第40話 水の中で燃え盛る屋敷
「今日は外界で魔法を出すためのイメトレを行う」
クロノス先生がそう言うと1枚のプリント用紙が配られる。パラパラと魔法で配る様子を見ながらその用紙を見ると大きな屋敷の絵が描かれていた。
「今回はその用紙に描かれた屋敷を舞台にしてイメトレを行ってほしい……もしこの屋敷が火事になったらどう火を消すか、皆で考えてくれ」
そう話すと絵の中の屋敷がいきなり炎のイラストに包まれる。どうやら発言した事がイラスト化する魔法らしい。それを見てユラが思い悩み始めると、同様に他の生徒達も考え出す。
屋敷の炎を消す方法。普通に水を出すだけではダメなのか。色々考えたが上手く答えを導き出す事ができない。ユラが一生懸命考えていると制限時間が刻一刻と迫る。結局最終的には一度屋敷を水没させるという答えにしたが、どうやら先生的には不適切な回答だったらしい。
「……かの有名な【皇帝ランペール】氏はこの場合、誰にも見せないよう煙で隠してから氷の霧で炎を消したらしい……つまりこの場合目立たず魔法を隠したまま火事を消すのが正解だという事だ」
自身が考えた魔法で水没して火事を消すやり方は、どう考えても目立ってしまうやり方だった。目立たず魔法を使う方法。確かにこの世界のやり方に従うとどうしてもそうなる。ならば今後外界で大きな魔法を使いたい時どうするべきか。それを知るため他の生徒と同様、真剣な眼差しでその授業に励んだ。
◆ ◇ ◇
「今日もミオリオいなかったねー」
怒涛の一日が過ぎたその後。新しいノートを買うためエルと共に買い物へ行くとユラがエルに対しこう話し出す。
「ミオリオのやつまた授業サボってどっかライブでもしに行ってるんだろ」
「ライブ?」
「そうライブ」
ライブってなんだろう。ユラがその単語について聞こうとするとある光景を目撃する。屋敷だ。しかも燃えている。黒煙を出して燃えるそれは昼間授業で見たイラストそっくりの光景だった。
「なんだろう……火事だよね?」
そうユラが言い出すと屋敷の門を開けて身を乗り出そうとする。しかしそれを見たエルがユラの肩を持ち引き留めようとする。
「ダメだユラ!危ないだろ!」
「だ、だって……」
素直に消防団を待とう。エルがそう言うと仕方なく後ろに下がるユラ。その炎は活発に燃え広がっているが果たしてどうにかなるのだろうか。そう考えていると屋敷の中から何やら人の叫び声が聞こえてきた。
「人がいる!助けなきゃ!!」
「ダメだユラ!危険すぎる!」
「っ!…………でも!」
そうしているうちにどんどん燃え広がっちゃうと言うユラを止めにかかろうとするエル。しかし彼女は一向に止まろうとしない。仕方なく一緒に屋敷の方へと向かうと、周りは火の海で。赤く染まるそれはまるで人の進行を阻もうとする壁のように見えた。
「…………仕方ねえな!あの火を消したいんだろ?」
「それなんだけどどうしたらいいんだろう?」
前のめりできた割にはノープランできてしまったと後悔するユラ。なにか方法はないか。おそらく使うなら大規模な魔法になるだろう。ただその規模だときっと右手の薬指の指輪があったとしてもコントロールしきれないはず。そう考えているとエルからある事を教わる。
「共鳴だ、2人であの炎に向かってそう唱えればいい!」
「で、でも私の魔力だとコントロール難しくてできるかどうか……」
「いや、できる!今ここに君がいて僕がいるなら!」
やるんだろと諭されるとエルを見つめ信じようとするユラ。やり方は手を繋ぎ唱える事だと説明されると、ユラは即座にエルと手を繋ぎ教わった呪文を唱えた。
「「共鳴!《シンパシー》」」
すると近くの川や水源から集まってきた水が大きな球体となって中心へと固まる。そして何が起きるかと思えば水が家の中へと入り込み、水没させるかのように包み込んだ。
「ユラ!このイメージではダメだ!中にいた人が溺れてしまう!」
「じゃあどうすれば!?」
「雨にするんだ!」
「雨?」
「大丈夫!僕がいればできる!」
そうエルが告げるとイメージを学校で作り上げたイラストのものから雨のものへと変更させる。すると大規模に包んでいた水の壁が破裂するように大きく上にあがり、やがて雨となった。
「……これでもう大丈夫だろう」
エルがそう話すとようやく安堵し共鳴の魔法を解除させるユラ。エルも同じく魔法を解除させると近くから人の声が聞こえてくる。
「……消防団だ」
だがさすがに見ず知らずの他人が敷地内に入っているのはまずい話すエル。ユラ自身もそう思い、これ以上大事にならないよう2人でこっそりその場から抜け出した。
◇ ◆ ◇
翌日教室に置いてあった新聞を見るとユラはある記事を発見する。
「火事と共に川の水がなくなる事件!?」
屋敷の火事と共に記されたそれは明らかにユラの影響で。今回もまたやったしまったなと反省していると後ろからカツカツと歩く音が聞こえてきた。
「なあユラ……昨日この近辺を歩いていたそうじゃないか」
後ろを振り向くとやはりクロノス先生で。どうしたものかと説明に言い淀んでいるとエルが腕を組みながらこう指摘する。
「いや、一緒にいたけど別の場所歩いてたぞ」
エルがクロノス先生に対しそう答えると先生は新聞にある写真を指さしこう言い放つ。
「いや写ってるからな!この写真のところに2人同時に!」
クロノス先生がそう言うとエルと2人で写真を確認する。すると端の方にバッチリ写っていて。これは訂正する余地もないなと苦笑しながら固まった。
「…………放課後職員室にくるように」
そう切り返すと冷たい態度でこの場を去る先生。クロノス先生に叱咤されるのを予想し2人は同時にため息をつく。この2人の仕業とでも言うかのように雨はここしばらく数日間続いたそうな。




