第111話 物寂しげな後ろ姿
古びたテントの裏側。今日も1人こっそりと入るとちょうどマジックショーを終え片付けに入っているティグリス達の様子が見えた。
「ティグリスさんお疲れ様です」
「ああ、ユラか!待っていたよ」
ユラがティグリスに向かい挨拶するといつもどおりの笑みでティグリスが出迎える。今日は労働の日。いつものように手慣れた手つきで魔力を提供するとティグリスは満足そうに差し出した魔力の結晶を眺めた。
「毎度思うのですがこれって何に使われるのですか?」
「ああこの魔石かい?」
魔石。それは魔界にもよく生えている石だ。それをユラが不思議そうに見つめるとティグリスは何やら考えながらこう話す。
「……例えば電気の発電とかに使われているかな?」
「電気ですか?」
「そうそう、基本国民達に提供する為に使用されているんだよ」
「なるほど」
勉強になったかいとティグリスが問うとユラは満足そうに笑みを浮かべる。この魔石が国民の為として使われる。そう考えると悪い気がしなくて。思わずニッと笑いだす。
「そういえば今日もマルス狩りに行くんだけど……よかったら来ないかい?」
「えっ……でもこの後予定があって……」
「そうなのか……非常に残念だ」
そんなティグリスの様子にユラはえっそれだけと思った。なぜならいつもなら強制的に連れ回されるからだ。いつもと違う反応に思わず驚くとティグリスは不満そうな顔でこちらを見あげてくる。
「なんだい?……今日も強制的に連れ回されるとでも思ったのかい?」
「いや、あの……確かにそうなんですが……」
「全く……人の事をなんだと思っているんだい……」
「すみません、また脅しでも使って連れ回されるのかと……」
「……まあいい…………では近況報告といこうか」
そう言うといつもの飄々とした態度に戻るティグリス。近況報告といってもここ最近はマルスによる情報はない為ユラはなあなあに済ませて話を終える。するとティグリスから期待の言葉で。来週に向けて何やら話し始めた。
「そういえば来週だね魔力提供会」
「魔力提供会?」
「おっとまだ学校から知らされてないのかい?……それとも生徒を守る為かな?」
「?……何が言いましたか?」
「いや何も」
魔力提供会。聞かされていなかったがどうやらその名のとおり魔力を提供する会の事らしい。初めて知ったユラはなんの事やらと思ったが……いつものように魔力を提供するだけでいいとの話をティグリスから聞いた。
「魔力提供の大型版って事ですか?」
「まあそういう事になるね」
期待してるよとティグリスが言うとユラは別れの言葉を告げその場から離れる。
「……最近楽しそうだね……ユラは」
魔導大会に魔力提供会。忙しい日々でさぞかし満喫しているのだろうとティグリスが1人思うと、再びシルクハットを被り直しその場に佇む。ユラの後ろ姿を見るとどこか楽しそうで。ティグリスが再び席につくと棚の中を整理し始めた。




