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二度死ぬ彼女は雑草の姿をした魔法使い~マルス適合者~【PV10000感謝】  作者: しがない草
第十一章 禁断の図書と魔道大会

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第108話 確定した優勝者

「さあ残るは最終戦!優勝するのはどの選手になるのか!」


 ヤスチヨが実況席で話し込むと一斉に会場の士気が上がる。そうこの試合で優勝者が決まる。ユラがそう思うと辺りに緊張が走った。


「まもなく最終決戦が始まろうとしていますがここで残念なお知らせ!最終戦に参加予定だったミオリオ選手が怪我の都合で欠席との事」

「まあ万が一の事があるからな」


 そうこの予定されていた最終戦だが怪我をしたミオリオは最終的に不戦勝となったらしい。ユラも後から聞いた話だったがこれにはとても残念がった。


「今回戦うのはユラ、そしてエル選手!」


 ヤスチヨが実況すると会場には大きな声援が広がる。その声援に思わず観客席の方へと視線を向けるとユラはゴクリと息を飲み緊張する。


「ルールは分かるな?先に旗を持って帰った方が勝ちだ……では……始め!」


 クロノス先生が開始の合図を鳴らすと2人は勢いよく空へ旅立ち旗の方へと向かった。


「いっけー!あたしの分まで頑張れ〜2人とも!」


 ユラ達が勢いよく飛び去ると不参加になったミオリオの声援が聞こえてくる。


(ミオリオの分まで頑張んなきゃ!)

「祝福ノ樹木!《アビエス・フェルマ》」

「……冬の篝火《ズィマー・コスタ》」


 そう思ったユラが早速エルに向かい妨害を始めると、エルは難なく避けその場を回避する。さすがエル。やはりエル相手だと先程の試合で使った小さな檻も何の役にも立たないようで。何事もなかったかのようにあっさりと突破されてしまう。


「おおっと先程の試合で使っていたユラ選手の檻も難なく突破されてしまった!」

「エル相手だとそう簡単にはいかないだろうな、ガハハ!」


 そう相手はエル。1体1だとここぞという時に用意してきた作戦もなかなか上手くいかないだろう。そう思ったユラが顔を見上げると今度はエルの方から攻撃を仕掛けてきた。


「六花の旅の幻想《ズィニェ・グリーズ》」


 すると先頭を飛ぶエルの真下から何やら結晶化した木が複数生え始める。一体どういう風の吹き回しか。ユラがそう考えていると結晶の木はどんどん伸び始め、壁のようにユラの行き先を妨害する。


「おおーっと!エル選手、ここで新たな技を繰り広げました!美しく生える新樹はまるで真冬の樹木のようです!」


 実況席でヤスチヨがエルの魔法を褒め称えるが……そうは言ってもただの木。先程あった水の壁のように避ければいいと考えたユラはジグザグと進み抜け出そうとする。するとその甘い考えに反してか。樹木達はユラの進路を妨害し始めた。


「っ…………!ここで負ける訳にはいかない!!」


 肌にかする枝。これでもかというくらいに大きくしなる木々を何とか避けくぐり抜けると、ようやく宙に舞う旗の姿を捉える。なんとしてでも勝たねば。そう思ったユラが遅れをとらず高速で空を飛び回ると、ある木がユラの箒に触れた。そして何かと思えば枝を伝って箒の穂先が凍り始めた。


「な、なんとユラ選手!エル選手の作り上げた樹木に捕らえられ動けなくなってしまった!」

「こりゃ大変だなあガハハ!」


 ヤスチヨ達が実況するように予想外の捕獲に動けなくなっているとエルが赤い旗へと手を伸ばす。そしてそのまま旗を持ち去るとまっすぐゴールの方へと向かっていった。


(まずい……このままだと優勝できなくなっちゃう!)


 そう考えたユラが凍った穂先に対し呪文を唱えると箒は綺麗に枝から離れていく。そしてそのまま飛び去るとユラはエルの方へと向かった。


(きっとこのまま行っても妨害されちゃうだろうから……そうだ!)


 ユラが考えた最後の秘策。それは枝に捕らわれない距離まで高く飛び、並走するという作戦だった。そしてエルの方により近づく為に極限まで箒を軽くする方法まで考えつく。それは魔法で人の身体にしているユラじゃないとできない技でもあった。


「先に上空!そして身体全体を極限まで空にする!」


 それは身体の濃度を下げるという技。ユラからすると下手をすれば植物の姿に戻ってしまう危険な技だったが何事もなくいとも簡単に成功する。


(……この日のために魔力コントロールの練習しといてよかった!)


