第125話 魔界の硬貨
秋の声が聞こえる頃の放課後。ユラはとある場所へ向かう為、1人魔界へと入っていった。そう先日クロノス先生との約束を果たす為魔界の長……エルフの長に会いに行ったのだ。最初は1人で魔界に行くのを恐れたユラ。だが慣れた足取りで向かうと段々そうではなく寧ろ楽しみだと感じるようになっていた。
「ええっと……この道をまっすぐ行けば……あった!」
前回はエル達と行った道。忘れないようにメモした甲斐があったとユラが思うと早速小屋をノックする。するとエルフの長が扉の隙間からひょこっと顔を覗かせる。
「おや、貴方ですか」
「ご機嫌よう、この前ぶりですね」
そうユラが言うと早速中へと案内するエルフの長。そして席へとつくと変わらぬ態度でこう申す。
「……さては依頼書で来た感じですか?」
「……依頼書?」
「はい、学校側に依頼書を出して貴方を指定しましたので」
なるほど。学校側に依頼書を出したから私が呼ばれたのかとユラは思った。確かにそれならクロノス先生に呼ばれるのにも納得がいく。そうユラが考えているとエルフの長は不思議そうにこちらを伺う。
「おや、そうではなかったですか?」
「いえ!学校から依頼があったのでここに来ました」
「なるほどやはりそうでしたか」
「あの……それでご用件というのは……」
用件とは一体なんだろう。そう考えたユラ。するとエルフの長が少し考えた仕草をした後こう話す。
「この前やってもらったあの魔力の提供なんですが……これからも定期的にしてもらえないかと思いましてね」
なるほど。その事かとユラが思うと分かりましたと首を縦に振る。なんだその事か。なんて事を考えているとユラはエルフの長にこう話しかけられる。
「よいのですか?魔力が足りてないと貴方花になってしまうのでは?」
「大丈夫です……あの時は色々あって姿が戻っちゃいましたがいつもならこのとおり魔力が多い事に自信があるので!」
「そうですか……それでは少々お待ちいただけますか?」
そう言うとエルフの長は何やら隣にある戸棚を開く。そして何かと思えばユラの手のひらにぽとりとコインを落とした。
「それはこの前魔力を提供してもらったお礼です」
「これは?」
「これは魔界で使用されている硬貨……要するにお金です」
「お金!?」
やはりただでやってもらう訳にはいきませんからねと話すと長い黄緑の髪を耳にかけるエルフの長。魔界の硬貨。一体どこで使えばいいのだろうかとユラが色々悩むとエルフの長からこんな事を言われる。
「例えば魔界にある大きな店とかに使用すると良いですよ」
「大きな店……そんな場所があるんですか?」
「ええ、私達はそこで買い物したりするのがほとんどですので」
今度場所を教えますよと話すとにっこりと微笑むエルフの長。こちらとしてもありがたい話だ。そうユラが思うとユラは思い出したかのようにエルフの長に約束を取り付ける。
「そうだ!私からも少し言いたいことがあって」
「……なんでしょうか?」
「私の正体が雑草の花だって事、学友の皆には内緒にしてほしいんです!」
ユラが思った事。それは花である真実を隠し通すというものであった。もし正体がバレたら今までの関係でいられなくなる。そう思ったからである。その為にはその事実を知っているエルフの長の口止めがどうしても必要だった。なので話をしてみたが……エルフの長としては理解不能な出来事だったようで。うーんと首を傾げられる。
「それはなぜ?」
「学友とは今までどおりの関係でいたいのです!……もし正体がバレたら……それまでの関係とは異なるものになってしまう……そんな気がして……ですから……どうかお願いします!」
「……ふむ……よく分からないですがいいでしょう」
「……ありがとうございます!」
エルフの長がそう言うとパァッと明るい表情へと変わるユラ。エルフの長的にはよく分からない事情だったみたいだが……それに反し深く頷くエルフの長。勿論ユラとしてはとても助かる事案で。ユラは心からエルフの長に感謝をする。
「……なるほど、人間なりの交換条件という事ですか……それなら理解できます」
「いや、そういうつもりではないのですが……」
そう的外れな事を言うと1人納得するエルフの長。ユラとしてはそういうつもりではなかったのだが……不思議そうに見つめるエルフの長を見ていると反論する気がなくなるユラ
。まあいいかという気持ちになりながらもその場を後にするユラだった。




