第114話 混乱の万華鏡
「ここが境目かな?」
ティグリスが1人学校があるであろう場所の境目へと向かうと、早速ティグリスはその結界を掻い潜る為に呪文を唱える。
「0分00秒」
すると結界が小さく解かれ人サイズにまで広がっていく。その向こう側の景色はまるで絵本にある御伽の国のようで。ティグリスをほんの少し喜ばせた。
「さて、早速だが先生はいないかな?」
結界を掻い潜った後ティグリスは誰かいないか校庭の方へと向かい歩き出す。赤や青の珍しい草花。その優しい景色に黒を塗るかのように。校庭へと忍び寄るとティグリスはある人物を発見した。
「おやこれは……クロノス先生、お久しぶりです」
「……久しぶりだなティグリス」
ティグリスがそう言うと何やらムッとした表情でこちらを見るクロノス先生。理由は分かっている。確かにアポなしで来た事のは礼儀知らずではあるが……それだけではないだろう。そう思ったティグリスがシルクハットを深く被り直すとクロノス先生から冷たい一言が出る。
「国の番犬がこの学園に来るとは何用か?……今すぐ出てってもらおうか」
「まあまあそう言わずに……」
クロノス先生がそう言うと1人杖を構え攻撃しようとする。実力行使か。などと考えているとクロノス先生の後ろから見慣れた生徒の姿を発見する。
「あーっいた!クロノス先生!!……ってティグリスさん!?」
「やあ!遊びに来たよユラ」
「やだっ!誰このイケメン!」
ティグリスが首を傾げて挨拶するといつもの如く元気な声で話すユラ。どうやら他の生徒もいるようだが……相変わらずの姿に思わずほっとするとこちらに杖を向けていたクロノス先生が生徒達に下がるようにと指示する。
「どうかしたんですか?」
「いや、今丁度脅されててね」
「……クロノス先生!何やってるんですか!?やめてください!!」
そんな生徒達の姿に観念したのか。そのまま杖を向けていた手を下ろすクロノス先生。相変わらずの厳しさだなとティグリスが思うと他の生徒達も興味本位でやってくる。
「なんかよく分かんないけどイケメンに手を出すなんて酷いわ!クロノス先生!」
「そうですよ!」
ミオリオが言うとユラもそれに便乗してクロノス先生を叱る。本来であれば逆の立場なはずだが……こればかりはクロノス先生が悪いとばかりに先生を咎めた。
「そうだな……軽率だった…………それで何の用だ?」
だいたいは分かるがなと口にすると深くため息をつくクロノス先生。そんな姿に思わずクスリと笑うとティグリスはクロノス先生に対しこう答えた。
「来週の魔力提供会の参加についてお聞かせ願いたい」
やはりその話かとクロノス先生が思うとティグリスは深くお辞儀をした後ニコリと笑いだす。こちらとしては生徒の参加を拒否したいところだったが直接来られると拒否しにくいものがある。そうクロノス先生が考えているとミオリオから何の事かと聞かれる。
「先生、魔力提供会って何?」
「はあ……あまり聞かせたくなかったのだが」
「君、魔力提供会って言うのはね……」
「ティグリス!それ以上口に出すな!」
飄々としたティグリスの態度に思わず苛立つとティグリスはおー怖いと言い一旦距離を引く。その姿を見た生徒達は怪訝な顔で。何やらコソコソと呟いた後クロノス先生にこう質問した。
「先生……さっきから様子が変ですよ?いつも落ち着いてるのに……そんなに聞かせたくない事なんですか?」
シャンディがそう言うとユラ達はそうだそうだとでも言うように。首を縦に振りながら怒ったような顔でこちらを見る。
「……魔力提供会というのはその名の通り己の魔力を提供する会の事だ……本来であれば生徒は参加しない予定なのだが……今年に限っては生徒も参加させるように言われててな」
魔力提供会。ユラは勿論知っていた。なんせこの間ティグリスに教えてもらったばかりだ。ティグリスから聞いた話だとただ魔力を捧げるだけだと聞いていたが……なぜそこまで反対するような態度をとっているのだろう。とユラが不思議そうに見つめるとクロノス先生が猛反対するようにこう話し出す。
「あれは生徒達には危険すぎる!今回に限ってなぜ生徒込みでの参加なのだ!?」
「こちらも何かと人手不足でね、魔力を持つ者といってもこの国ですら少ないだろう?だからどうしても生徒達の力が必要なんだ」
「気持ちは分かる!……だがそこまでして生徒達を巻き込む必要があるのかと聞いている!」
「この国の為なんだ……分かってくれませんか?クロノス先生……それにクロノス先生も前はこちら側だったでしょう?」
「黙れ!!」
ティグリスがそう言うと余計な事を言うなとばかりにこちらを睨めつけるクロノス先生。確かに余計な一言だった。そう反省すると近くにいたユラがこの光景を不思議そうに見ながらこう言う。
「その魔力提供会って国の為なんですか?」
「そうだよ、とても大事な行事さ」
「……だったら私だけ参加する事は可能ですか?」
「ユラ!」
「私なら魔力もいっぱいあるし体力だってあります……それなら他の子が出席しなくても済むじゃないですか」
まるで自分を犠牲にとでもいうかのようだ。ティグリスはそう思った。ユラらしい結論。ただそれだと少し心配だと思ったティグリスは1人考え込む。
「ユラが行くならあたしも行く!」
「ミオリオ!」
「ユラだけ危険な目に遭わせたくないもん!……それにイケメンさんの役に立ちたいし!」
ミオリオがこう言うと他の生徒達も次々と参加に応じる。なるほどこれは頼もしい。そう思ったティグリスが満足そうに見つめるとクロノス先生が観念したようにこう告げる。
「分かった……そこまで参加したいのなら参加を認めよう……」
「……ご協力感謝します」
「但し条件がある」
クロノス先生が出した条件。それは皆の安全の確保だった。それさえ守れば当日生徒と参加するとの事。それを聞いたティグリスは首を縦に振り満足そうにこう語る。
「いいでしょう……必ず生徒達の身の安全を保証します」
「……まあいい、用が済んだならとっとと帰ってくれ」
「分かりました……ではご機嫌よう」
ティグリスがそう言うと結界を開きとっととその場を去る。それを見たクロノス先生が深くため息をつくと生徒達はどこか嬉しそうにこちらを見ていた。
「魔力提供会かー一体どんな行事なんだろう?」
「お前ら!遊びじゃないんだぞ!」
ある意味肉体労働に近いんだぞとクロノス先生が言うと生徒達は一斉にええーっ!と騒ぐ。全く困った教え子達だ。クロノス先生が1人そう思うと再び教室に戻るよう指示した。




