第109話 過去と未来の決着
「優勝したからいいですよね?先生?」
すっかり暮れた職員室。ユラが1人クロノス先生に確認を取るとクロノス先生は諦めの表情で。ユラに対しこう述べる。
「はあ……まあ約束だからな……」
「いいんですか?」
「まあ……特別だぞ……ただし!」
「ただし?」
「万が一魔法を使う時は了承を得てからな?」
あそこにある魔法は危険すぎるからなと一言付け加えるとクロノス先生はため息をつき不貞腐れる。そうユラは大会が終わったその後、優勝した見返りに地下にある禁忌の図書室へと案内するよう先生に話したのだ。とってつけた約束だったが……まさか本当に禁忌の図書室を開けてもらえるとは夢にも思わなかった為ユラは心から喜んだ。
「では参るぞ……まさかユラこちらの方が優勝賞品だと思ってはいないだろうな?」
「ま、まさか!とんでもない!あの杖はあの杖で嬉しいですよ!」
装飾品だけどと内心一言加えるとユラは喜ぶフリしてその場を収める。地下4階にある禁忌の図書室。久しぶりに行く場所だ。ユラがそう思いながら扉をくぐり抜け地下4階へと階段を進めるとクロノス先生が歩きながらユラに質問をする。
「そういえばなぜ君はアルバ語が読めるのか?」
「えっ、アルバ語ですか?」
「そうだ」
なぜと聞かれても。アルバ語自体は200年前まで普及されてた文字だ。だからなぜと言われても困る。そう思ったユラは苔が茂った階段を降りながら順に説明する。
「なるほど……そういえばユラは200年前から来た人間だったな」
「来たというか気づいたら200年経ってた感じなんですけどね……」
「確かにアルバ語自体は200年前まで存在していたな……今はもう廃止となって使われていないが……」
クロノス先生がふむ……と1人納得するといつの間にやら。ユラ達は目的地である地下4階まで来ていた。
「……着いたぞ」
久々の風格。少々埃っぽいが室内に描かれた魔法陣で禁書達が封印されているのが見て取れた。机に描かれた白く整った魔法陣の線をなぞるとユラは神妙な気持ちにさせられる。
「……相変わらずすごい場所ですね」
「だろ?だからあまり無闇に触れるなよ?」
そうは言うものの……目的である時を戻す魔法が書かれた禁書の類似本を探すにはそれなりに本に触れる必要がある。そう思いユラが1つの本に触れるとクロノス先生はそれはダメとでも言うように。ユラに声掛け動作を止めさせる。
「それは死体を扱う魔法だらけだからダメだ……あっそれも……それも良くない」
「もう!読めないじゃないですか!!」
「それぐらい危険な本が多いという事だ」
クロノス先生はそう言うが……どうしてもここに身体を戻すヒントがあるような気がして。ユラは咎めながらも何とか本を探し出す。
(そういえばミオリオが言っていた時を戻す魔法の本って)
時戻しの魔法の本は赤い棚にあるとミオリオが言っていたなと記憶を辿ると、ユラは早速その赤い棚を探し出す。青い棚や緑の棚など様々な色の棚を掻い潜ると、ひっそりと端に置かれた赤い棚を発見した。
「ここに時を戻す魔法書が……」
「ん?それの事か……それならあそこにあるぞ」
くれぐれも口にして読むなよとクロノス先生に注意されると早速時を戻す魔法が書かれているであろう本を手に取り読み始める。古びた紙と埃の匂いに包まれたそれは禁書というにはふさわしい風格で。全てアルバ語で書かれたそれを読み進めるとユラは目的であった時戻しの魔法を発見する。
「こ、これが時戻しの魔法……」
「読むだけだぞ!確かそれも死体とか扱う呪文だったはずだからな」
「死体……ネズミの死体とかでもよかったり……?」
「……いや確かに死体ではあるが……」
そうクロノス先生と話し合うとユラはふとこんな事を考える。もしこの魔法で過去にいけるなら……。それは身体を戻すだけでなくギュンター達との再会を意味していた。
(でもそうしたらこの学園であった出来事とかはどうなっちゃうのだろう?)
やっぱりなかった事になるのだろうか。強い拒否感に襲われる。もしそうなったら。エルやミオリオ達とも会えなくなる。そう意識したからだ。
「……どうした?」
「……いえ、なんでも」
ひとまずこの魔法は見なかった事にしよう。ユラはそう思った。なんせこの数ヶ月の出来事をなかった事にしたくない。失ったものは多いけれど今はこれではないなと思いそっと本を閉じる。
「さあどんどん本を掘り出していきましょう!」
「いや、先生としてはあまり掘り出してほしくないのだが……」
ユラがそう言うと上空に向けて手を伸ばす。その姿を見たクロノス先生はやれやれとばかりにため息をつき困惑の表情をしていたが……ユラは気にする事なく本を探し求める。今日探し出せなくてもきっとどこかに類似した魔法があるはずだ。そう考えると探索しているような気持ちになり。どこか晴れやかな気持ちでユラは本を探し続けた。




