第62話 赤く映る表情と反転
赤い斑点に映る表情は険しいものだった。ユラが蜘蛛をじっと睨みつけると蜘蛛はのっそりと動き出す。何故巨大な蜘蛛がここに?そう考えながら手で杖を作り出し頭を殴り叩くと蜘蛛がこちらに反発するように攻撃をしかける。糸だ。まっすぐと伸びた糸は見事ユラの足に絡まりだす。そして何をするかと思えば白い糸を振り回しユラごと地面に叩きつけた。
「だ、大丈夫ですの!?」
「な、何とか……」
幸いな事に受け身をとっていた事と叩きつけられた場所が汽車の上だった事が重なり何とか無事だったユラ。絡まった糸を何とか切り離そうと試みていると、ヤスチヨが糸に向けて攻撃を行う。
「雷光!《エゼクレール》」
すると絡みついていた糸が雷で焼け、するりと溶けていった。ようやく自由の身となった足元。再度攻撃態勢に入るとまた蜘蛛は多数の糸を吐き出しユラを捕えようとする。
「そう何度も捕まってたまるもんですか!」
そう告げるとユラは華麗にジャンプし糸の攻撃をかわす。顔にかする糸と風の感覚が確かに残るこの感じ。どこか気に障るが気にする事なくあっさりと交わし続けると今度はユラから攻撃をしかけるよう試行錯誤する。何せここは汽車の上。もし巨大な魔法を使ったりでもしたら。乗客達もただではすまないだろう。そう意気込むとユラはあえて糸を掴みこう唱えた。
「祝福ノ樹木!《アビエスフェルマ》」
すると糸の部分が魔力の結晶へと変化し徐々に身体の方へと近づいていく。もう少しで身体の方まで固まる。そう思った次の瞬間、糸が蜘蛛の意志によって切り離される。その反動か。ふらついてしまう足元。つかさず落ちないよう体勢を整えるとユラはヤスチヨにある事を告げる。
「……大変だけどこっちは大丈夫!だからエルの事を確認しに行ってくれないかな?彼、1人で汽車を走らせながら線路を作り出してるから心配で……」
「ですがワタクシはあなたのパートナーですの!ですからここから離れる訳にはいきませんわ!」
「……お願い!ヤスチヨ!……頼むから様子だけ見に行って?」
「……分かりましたわ」
そう諭すと勢いよく羽ばたかせ空を舞うヤスチヨ。ユラはそう話すが大丈夫だろうか。ヤスチヨが風圧に負けずトボトボと宙を舞っているとようやくエルの元へと辿り着く。様子を確認するとどうやら今も線路を急いで作り出している真っ最中のようだ。それにしても綺麗に作り出された線路だと感心しているとヤスチヨはある事に気づく。
「エル……あなた、顔色が……」
ヤスチヨがそう述べるとエルが浅い呼吸を繰り返す。やはり走り出す汽車に合わせて線路を作り出すのは無理があるようで。エルの表情はこの状況が長く持たない事を意味していた。




