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第41話 美しき雷帝の蝶

魔界の深緑の芽が映える頃。ギルド制の授業の帰り道、ユラはとある場所を目撃した。それは野スズリ草と呼ばれる野草の花畑だった。



「これは……」



 昔会った亡き師匠である【ユリウスから教えてもらった野草】そのものだとユラは思った。あの時も美しいと感じてはいた。しかしこうも集まって生えていると不思議と目に止まるのだと思った。



「どうしたユラ?」



 いつもの2人と先生に心配されると花畑を指さし待ったをかけるユラ。もう少し眺めたい。そう言い寄るとエルから少しぐらいならいいのではとフォローされる。



「まーあたしも見てみたいしいいよね先生?」


「……少しなら大丈夫だろう」



 また前のように追い回される事がないようにと注意を受けるとユラ達は花畑の方へと向かう。するとそこには満開の野スズリ草ばかりで。思わず笑みがこぼれる。



「美しい花……」



 絶景の花畑につい見とれていると、今度は野スズリ草の近くを飛ぶ白い蝶達を発見する。



「……これは野スズリ草と言って主に魔界でしか咲かないとされている花だ」



 妖艶に飛ぶ蝶達にうっとりしながら眺めていると、先生がこの花にまつわる解説を行う。



「そしてそこの花の近くを飛ぶ蝶は野スズリ蝶と言われている蝶だ、そいつらも魔物の類だが基本害はない」



 そうクロノス先生が説明をしているとミオリオが花を1つ1つ積みながらこう質問する。



「これなんかに使えたりする?」


「まあそうだな……香油とか香り付けにはもってこいかもな」



 香り付け。薬作りの時とかにも使えそうだ。そうミオリオが言うとユラの目の前に一回り大きな蝶が現れる。そっと指を差し出すと、その一回り大きい蝶が指先に止まり心を豊かにした。



「野スズリ蝶……別名イヌチヨとも言われているんだが、羽の部分を触ると犬の毛のようにふわふわしている事から名付けられているらしい」



 クロノス先生がそう言い終わると先程指に止まった蝶の羽に触ろうとする。するといきなり先生目掛けて電撃が発動したではないか。全員が驚いて蝶の方を見つめると蝶が明らかに不満そうなオーラを醸しながらこう言い放った。



「ちょっとワタクシ男性のゴツゴツした手嫌いなんですの!!」


「喋った!」



 いきなり何を言い出すかと思えば手の感触についての不満を述べ怒り出す蝶。その姿に思わず驚くと蝶はつかさずこう語り出す。



「ワタクシをそこらにいるただの野スズリ蝶と思ってはいけませんの!これでも高魔力の持ち主……一応女王でしてよ!おほほほほほほ!」


「驚いた……魔界では時々魔力の高い昆虫が喋り出すとは聞いていたが……こうも簡単に遭遇するとは!」



 そうクロノス先生が興奮しながら説明していると、蝶が先生を睨むように姿勢を変える。私も一度は触れてみたい。ユラがふと思い悩みながら見ているとなんと蝶の方から自身の羽を擦り付けてきた。



「ワタクシあなたのような高魔力の方大好きですの!だからワタクシと契約を結ばないかしら?……きっと役に立ってみせますわ!」


「契約?」



 契約とは何か。そう思いながらクロノス先生の方へ目線を向けるユラ。するとクロノス先生は少々考えた後こう語り始めた。



「契約とはまあ平たく言えばパートナーのようなものだ……そんな難しく考える事でもない」



 まあお前に危害を加える様子はないし、やってみたらいいんじゃないかと言うクロノス先生。肝心な蝶の方はというと先程から指先にしがみついて離れようとしない始末。その姿を見てまあパートナーというのも悪くないんじゃないかと思いユラは契約を交わす事にした。



「契約の詠唱はワタクシがするわね」


「分かった!」


「それでは……我、そして汝、契約と共に離れる事なかれ……故に我ら共に過ごす事を誓う」



 蝶がそう唱えると下から魔法陣が現れ出てくる。互いの魔力の契りか。魔法陣の周りに浮かぶ魔力の粒子達が集まったかと思うとユラ達2人を包んでスっと消えた。



「はい、契約完了よ!……これで私も人間界に出られるわ!」


「人間界にですか?」


「ああ、先生や生徒の中には既に契約獣として魔物と契りを交わしてる者もいる」



 そうクロノス先生と話しているとこっそりエルが蝶の毛並みを触ろうと試みる。



「……僕に対しては何も抵抗しないんだなお前」


「まああなたはそこまで手がゴツゴツしてないから平気ですの」


「ずるーい!私も触りたかったのにー!」



 ミオリオが羨むような顔でそう言い放つとエルがユラに対してこう話し出す。



「名前決めた方がいいんじゃないか?」



 名前。考えてもみなかった。確かに今後一緒にいる事を思うと名前があるといいかもしれない。そう考えユラは蝶に対し名前をつける。



「……ヤスチヨはどうかな?」



 野スズリ草の近くにいるからヤスチヨ。ユラはそう考えた。これなら綺麗な景色と共に出会った事も忘れないし、皆に覚えてもらえるだろう。



「……いい名前だな」



 クロノス先生含め全員にネーミングセンスを褒められるとえへへと笑い喜ぶユラ。一度その名で呼び出すとヤスチヨはなんですのと言い頭に乗っかる。大人しく頭に乗るその姿は周りの蝶達と比べどこかウキウキとしているように見えた。

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