第118話 本日の主役の登場
辺りがミオリオの歌声で満ちると会場には大きな声援が響き渡る。そう今日は待ちに待ったミオリオのライブ。そんな場所でなぜエルと2人裏方にまわっているのか。それを説明するには約数日前まで遡る。
◆ ◇ ◇
とある朝の始業前の教室。普段どおりユラ達が教室に集まるとそこには出遅れてやってきたミオリオの姿があった。
「いっけない!遅刻遅刻!」
最近まで聞かなかったミオリオの声。そんな中、久々の姿に思わずユラが胸を撫で下ろすとエルが変わらぬ態度でこう話す。
「おっせぇぞミオリオ」
もうすぐで授業が始まるというのに呑気にしてるなとエルが付け加えるとミオリオがこんな事を口に出す。
「じゃーん!チケット!」
「なんだよそれ?」
「ミオリオ特製ライブチケットでーす!今回売れ残っちゃったからどうかなって思って!」
「ライブ?」
ミオリオのライブ。そういえば今週中はライブの準備で忙しいってミオリオが言っていた。どうりでここ最近欠席が多かった訳だ。そんな事を思い返すとユラ達はチケットを見て不思議そうな顔をする。
「でもこの中で行くならチケット足りないよ?」
「そうなの……流石にそこまで残らなかったみたい、流石あたしのライブって感じ!」
なるほど。それで2枚しか残ってないのか。とユラが1人納得するとミオリオが付け加えるようにこう話す。
「だからこの中でライブに行きたい人を探してるの……ユラ達はどう?」
「私行ってみたい!」
「僕は別に……」
「私もミオリオのライブ結構行ってるからいいかな?」
「もう!なんで皆して行きたがらないのよ!!」
ミオリオの反応を見る限りどうやら他の皆には断られたみたいで。ミオリオはただ1人悔し涙を流す。純粋に行きたいのは私だけだろうか。とユラが1人思うとミオリオはムッとした顔でこう叫んだ。
「こうなったらじゃんけん!!勝った者が行くって事で!!」
「強制かよ……罰ゲームじゃあるまいし」
「いいからじゃんけんして!ほらじゃんけん……」
ほいっと出した手。そこには勝ったエルとユラと負けたシャンディの手が出されていた。
「はい!これで参加決定ね!」
「……めんどくせえ事になったな」
「まあまあ……」
そう言って不貞腐れるエルを宥めると1人楽しそうに笑うユラ。ライブとはどういったものか。初めて体験するそれにワクワクしていると丁度授業前の鐘が鳴り始める。それにハッとしたユラ達が自身の席につくと、タイミングよく授業が始まった。
◇ ◆ ◇
こうしてやってきたライブ当日。ユラ達はチケットに指定されている場所までやってくると、そこには大きな会場と観客達で溢れ返っていた。
「すげえ人数だな」
エルが圧倒されたようにそう話すと早速受付へと並びチケットを見せるユラ達。随分と大きな会場だ。さぞかし楽しいライブになるに違いない。そう思ったユラは会場を見渡しながらこう問う。
「エルも来た事があるの?」
「ああ、ライブの手伝いと評されて何度か来た事がある」
「へえ〜」
そう楽しそうに見回るユラとそれに対しフッと笑いかけるエル。今回のライブ。始まる前から愉快に思ったユラはエルに対してこう話を進める。
「ライブ一体どんな感じなの?すごく楽しみ!」
「あ、ああ……まあ強いていえば歌が上手くていいかもな……」
「なんか言った?」
「……いや、なんでも」
エルが小声で話すとそんなエルを不思議そうな顔で見つめるユラ。するとどこかで見たような姿がチラリと映る。
「…………い、いた!……やっと見つけた!」
「ミオリオ!?」
すると今日の主役であるミオリオがなぜかこちらに来るではないか。焦った姿に思わず戸惑うとミオリオはこちらに来ていきなりこんな事を言う。
「ごめん!今日のライブ人手が足りなくて……このままだと延期になるかもしれないの!!」
「延期!?」
「だからお願い!力を貸して!」
そう言ったミオリオの姿に思わず驚くユラ。そんな姿にエルはまたかとでも言うように。帽子を被り直した後ため息をつくとエルは神妙な顔でこう話した。
「で?何すればいいんだ?」
「主に裏方で紙吹雪とかライトの演出をしてほしいの!」
紙吹雪やライトの演出。果たしてそんな高度な真似ができるのやら。とユラが思うとエルは仕方ないとでも言うように。首を縦に振りこう話す。
「はあ……分かった、ユラ……行くぞ?」
「で、でも私やった事ないし……」
「僕は経験者だから大丈夫だ……それにそんなに難しい事じゃない」
そう言うとそそくさと裏方の方へと向かうエル。そんな重要な事を私達に任せて大丈夫だろうか。とユラは思うが……いつもの姿勢で全く気にもしないエルに驚くとユラ達はその場から離れていった。
「おいミオリオ!そこにいる場合じゃないだろ?……主役は主役らしく舞台の練習でもしてろ!」
遠く離れたエルがそう言うと急いで舞台の方へと駆けるミオリオ。そう今日の主役はミオリオ。なるべく心配事のないようにしなくてはならない。そう意気込むと舞台裏の方へと走るユラ達。何とかこちらでできる事をしよう。そう思うとユラ達は裏方の方へと侵入し早速準備へと取り掛かった。
「さて本日のライブですが少々遅れている模様……ですが予定どおり始めますので期待してお待ちください!」
司会者がそう話すと早速会場に上がる準備するミオリオ達。忙しい事この上ないがこのライブが上手くいくよう祈るとようやく舞台上にミオリオの姿が現れた。
「皆〜!!元気にしてたかなあ?」
ミオリオが観客に向かいそう話すと会場は熱いエールで満たされる。そんな熱気に負けずこちらもライトを調整していくとミオリオの顔にキラキラと輝く照明が当たった。
「早速1番目の曲いってみよ〜!!」
そうミオリオが言うと早速1番目の曲が始まる。初めて聞くミオリオのロックな歌に思わず圧倒されるとユラはタイミングに合わせてライトを動かし続ける。
「……そっちは上手くいってるようだな」
「ありがとうエル、色々教えてくれて」
ライト調整やライトの動かし方は全てエルから学んだ事。そんなエルの姿に頼もしいと感じると思わず胸をくすぐるユラ。エルの姿を見て感謝でいっぱいになりつつ、ユラはひたすらライトを動かしまくる。
「こちらもそろそろだな」
エルがそう言い指を鳴らすと舞台の上から紙吹雪が舞い落ちる。そんな演出に観客達も大盛り上がり。タイミングよくひらひらと舞うその演出に思わず見とれるとユラはニコリと笑みを浮かべる。それはまるで雪のようで。ギターを奏でながら歌うミオリオの姿がどこか美しく映った。
こうしてライブは順調に進み事なきを得た。ライブを真正面から見れなかった事には残念だと悔しがったが、貴重な体験ができて楽しかったと思うユラであった。




