故このような質問を?」
「…………ううん、なんでもない!」
そうユラが述べると思い立ったかのようにベッドから起き上がる。複雑な事はこれから。後回しにして考えていこう。ユラがそう思うと寮の部屋を飛び出し、エルの元へと走り去っていった。




