第69話 仇敵追跡
尾行は順調だった。白尾は高校から徒歩で駅へと向かっているようで、であれば跡をつけて誰の邪魔も入らない場所を目指す。
雨は小雨に毛が生えた程度。キャップを被り、顔さえ濡れなければ気にならない。白尾が教師である以上制服姿では目に留まりやすいだろうから、上着はすでに脱ぎ、駅で捨てた。
皇は怒りを原動力に動いている。巴を救いたい気持ちももちろんあるが、最も大きな感情は怒りだ。一番大切な人の心を抉り、謝罪も反省もしない悪漢への憤り。ただ、とても謝られたところで許せるレベルではないが。
駅構内や電車内にはそれなりに人がいたが、見失うほどではない。そしてある程度の距離さえ取っていれば、皇が気取られる恐れもなさそうだった。下車するタイミングで遅れをとるまいと、皇はちらちら白尾の様子を伺う。
もうその顔からして忌々しい。反吐が出そうだ。それでも皇は眼光鋭く、怨敵を視界に収める。逃がさないように。復讐のために。
呪い殺せそうなほどの憎しみを募らせ、怒りを内に秘めながら、皇は電車に揺られていた。
やがて下り列車は拝島駅へと到着した。白尾が降りるのを確認し、この近辺なら土地勘があると皇は思ったが、乗り換えのための下車だった。一度階段を昇り、改札階を経由して別のホームへと降りる。そしてまた電車に乗る。
(——まっすぐ家に帰るだろうか?)
ここに来て皇は白尾がどこかに寄る可能性に思い至った。
(——落ち着け。どこに寄ろうが同じことだ)
プランの本筋に影響はない。それは計画と呼ぶにはあまりに単純で稚拙なものだったが、複雑化させればいいというわけでもない。絶対に成功させなければならない。
先輩に平穏を。クソ野郎に鉄槌を。皇の意思は冷えたマグマのように固くなっていく。
——乗り換えてからすぐ次の駅。皇は白尾の後を追って電車から降りた。




