第42話 清く正しく美しく
日照りが強まった早朝の朝。私とヤスチヨは朝の支度のため洗面所の前に来ていた。
「ユラ、今日の日程は確認済み?」
ヤスチヨの手前寝たフリをしていたため寝癖はない。だが一応念の為に髪を整えるとユラはこう質問を返す。
「うん、昨日のうちに確認したよ」
そう言うと朝の支度を完全に済まし通路へと出る。すると頭の上に乗ってきたヤスチヨが髪をチェックしこう述べた。
「ユラ、まだ髪が乱れてるんじゃない?」
「えーそんな事ないと思うけどなあ」
ユラがヤスチヨの厳しいチェックに反論すると、向かいの扉からシルヴィとシャンディがやってくる。どうやらこれから同じく食堂へ向かうらしい。
「シルヴィ、シャンディ、おはよう!」
「おはようユラ」
「……おはよう」
せっかく鉢合わせしたから一緒に食堂まで行かないかと提案すると大人しくその提案に乗るシャンディ達。シルヴィが何やら言い淀んでいると頭の上を指さしこう呟く。
「あ、あのね……ユラちゃんの頭に昆虫が張り付いてるんだけど……どこから入ってきたんだろう?」
そうか。昨日家の用事で欠席にしてたから知らないのか。そうユラが思うと上に乗っていたヤスチヨが間髪入れずにこう言い放った。
「昆虫ですって?ワタクシを昆虫扱いしないでいただけませんの?」
「わっ……喋った!」
シルヴィが驚くとすかさずユラ達がフォローを入れる。
「シルヴィ……実は昨日魔物であるこの子と契約したの」
「そうそう、私も最初驚いたけど害はないようだから……」
「そう!だからただの昆虫扱いするんじゃありませんの!」
そんなヤスチヨの態度を見てシャンディが苦笑しながら話すと、シルヴィはどこか納得した様子で頷き続ける。その後再び歩き出すとシルヴィ達と共に食堂の中へと入っていった。
◆ ◇ ◇
「もう!授業中暴れて変な事したらダメだからね」
「分かったわよ」
空がマーブル色に染まった放課後。ユラは寮内でヤスチヨに対し叱咤をしているとヤスチヨからこんな事を聞かれる。
「そういえば今日はエルとの特訓はいいの?」
確かに昨日はエルといつもの魔力操作の訓練を行っていた。だがそれは毎日行っている訳ではない。
「今日はルゼと買い物しに行く日だって言ってたからないよ」
そう諭すと少々ガッカリした態度で羽を羽ばたかせるヤスチヨ。何をそんなにへこんでるのか聞き出すとヤスチヨは再び頭に乗っかった状態でこう言った。
「だってあの方がいないと茶化したり技を見せあったりする事ができないじゃありませんの……」
茶化すというのはどういう事か……というのはさておき。ユラは今後のためにも話さなきゃいけないと思い、今日は大事な話があると言ってカーテンをそっと閉じる。
「私ね、ヤスチヨにどうしても知ってほしい事があるの」
そう語るとゆっくりと変身魔法を解き、本当の姿を明らかにする。するとさすがのヤスチヨも最初は戸惑うような姿勢を見せた。だがすぐに理解を示すような態度を見せると花の上に乗るような姿勢でこう話し出す。
「よく話してくださいましたわね…………でもワタクシにとってはユラがどんな姿でも変わらない……たとえその正体が一輪の花だとしても」
とても嬉しかった。やはり話してよかった。そうユラがジーンとしているとヤスチヨの方からこんな質問をされる。
「でも何故ワタクシにそんな事を話したのかしら?ずっと隠していればよかったものを」
話した理由。それは初めてのルームメイトだったからだ。なんだかんだ多忙のため出会ってすぐは明かさなかったが、さすがにルームメイトとなると隠し通すのにも限界がある。
「今週からルームメイトになるから〜っていうのもあるけどヤスチヨはパートナーだからどうしても知っててほしくて……」
そう話すと照れ隠しでもするかのようにヤスチヨから離れるユラ。その後変身すると再びヤスチヨはユラの頭のてっぺんに身を乗り出す。
「あとこの話は他の皆には内緒にしてるから秘密にしといてくれると助かるんだけど……」
「そうでしたの…………それならこの事は2人だけの秘密って事なのかしら?」
ヤスチヨにそう期待されるとそうでもないと反論するユラ。先生や一部の人にはバレちゃった。こう話すとやっぱりどこか抜けてますわねと言われ苦笑しながらカーテンレールを開く。マーブル模様の青空が見えるとほんのりと自身の表情が窓に映る。映し出された自身達の姿は青々とした空と同じでどこか晴れやかだった。




