第51話 魔力の拠り所
静まる評議会の場にたった1人。暗闇の中に佇んでいると評議員の1人がユラについて言及する。
「ティグリス、現状のユラ・メイドリーについてだが何か問題行動等は起こしてないか?」
「いえ、特に……随分と気にかけるんですね」
ティグリスが挑発するかのように答えると評議員の1人が不快そうな顔をする。どうやら先程の態度で怒りを買ってしまったようだ。ティグリスが内心そう思うとまた別の評議員が罵声を放つかのようにこう言い述べる。
「当たり前です!ティグリス氏、あなたはユラ・メイドリーを信用しすぎではありませんか?」
実際のところ彼女に対して信頼を寄せている面はある。だが立場上気を許す訳にもいかず、今こうして言及されている訳だが……いざ言われると否定できないなとこっそりため息をつきながら思う。
「いえ……確かに彼女に対して思うところはあります……ですが完全に信用している訳ではありません」
「……ならばこういうのはどうだろう?本当に国の脅威ではないかテストしてみるというのは」
評議員の1人がそう言うと他の評議員達が一斉にざわつき始める。評議会からのテスト。見ようによってはアリかもしれない。だが彼女はとてつもない魔力を持っている。もし実施されたら何が起こるか分からない。そう考えるとティグリスは神妙な面持ちでこう言い放つ。
「やめてください!彼女は膨大な魔力の持ち主です!……もし彼女に危害を加えたらどうなるか検討もつかない!」
ティグリスが大声でそう告げると一度は静まる評議会。もしかしたら逆効果だったかもしれない。そう思い悩んでいると評議員の1人がティグリスの意見に同意するかのようにこう話す。
「確かにユラ・メイドリーに対し危害を加えるのはあまり得策ではないかもしれません」
「そうですねえー迂闊に手を出して暴れられても困りますし……」
評議員の1人が同意すると他の議員も続けて意見を言い放つ。どうなる事やらとティグリスが戸惑っていると、また1人別の評議員が反対するようにこう述べる。
「ですがユラ・メイドリーの力に関しては何らかの処置を施した方が良いかと」
「ではこういうのはどうでしょう?」
妥当な意見だろう。反対派の評議員の意見は決して間違いではない。そう思ったティグリスは反対派の意見に寄り添うようにこう提案する。
「私自らが彼女に対して定期的に【魔力制御のテスト】を行うというのは」
ティグリスがそう話すと一瞬どよめく評議会。その後落ち着きを取り戻し何やらヒソヒソと話し始めると、評議会全体が同意の意を示しだす。
「異議のある者は?」
「いえ特には」
「特に問題ないかと」
「こちらも異論はない」
そう全体が意見を述べるとありがとうございますと礼を言うティグリス。シルクハットを外した状態でティグリスが頭を下げると評議員の1人が解散の意を唱える。
「……では今後はティグリス自らが彼女に対しテストを行うように……では解散」
評議員の1人がそう述べると辺りが何事となかったかのように暗く染まる。
「……やれやれ、やる事が増えたな」
ティグリスがそう言うとやや疲れた表情で帰路へと着く。評議会からの指示だ。これからどのように彼女と向き合うか。そう考えながら踵を返すと影と共に暗闇へと溶け込んでいく。再度後ろを確認するとそれは国の闇そのもので。ティグリスは決意を固めながらその場から離れた。




