第122話 仲直りの知らせ
「ヤスチヨ〜どこに行ったのー?」
課外授業から帰ってきたユラが寮に帰るとそこにはいつものヤスチヨの姿が見えなかった。どうしたのだろうか。いつもならとっくに帰ってきている時間。なのに寮内を探しても姿は見えない。おかしい。こんな事今までなかったのにとユラが思うと1人で学校中を探し回る。
「ヤスチヨ〜!!お願い!!出てきて〜!!」
思い切ってそう叫ぶと寮内から誰かの声が聞こえる。ヤスチヨだろうか。そう思って思わず駆け寄るユラ。するとそこにいたのは思わぬ人物だった。
「あれ?ユラ、どうしたの?」
「ミオリオ!」
寮内からひょこっと現れたのはミオリオだった。ミオリオはそう言うとぴょこりとユラの元へ駆けつける。
「なんかあったの?」
「あのね……ヤスチヨの姿が見えなくて……どこにいるか知ってる?」
「うーんヤスチヨかー……見てないなあ」
そうミオリオが言うと途端に悲しくなるユラ。朝喧嘩をしたせいだ。あの時もっと優しくしていれば……とユラは1人後悔する。
「そっか……じゃあまたね……」
「ちょい待ち!……よかったら一緒に探すよ」
ミオリオがそう話すとユラの手を掴み引き止める。いいのだろうか。そう思うユラだったがミオリオは引き下がろうとしない。それを見たユラはしょげた顔で申し訳なく思いながらこう言う。
「じゃあ……お願いしようかな……なんて」
「いいよいいよ!あたし達友達だもん!」
困った時はお互い様だとミオリオが話すとほんの少し明るい顔に戻るユラ。気が晴れたのはミオリオのおかげだとユラは少し感謝する。
「じゃあまずあちらから探しに行こー!!」
「ちょ、ちょっと待ってよミオリオ!!」
そう言うと向こうを指さしどこかへと走っていくミオリオ。そんな天真爛漫な彼女に振り回されつつユラも走っていくとヤスチヨ探しがなんだか楽しく思えて。思わず駆け巡る。ヤスチヨは今どこにいるのだろう。そう思いながら探していくと本当に見つかる気がして。ユラはほんの少しミオリオに感謝した。
◆ ◇ ◇
「はあ……どうすればよかったのでしょう……」
重くのしかかる身体。今日はなんだかヒラヒラと優雅に飛ぶ気分でなくて。中庭で項垂れているとヤスチヨはある人物に声をかけられる。
「……いいのか?さっき探し回ってたぞ」
そこには飲み物と食べ物を持って歩くエルの姿があった。エルはベンチに腰掛けて食べ物を食べ進めるとヤスチヨに向かってこう言う。
「ユラ……お前の事探してるんじゃないのか?」
確かに声は聞こえた。だがなんだか顔を合わせる気にはなれなくて。思わず隠れてしまったのだ。その事を知ってか。先程から無言であるヤスチヨにエルは再び声をかける。
「いい加減姿を見せたらどうなんだ?」
「……分かってますの……でも……」
初めての大喧嘩。どうすればいいのか分からないヤスチヨは戸惑う。するとエルが帽子を被り直しながらこう話す。
「……素直に謝ればいいんじゃないか?喧嘩の原因はよく分かんねえけどそうした方が最適だ」
そう話すとヤスチヨの羽をなでて宥めるエル。少々くすぐったい手の感覚に戸惑うもそうした方がいいと自身も思い見つめるヤスチヨ。そうだそうしよう。そう思ったヤスチヨが再び羽を動かすと撫でていた手が止む。
「……ありがとうございます、そうしてみますわ!」
そう言うとどこからかユラの声が聞こえてくる。チャンスだ。彼女は怒るだろうか。振り子のようにそんな事を考えながら声の元への向かうヤスチヨ。するとその声の主はすぐ目の前にいて。彼女の目を見開かせる。
「もう!心配したんだから!」
「ユラ!今朝は酷い事を言ってしまいましたの……ごめんなさいですわ」
「ううん、こちらこそごめんね!」
ヤスチヨ達がそう言うとそばで温かく見守るエル達。仲直りできてよかったねと言ったミオリオの目がどこか潤んでいるように見えて。彼女達を心配させたなと心から謝り、そして感謝した。




