第50話 真夏の通り風な君に
薫風がなびくある日。ユラはマッキンレー市街のとある店にきていた。そこは少し前メイドリー家の2人から教えてもらった場所だった。
「相変わらず広いなあ」
そう話すとユラはある物を探す。エルに渡すお礼の品物だ。先日貴重なねむの木の枝をもらったためそのお礼としてなにかないかと探しに来たのだ。
「ここに来たのはいいものの……何を買えばいいんだろう?」
お菓子や小道具、ちょっとした素材等々。数多くの品揃えが置いてあるこの店はユラにとっては迷路のようで。幅広く展開されたその店の様子はユラをこの上なく惑わせた。
「エルならやっぱり食べ物がいいのかな?」
そう悩んでいるとユラはある場所を見つける。文房具店だ。エルもユラと同じ生徒の端くれ。学校で役に立つ物をプレゼントするのもありかもしれない。
(そういえばエルが何か言っていたような……?)
エルが筆記の授業後。ペンのインクがなくなったと頭を掻きながら悩んでいた事を思い出す。
「……ペンを探そう」
そう言ってペンのある場所へと行くとそこにも様々な物が展開されていた。丸みを帯びたペン。角張ったペン等どれも事務的で。とてもじゃないがプレゼントには向いてないように見える。
「あ、あれならいいかもしれない!」
それから事細かく探すとユラはあるものを見つけ出す。それは氷のアクセサリーがついた洗練されたペンだった。知的なデザインはまるでエルのようで。氷のアクセサリーはエルの魔法を彷彿させる。
「これにしよう!」
少々値は張るがこれなら喜んでもらえるだろう。そう思ったユラはそれを持ち込み店員を呼ぶ。
「これください!」
そう言うと財布を取り出し会計を済ませる。さすがに値が張ったが、プレゼントとしては申し分ない物だろう。そう思いながら小包に包むよう頼み込むと、銀色に光ったそれが綺麗に包装されていく。満足そうに包装されたそれを眺めるとユラはその店から離れ帰路へと着いた。
◇ ◆ ◇
翌日の放課後。1人になるところを見計らってエルに声をかけると、ユラは先日購入したプレゼントを渡す。
「……どうしたんだそれ?」
「プレゼント、先日ねむの木の枝もらったからそのお礼」
ユラがそう言うとエルが素直に受け取る。気に入ってもらえるだろうか。そう思いながら小包に包まれたそれを眺めるとエルはその小包を手にかけこう述べる。
「……別に礼とかいいのに」
そう言いパッと箱を開けると中に入っていたペンに一瞬驚くエル。どうしたのだろうか。そう疑問に思うとエルはどこか微笑むような表情でこう話した。
「……ありがとな」
礼を言うエルの表情にふと安堵するとエルはどこかへと去っていく。その様子がまるで真夏の通り風のようで。ユラはそんな彼の様子を見ると彼の背後でにこりと笑った。




