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マルス適合者~二度死ぬ彼女は雑草の姿をした魔法使い~  作者: しがない草
第七章 真夏のデートプランD

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第63話 5秒のタイムリミット

 焦燥する熱情。顔色と汗の感覚でエルが焦っているのが伝わってくる。



「エル、大丈夫ですの?」



 心配になったヤスチヨがエルに声をかけると、エルは苛立った面持ちでこう返す。



「これが大丈夫に見えるかよ!……それよりもユラはどうした?」


「ユラはあの黒い蜘蛛と未だに戦闘中ですわ」


「置いていって大丈夫なのか!?まだ戦闘中なんだろう?」



 いつもの冷静なエルはどこへやら。彼の言い草といい顔色といい余程焦っていると見た。こんなエルは初めてだ。ヤスチヨがそう思うと諭すようにエルに口出しをする。



「……あの子なら大丈夫ですの、ですからエルも彼女を信じてくださいまし!」



 そう言うとエルは無言の圧を返す。こちらの思いは伝わったのだろうか?ヤスチヨが心配そうに顔色を伺うと分かったと小さく頷くエル。どうやら少なからず納得はしたらしい。



「エル、ワタクシにできる事はございますか?」


「……何故そんな事を言う?お前はユラのパートナーだろ」


「あなた先程から顔色があまりよろしくないですわ……ですから何かお手伝いを……」



 ヤスチヨが飛びながらそう話すと再び無言になるエル。何か変な事でも口にしただろうか。そうヤスチヨが小さく不安になりながら思うとエルは深くため息をついた後こう言い放った。



「ヤスチヨ……周りの時間を止める事はできるか?」


「ええっ!?時間ですの!?」


「……できないか?」



 今日は珍しい表情ばかりだ。あのエルが参ったかのような顔をするなんて。ヤスチヨがそう思いながら考えると仕方ないとでも言うかのようにこう答える。



「できなくはないですわ……ただ……」


「ただ?」


「制限時間が短いといいますか……」



 そう言うと咄嗟に気恥ずかしくなりモジモジとしだすヤスチヨ。その態度からしてそっち系の魔法はあまり得意分野とは言えないらしい。エルがそう感じるとなんだそんな事かとでも言うかのようにヤスチヨに語りかける。



「問題ない……どれぐらい時間を止められる?」


「5秒ですわ」


「5秒か……まあいいだろう」



 たったの5秒。ヤスチヨからすれば短い時間だろう。だがエルからすれば時間を止められるというだけで十分有難い話で。エルはヤスチヨに向かいお願いを申し込むようにこう言う。



「ヤスチヨ、頼む……5秒だけでいい……周りの時間を止めてくれ」


「……止める手立てはあるんですの?」


「……正直分からねえ……けどやれる事をやるまでだ」


「…………分かりましたわ」



 ヤスチヨがそう言うと気合を入れんとばかりに猛スピードで羽を羽ばたかせる。そしてエルの帽子に乗ると、風に吹かれながらこう呪文を唱えた。



「飛翔!《アレス》」



 するとエルとヤスチヨ以外の物が灰色に染まり、時間停止する。タイムリミットはたったの5秒。その間にどうする気なのか。エルとヤスチヨの間に緊張感が流れる。するとエルはポケットからある物を取り出した。それは透明で綺麗な魔石そのもので。美しく輝いていた。それをエルはどのように使うのか。気になってヤスチヨが帽子の上から眺めていると、なんとその魔石をぐいぐいと食べ始めたではないか。勢いよく口に入れ飲み込むその姿に思わずギョッとするヤスチヨ。そうしているうちに時が過ぎていきあっという間に5秒経ってしまった。



「エル、大丈夫ですの!?」


「問題ない……お陰で何とかなりそうだ」



 エルがそうと口にするとヤスチヨはほんの少し安堵する。ただ、まだまだエルの顔色は良くないようで。エルの帽子の上から見てもエルの顔色が色白く染まっているのがよく分かる。



「あなた……相当無理してますわね」


「……気にするな……そうでもしねえと線路で走らせられねえだろうが……」



 エルはそう言うが……明らかに余裕のない態度で。再度心配になるヤスチヨ。いつもなら信頼してその場を立ち去る場面。しかし流石に不安になったヤスチヨはユラの元には行かず、しばらくエルの様子を見る事にする。



「ワタクシ、しばらくここにいますわ」


「……正気か?ユラの元に戻らねえってのか」


「ええ、確かにユラは大切なパートナー……ですが」


「…………?」


「……あなたも大切な友人ですので」



 ヤスチヨが和かな態度でそう言うとエルは自身の帽子のつばに手をかけそっと笑う。我ながら恥ずかしい話をしたかもしれない。でもそんなエルの態度を見るとこの気恥ずかしさも悪くない気がして。エルの帽子の上でゆったりと羽ばたいた。


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