第105話 内心のくすぐり
ユラ達が体育館へと向かうといよいよ最後の種目。旗の争奪戦が始まろうとしていた。
「ユラ!お疲れ様ですの!」
「お疲れ様!ヤスチヨ!」
広い体育館の中で2人仲良く談話をしていると、近くにいたマートル先生がユラに対しこう話しかける。
「いいのか?練習とかしなくて」
「えっいいんでしょうか?」
確かにチーム分けした結果を見るとユラの出番はまだではあるが……自分だけ練習とかして大丈夫なのだろうか。などと考えていると後から来たルゼがユラを見てこう話す。
「……君はいいのか?他の連中はもう飛ぶ練習に入ってるぞ?」
「ええ!そうなんだ……じゃあ行ってこっかな……?」
そう言うと観客席の方へと向かうルゼ。何やら落ち着いて席に着いているようだが……ルゼ自身は大丈夫なのだろうか。そう思ったユラはルゼに対しこう呼びかける。
「ルゼはいいの?」
「ああ、箒に乗るコツは掴んだから問題ない……それにこれからエルの試合が始まるからな」
ルゼがそう言うと眼鏡をクイッと上げ再び顔を体育館側へと向ける。そうか。確かにチーム分けの表を見ると最初の対戦相手はエルとシャンディとシルビィーだ。そう言われると妙な気持ちになり思わず足を止める。
「……なんだ、行かないのか?……それとも気になるのか?次の対戦が」
「……ちょっとだけ興味があったりして……」
そうユラが話すとルゼは困ったようにため息をつく。そりゃそうだ。こんな態度でどうすると自身を律するとユラは練習する為に外へ出ようとする。
「結局行くのか?」
「まあ……うん、行かなきゃ」
「……それならそれでいいが……エルは悲しむかもな」
「ん?何か言った?」
「……いや、なんでも」
そういって引き止めてきたルゼに練習する事を告げるユラ。するとルゼはユラに聞こえない程度の声でポツリと話す。そんな態度をとってしまったがユラとしては気にもとめてないようで。ルゼはやれやれとばかりに手を振り、その場から離れようとするユラに別れを告げる。
「……いってらっしゃい」
ルゼがボソリと話してから後ろを見上げると、そこにはもうユラの姿が見えなかった。それを確認したルゼは再度真正面を向き試合が始まるのを待ち構える。
「まあせいぜい頑張って」
そう言ったルゼの言葉は誰にも聞かれる事なくそっと消えていく。それは小さな応援歌のようで。囁かな言葉を送るとルゼは鳴り響く開始の笛と共にその場を楽しんだ。
◆ ◇ ◇
一方会場から離れたユラはというと今回の試合に使用する箒を持って空へと舞おうとしていた。
「今回の試合……ひょっとしたらエルが勝つかもしれないからね」
そう言いながら箒に跨ると心地よい風が流れてくる。箒は前回の授業と同じもの。だからなのか。箒もユラの気持ちを分かっているかのように素直に宙に浮かびだす。
「そうそうその調子!」
ほんのりと燃える闘志。その気持ちに答えるかのように箒は勢いよく空を旅立つ。それはまるでユラを奮起させているようで。箒のその飛び具合にややくすぐったさを感じてしまう。
「よし!これなら行けそうだ!」
そう意気込むと練習の為か。今度は角度をややキツめにして飛ばそうとする。
「イヤッホオオオオオオ!」
すると箒はまたしてもユラに答えるようにきつめの角度で舞い上がる。伝わる感覚と風を切るような空気感。その挙動に思わず叫び声を出すとユラは再び平面を飛ぶように箒に指示した。
「うんうん、悪くないわ!」
そうこうしてる間に時間は刻一刻と過ぎていく。準備は万端だ。そう意気込むとユラは再びまた再びと箒に跨り空を泳ぐ練習をした。
ユラが帰ってきた頃には2試合終わっていた事は言うまでもない。




