第104話 消え盛る檻の中で
シルビィーが3人の周りに静寂の結界を張ると、3人は早速作戦会議を行い始める。
「まずどう動けばいいか簡潔に考えようぜ」
「はい!」
「ユラ」
「こういう作戦はどうかな?」
ユラが手を挙げるとブライアはユラを名指しで呼び出す。そしてユラはというと何やら両手を動かしながらこう話した。
「まずシルビィーが昆虫を呼ぶ魔法を唱えるでしょ?それで昆虫達が来たら私が大きな檻を出現させて中に閉じ込めるの!そしたら他のチームに奪われる事はないでしょ?だからその隙に網でアオスジトンボを捕まえるの!」
なるほど。確かにいい案だとブライアは思った。だがまだスジが甘いとブライアは考える。
「確かに悪くない案だが、その檻ごと襲撃された時にどう対処すればいいんだ?」
「ええ〜悪くないと思うんだけどなあ」
別に悪い案とは一言も言ってないのだが。そう思ったブライアは頭を掻きながら慎重に話を進める。
「別に否定した訳じゃない!……ただ向こうには檻を解体するのが得意なルゼとかがいる……だから作戦が失敗しないか心配になっただけだ!」
そう言うとか気でも逸らすかのように腕を組むブライア。その態度にやや思い悩むユラだったが……気にせずシルビィーの方を向くとシルビィーは何か言いたげな態度で。ポツリと口にする。
「え、えっと……それならこういうのはどうかな?」
「こういうのって?」
「ブライア君が檻に触れられないよう炎で妨害するの」
「悪くはねえが……それで上手くいくのか?」
「ブライア君ならきっと上手くいくよ!」
シルビィーがそう言うとブライアは悪い気がしなかったのか……少々顔を赤くしてこう言い放つ。
「わ、分かったよ!やればいいんだろ!?」
全く素直じゃないなとユラが思うとブライアは1人下を向き不貞腐れる。余程期待されて嬉しかったのか。彼の耳は夕日のように赤く染っていた。
「よし、じゃあそれで行こう!」
ユラがそう言うと2人は視線をユラの方に向け小さく頷く。そして細かく作戦を考えると3人揃って水辺の方まで走っていった。
◆ ◇ ◇
「準備はいい?」
「ああ、こっちはいつでもOKだ」
「シルビィーも?」
「う、うん!大丈夫だよ」
「それじゃあ……GO!」
ユラが2人に対し確認をとると、シルビィーは大きく指笛を鳴らし昆虫が来るのを待ち続けた。するとその音に反応するかのように、昆虫達は一斉に渦を巻きながらシルビィーの元へとやってくる。
「今だ!行くぞ!」
「えー昆虫達ばっかじゃん!あたし虫苦手なんだけど!」
「全く忙しないな」
するとやはりか。そうこうしてるうちにそれを望んでいたエル、ミオリオ、ルゼがその場に乗り込み昆虫達を捕まえようとする。
「ゲーッ!奴ら結構近くに潜んでやがった!」
「ここは私に任せて!……祝福ノ樹木!《アビエス・フェルマ》」
ユラが作戦どおり昆虫を中に入れるように大きな檻を出現させると、昆虫達は一気に檻の中へと滑り込んでいく。これはシルビィーの魔法の賜物だろうか。その光景に思わず感心していると、ブライアが追い討ちをかけるように炎の魔法を唱えた。
「炎の檻!《メッゾブラスト》」
ブライアが唱えると檻は赤い炎の壁に包まれ周りを焼き尽くす。これならしばらくの間妨害を受けても大丈夫だろう。そう安心しているとブライアは檻の中にいる2人に対し早く捕獲するよう促す。
「早くしろ!時期に突破されちまうぞ!」
「分かった!」
ブライアにそう伝えると2人は急いでアオスジトンボを探し出す。赤いクワガタ、紫のカナブンとあまり見ない虫ばかりが飛んでいるが果たして本当にいるのだろうか。そうユラ達が思っているうちに外では様々な攻防が繰り広げられていた。
「ルゼ、行ける?」
「いやダメだ……炎の壁が分厚すぎて解体するのが難しい」
「そんな……せっかく捕まえられるチャンスだって言うのに!」
「あれ?シャンディ達いたの?」
一方外ではルゼとミオリオが何とか炎の壁を退けられないか考えていた。ミオリオといえば水魔法の得意者。それに加え同じく水魔法の使い手であるぺぺ達も集まっていた。
「やっぱり水をかけるしか方法はないってわけね」
「そんな事させるかよ!衝撃波!《プロミネンス》」
「ええ!ブライア様ったら酷い!!」
ブライアが片手で抑えながら呪文を唱えると、ミオリオ達の足元に大きな炎が飛び移る。ここは森の中。ブライア的にはあまり使いたくない技だったが、そうこうしてられない彼は次々と炎の雨を降らせていった。
「急げ!俺も何とかやってはいるがそんなに長くは持たないぞ!」
ブライアがユラ達にそう叫ぶと2人は急いでアオスジトンボを探しまくる。だが四方八方昆虫の壁。どこにいるか検討もつかないシルビィー達は檻の中で途方に暮れる。
「ここにも……ここにもいない…………あっ、こ、これは!」
「ど、どうしたの?」
「いた!あそこに!一際大きい青いトンボが!」
そう言って指さすユラの先を見るとシルビィーは思わず目を見開く。それは正真正銘アオスジトンボ。檻の中で一際目立つアオスジトンボは丁度高い位置にぶら下がっていた。
「後は捕まえるだけ!」
ユラがそう意気込むと檻の外で何やら妙なものが光り出す。そして何者かが呪文を唱えるとユラが作った檻が少しずつ壊されていった。
「……冬の篝火」
そうその呪文を唱えたのはエル自身だった。エルが唱えると檻は解体するようにじわじわと壊れていく。まるで氷を溶かすかのように。
「よし!エルさすが!」
「これで私達もようやく動ける!」
「……やべえ!早く捕まえろ!」
このエルの活躍に思わずニヤリと飛び跳ねるミオリオとシャンディ達。これにはさすがに焦燥したのか。ブライアが2人に対し早くするように呼びかける。
「ま、まずいよ、早くしないと!」
「後ちょっとなのに……」
あと一歩、あと一歩というところでなかなか捕まらないアオスジトンボ。これにはユラも焦りの声が広がる。伝う汗。もうちょっとだというところに手を伸ばすとアオスジトンボは網を目掛けて飛び始めた。
「……入った!」
ようやく捕まえられた事にやったと歓喜すると、網の持ち手が光り出しピッピー!と大きな笛が鳴り出す。
「し、試合終了!さて勝ったのはどのチームか!?……勝利した者はな、なんとユラ、ブライア、シルビィー選手達のチームだあああああ!!」
そうヤスチヨが叫び出すと観客席も大きく盛り上がりだす。またしても接戦となったチーム戦。とても有意義な時間になったとユラは1人笑い出す。
「……これでまた優勝に近づけた!」
次の種目はいかようか。などと考えているとユラが作った檻が見事に消えキラキラと光り出す。その光景はまるで勝利した事を称えているようで。ユラはどこか誇らしげな気持ちになった。




