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第77話 ごめんね
沈黙。皇は何も答えず、その手元がキラリと光る。あれは——
「ちょっと待ったーー!!」
巴の突然の大声に、皇がピクリとして動きを止める。
——あれは凶器だ。
「ね、警察行こ? 悪いのは白尾先生なんだから。
だから、おかしいでしょ? これじゃ皇くんが悪者になっちゃうよ……!」
ああ、口にするのさえ嫌な名前。——だけど。それでも。巴は皇を止めたかった。
重くなっていた皇の口が開く。
「——警察に行けば、先輩も事情を聞かれることになる」
そんなの……! なぜだか無性に悲しい。巴は目頭が熱くなる。
「そんなの、もうどうだっていい! 話すよ! 皇くんがこんなことするくらいなら、話す! 全部話すから……!」
皇に駆け寄り、背中に抱きつく。精いっぱいの力を、思いを込めて。
「だから、やめて……やめてよ……」
祈るように、痛切な声を絞り出した。
巴の必死の懇願は、しかし——
「——先輩、ごめんね」
しかし、皇には届かなかった。
巴は肩を突き飛ばされ、あっけなく路上に転がった。濡れた路面。遠い背中。諭すような穏やかな声。
「ここまで来たら、もう無理ですよ」
「だめええぇーーーー!!」
巴の絶叫が響く中、鮮烈に血飛沫が上がる。




