第103話 華麗なる作戦会議
「さて!次の種目は昆虫採集!果たしてどのチームが勝利するのか!?」
再び席に戻ったヤスチヨがそう叫ぶと校庭にいたユラ達が何やらくじ引きのようなものを始めた。画面を見るとどうやらチームを分ける為のくじ引きらしい。
「……よし、皆のもの……チーム分けができたようだな!……今回採集するのはこのトンボになる!」
クロノス先生がそう言って出現させたのはトンボの絵が書かれた板だった。どうやら【アオスジトンボ】という名前で。魔法で描かれたそれはとても綺麗な青で塗られていた。
「今回はくじ引きで当たったそのチームで先にアオスジトンボを見つけ採集したものが勝利となる」
クロノス先生がそう話すとユラ達はくじ引きで当たったメンバー同士で固まり始める。
「えっと私のチームは……と」
「お、ようやく来たか」
「よ、よろしくねユラちゃん」
そこで待っていたのは先程のレースで接戦を行ってきたブライアとシルビィーの2人だった。2人はユラを見るや否や軽い挨拶をする。
「採集する時はこの網を使え……では始めるぞ……開始!」
クロノス先生が開始の合図を伝えると、生徒達は一斉に用意された網を取り森の中へと向かっていく。そしてユラ達も遅れを取る事なくその場から走り去っていった。
「さあ!今回は昆虫採集との事ですが、勝利者はどのチームになるのか!必見ですわね!」
「アオスジトンボかー……懐かしいなあ!ガキの頃取りに行った事を思いだすよ、ガハハ!」
ヤスチヨがそう言うとユラ達は走りながら森の中で何やら作戦会議を行う。聞いた事のないトンボの名前だが果たして本当にいるのだろうか。そう思ったユラだったが2人は真剣な眼差しで作戦をたてようとする。
「アオスジトンボってどういう虫なの?」
「……お前そんな事も知らないのか!」
アオスジトンボっていうのはこの学園外で稀に見るトンボなんだぜとブライアが説明すると、ユラはなるほどと納得し1人頷く。話によるとどうやらアオスジトンボは水辺にいる事が多いとの事。なので今は水辺である池のエリアに向かっているのだとブライアはユラに簡潔に話した。
「それでどうやって捕まえるつもりなの?」
「その事なんだがシルビィー!お前あの魔法使えるだろ?」
「あ、うん……使えるけど……」
「あの魔法って?」
私にも分かるように説明してとでもいうような態度で物申すと、ブライアはムッとした表情でこう話す。
「数ヶ月も共に過ごしたというのに……お前本当に何も知らないんだなあ」
「ごめんなさい……」
「いいか?あの魔法っていうのは……」
そう話してる途中で何かに気がついたブライアは、しーっと指先を口に当てユラの口を塞ぎ黙らせる。一体何事か。そう思ったユラがブライアを見つめ直すとブライアはシルビィーを指さしこう語る。
「今ちょうど交信中だ」
「交信中?」
「バカ!ああやって動物に話しかけてるんだよ!」
そう言いながら近くにいるシルビィーをそーっと見てみると、今まさに動物と話をしているシルビィーの姿があった。一体何を話しているのだろう。そう思いながら近くに寄るといつもの小声で動物と話すシルビィーの声が聞こえた。
「あのね、アオスジトンボを探してるのだけどどこにいるか分かる?」
シルビィーが短めに会話を済ませると、その中にいた鳥がチチチッと鳴きだしどこかへと飛び去っていく。それをきっかけに他の動物達ものそのそとどこかへ帰っていった。
「どうだったんだ?」
その姿にブライアが思わず問いかけるとシルビィーは小さく首を振る。そして何かと思えばこちらへと向かって歩いてきた。
「さっきの池のエリアにはいないみたい……」
「まじか……じゃあどこに行けばいいんだよ!」
シルビィーが言うにはおそらく先程のレースの騒ぎに驚いて逃げてしまったとの事。確かにあのレースの途中で多くの鳥や虫達が飛び去っていたように思える。そう聞いたユラ達は思わず困惑の表情を浮かべた。
「ここからどうしようか……」
「知らねえよ、多分それに勘づいた他のチームも同じ事思ってるはずだぜ?」
辺りに沈黙が流れる。それはそうだ。今まさに希望の道だと思ったものが完全に絶たれてしまったのだから。そのせいでユラ達は完璧に途方に暮れてしまっている。
「あーあ、どうすんだよこれから」
「……あっそうだ!シルビィーって魔法で動物達に話しかけられるんだよね?」
「うん、そうだけど……」
「だったら昆虫にも同じ魔法が使えるんじゃないかなあ?」
もしかしてという発想にユラが心を踊らせると、シルビィーは少々困ったような顔で下を見る。どうしたのだろう。ユラがそう思うとシルビィーはそんなユラの心中を察してポツリとこう呟いた。
「あ、あのね……できなくはないの」
「やっぱりそうなのね!」
「ただ……」
「ただ?」
「狙われそうになる……だろ?」
そう話すシルビィーを期待の目で見つめるとブライアが妙な事を言いだす。狙われるとはどういう事か。そうユラが思うとブライアは引き続き妙な視線で語り出した。
「変だと思わないか?俺達水辺の近くにいるのに足音1つ聞こえねえんだぜ?」
「それは他のチームも同じように作戦会議してるからじゃ……」
「俺も最初はそう思ってたんだが……途中から妙な魔力を感じやがる……1、2、3……4人もか?」
「……つまりどう言う事?」
「狙われてるんだよ!もう既に」
そう木々をジッと見るとそこには他のチームの視線がチラホラと映る。いつの間にいたのだろう。ユラがそんな事実に1人驚愕するとブライアはシルビィー対しこう話しかける。
「シルビィーよく聞け、今まさにお前が昆虫を呼ぶ魔法をかける事を待ち構えている連中が何人もいる!」
「そ、そうみたいですね」
「だからすぐには魔法をかけないでほしい」
「じゃあ私達はどうすれば……?」
するとブライアはこの状況に臆する事なくこう呟く。
「本格的な作戦会議といこうじゃないか!」
さすが三馬鹿トリオのリーダーといったところか。困惑する2人をまとめ一斉に指揮をあげる。これには頼もしいと感じたユラだったが果たしてそう上手くいくだろうか。そう思いつつ3人はコソコソと作戦会議を立てるのであった。




