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マルス適合者~二度死ぬ彼女は雑草の姿をした魔法使い~  作者: しがない草
第七章 真夏のデートプランD

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第61話 瞬速の汽車

 青空が黄色に染まりかける帰り道。ユラ達が汽車に乗ると淡々と空いてる席に座る。今日は乗車の人が少ない。そう感じながら景色を眺めると心地のよい音がする。



「今日はとても楽しかったね、エル」



 エルにそう話しかけるとそうだなという返事が返ってくる。頬杖をついてあくびをするその姿はどこか疲れているようにも見えた。



「また行けるといいね」



 そう今日の出来事を思い浮かべると再びユラは窓際の景色を眺める。いい景色だ。ユラがそう考えているとガタリとどこかで大きな違和感のある音が鳴る。



「な、何!?」



 ザワつく車内。何事だろうか。車内に不安と焦りが交わる。ユラ自身もそう思い詰めているとエルが窓際の方を見つめる。蜘蛛だ。黒い蜘蛛が窓に張り付いている。一見見ると何もおかしくはないただの蜘蛛。だがエルが何かに気がついたかと思うと、バッと立ち上がり運転席側に駆け出した。



「ど、どうしたの?」


「このままだとまずいかもしれない!」



 エルがそう話すと焦るような顔で走り続ける。ユラも続いて走り出すも何が起こっているのか分からず戸惑うばかり。



(とにかく今はエルに合わせよう)



 ユラがそう考えながら窓際を見ると一瞬停車駅であろうものが映し出される。おかしい。通常ならばあの場所で止まるはず。なのに確かに通り過ぎていった。普段であればありえない事だ。



「一体何が起きてるの?」


「……とりあえず確かめるしかない……気のせいだといいが……」



 そう話すと真っ先にエルが運転席へと到着する。ユラもしばらくして追いつくと、エルが前のめりで入るかのように運転席へと乗り込んだ。



「おい、おじさん!()()()()()()()()()ってどういう事だ!?」



 エルが運転手のおじさんにそう言うとおじさんが真っ青な顔でこう述べる。



「と、とまらねえんだよ!どうやってもブレーキが効かねえんだ!」



 滲む冷や汗。理解ができなかった。何故ブレーキが効かないのか。運転手のおじさんと一緒に困惑の眼差しを浮かべているとエルが窓に足をかけ上に登り出した。



「やべえ!!このままだと大変な事になる!!」



 そう述べると手を輪にし、その穴の中の遠くを見つめ続ける。どうやらエルは魔法を使って何かを探しているらしい。



 ユラもエルに続き同じように汽車の上に登ると、ユラはある物を見つける。この先行き止まりの看板だ。先程運転手のおじさんはブレーキが効かないと言っていた。嫌な予感がする。そう考えていると最後の停車駅である場所を猛スピードで通り過ぎて行く。まずい。このままだと脱線する。そう思った次の瞬間、エルが汽車の上に座り魔法を作り出す。線路だ。まさかこの先走りながら線路を作っていくつもりなんだろうか。そう考えていると鞄の中でこっそり潜んでいたヤスチヨが外に現れエルの心配をする。



「大丈夫ですの!?そんな事を続けてたらあなた……」


「うるせえ!今はこうするしかねえだろ!」



 汽車の延命治療をエルが行うと切羽詰まった表情でユラ達に話しかける。



「頼む!こうなった原因を見つけてくれ!そうじゃないとここにいる全員事故でやられちまう!」


「でもどうやって!?」


「奴は必ずいる!必ずどこかに!……っ!?」



 エルがそう言うとユラ達の後ろで大きな物音がする。何事だろうか?後ろを振り返り確認すると、なんとそこには巨大な蜘蛛がいた。



「なんなのあの蜘蛛!!」


「分かりませんわ!……ただ禍々しいオーラを放っている事は確か」



 ヤスチヨがそう告げると巨大な蜘蛛がユラ達の存在に気づいたのか……視線をこちら側に向けるかのように動き出す。



「頼む!そいつをどうにかしてくれ!こっちはこっちで安全に止める方法を考える」



 エルがそう言うとユラ達はすぐさま攻撃の姿勢に入る。どうやらこの蜘蛛を倒さないとこの汽車の安全が保証できないらしい。そう確信するとユラはじっと蜘蛛を見つめる。すると赤い斑点が不気味にこちらを睨みつけていた。


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