 ユラが一息つきながらそう考えると猛スピードでエルのところまで追いつく。


「この後どうしよう……そうだ!ミオリオから聞いたいい方法があった!」


 ミオリオから聞いた必殺技。それはエルを驚かせる方法だった。試合前ユラはミオリオとこんな話をした。


「これからエルと戦う訳だけど……上手く勝てるかなあ」

「大丈夫大丈夫!ユラなら上手くやれるって」

「……本当かなあ」

「じゃああたしがエルを引き止める必殺技を教えてあげる」

「必殺技?」

「必殺技というか驚かせる技だけどね」

「なになに?」

「それはね……」


 そうその必殺技。今ここで披露するべきなのでは。とユラが意気込むとユラはエルに極限まで近づき猪突猛進すると、勢いよくガバッと抱きしめ旗を握りしめた。


「ちょっ……!待っ!」


 ユラの思いもよらない行動に思わず動揺したエル。さすがにたじろいだのか。エルの箒がゆっくりと落下し始める。


「ごめんエル!先行くね!」

「ま、待て!」


 そんな彼の声に逆らうように勢いよく飛び去っていくと、ユラの目先にはゴール地点である白い線が待ち構えていた。あと一歩、あと一歩のところまで飛び回ると会場の周りに大きな笛の音が鳴り響く。


「ゴーーーール!先に旗を持って戻ってきたのは……ユラ選手だああああ!」


 ユラがゴールすると観客席が大きな声援で満たされる。これにはユラも思わずガッツポーズを入れ声援を受け入れた。


「やったねユラ!優勝おめでとう!」


 箒に乗ったユラが少しずつ地面へと舞い戻るとそこには親友であるミオリオの姿があった。ミオリオはそんなユラの姿を見るや否やそのまま真正面に向かい抱きしめ祝いの言葉を話す。


「ありがとう!」

「いい勇姿だったよユラ!……あっ、あんまり抱きしめちゃダメよね」

「へっ?なんで?」


 ユラがそんなミオリオに対し礼を言うと、ミオリオは何やら意味深げな顔でこちらを見上げた。するといつの間に舞い戻ってきたのやら。エルが帽子を被り直しながらこう話す。


「……うるせえな」


 そう言ったエルの顔はどこか赤く染まっていて。ユラは思わず心配になった。先程の出来事。ひょっとしたら怒っているのだろうか。そう思いエルを気遣うとエルは別にと不貞腐れる。


「さっきはごめんエル!……怪我とかない?」

「別に……気にするな」


 そうは言うものの……大丈夫だろうか。そうエルを気遣うとミオリオは1人でクスクスと笑っていて。なぜ笑っているか検討もつかないユラはミオリオに対してこう怒る。


「もう!笑い事じゃないんだから!」

「いやっ、ほんとごめっ!…………あ、そうだそうだ!そういえばそろそろ表彰式じゃない?」


 そういえばもう少しで表彰式だ。そう思ったユラ達が体育館の上がり台まで向かうとそこには表彰台が設置されていた。


「……上がってもいいのかな?」

「誰の為の優勝台だと思ってるのっ!」

「わっ!」


 ミオリオがそう言うとユラの背中を押し前へと進ませる。確かに優勝したのは自身だがそう軽々と立っていいものだろうか。などと考えていると後ろにいたエルがユラを引っ張るようにこう語りかける。


「……行くぞ?ユラ」

「……うん!」


 こうして上がった優勝台。人が乗るには大きな幅と長さで。ユラは1人たじろぐ。


「ええー、結果発表ですの!本日の魔導大会で優勝したのは……ユラ選手ですの!」


 ヤスチヨがそう言うとユラに大きな拍手が与えられる。それにタジタジになるとユラは照れくさそうに微笑んだ。


「そして準優勝はエル選手、3位はブライア選手となりましたわ!」


 ヤスチヨがそう実況すると今度はエルとブライアにも大きな拍手が与えられた。エルのソワソワした感じとブライアの仄かに赤い顔。優勝ではないとはいえどさぞかし嬉しかったに違いない。


「まあ優勝ではないがこれはこれで嬉しいもんだな」


 ブライアが照れくさそうに笑うと会場は大きな拍手で。競技に参加した皆を称えた。色々あったけど楽しかった。ユラがそう思うとクロノス先生がのっそりとこちらにやってくる。


「優勝おめでとうユラ!……これは優勝賞品だ、大切に扱えよ?」


 そう言って渡されたものはキラキラと装飾された小さな杖だった。黄金に輝くそれは実用品ではなく装飾品である事が見て取れる。


「わぁー!綺麗な杖!ありがとうございます!」


 こうして無事に終わった魔導大会。色々ハプニングもあったが何とかやり遂げた事に誇りを持ったユラ達はその場から離れる。


(この杖どこに飾ろうかな?)


 ユラがただ1人そう思うと黄金の杖は煌びやかに光り出す。それは照明の光に反射しキラキラと輝かせユラを喜ばせた。そんな杖を片手に持つと杖は更に煌びやかに光る。それはまるで宝石のようで。その輝きに胸を打たれると1人ユラは寮内のどこに飾ろうか悩んだ。

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