第68話 一ノ瀬花音の閃き
一ノ瀬花音は思案していた。
ビニール傘を差し、同じ弓道部の友達数人と駅までの道を歩いている。
令和高の弓道場は仮設のような造りのため、雨が降ると活動は基本中止となる。みんなで引き揚げる際、渡り廊下の辺りに立っていた1人の男子。どうも見覚えのある顔だった。でも、どこで……。
(向こうも私を知らない感じだったし)
だとすると自分が一方的に知っていたことになる。
(うーん、勘違いってことはないと思うんだけどなー)
この思い出せそうで思い出せない最高にモヤる感じ、最悪の気分なんだけど……。友人との会話もなおざりにイライラし始めた花音だったが、その気を逸らすかのように少し先の踏切から警報音が鳴り響いた。
カンカンカン——。けたたましい音に促され、どこか遠慮がちに遮断機が降りる。
雨の中、花音は足を止めた。
雨だとちょっとの待ち時間でも憂鬱だよね〜、まあ雨じゃなくてもだけど〜、なんて友人たちが話す隣で、花音はバッグからスマホを取り出し内側カメラで前髪を確認する。やはりこの天気では若干終わってしまっていた。気が滅入ることが続くが、今日はもう帰るだけだし……! と気合いを入れ直した。
スマホをしまおうとした時、ピコンと聞き慣れた通知音が鳴った。佳凛からだった。送られてきたのは写真1枚だけ。無言のメッセージだ。
「これは……!」
目の前を電車が通過し、肩までの髪が揺れる。遮断機が鷹揚に上がっていく。
写真は先日のヘアサロンでおすすめされたヘアオイルだった。店頭に並んでいるのを撮ったもので、つまりどこかの店で発見したというお知らせに違いない。でかしたカリン様! 花音は杖を持った白い猫のスタンプを返信しようとしたが、そこで無情にもタイムアップ。
「花音! いくよー!」
友人たちに急かされ、スマホをしまって早歩きで踏切を越える。
「もう花音。迷子になるじゃん」
「手つないでてあげよっか?」
へー、ありがたい申し出だけど……。花音はスゥと息を吸い、声を大にして言った。
「私はあんたらよりお姉さんです!!」
「うわ出た。4月生まれアピール」
「よしよし、もうお姉さんだもんねー」
呆れられたり宥められたりしながら、花音は駅に到着。友人ズは徒歩圏だったり乗る電車が反対方向だったりするので別れ、1人で電車を待つ。佳凛に返信しておくかとスマホを取り出し、そのトーク画面を開く直前、花音はある天啓を得た。
「————」
ツツ……と画面をスライドし、佳凛や巴たち5人が入るグループトークを開く。
ヘアサロンのために何度も新宿まで行くのはアリかナシか委員会が開催される少し前まで履歴を遡っていく。
(こ、これだ——!)
そこには、4人からの圧に屈して巴が提出した彼氏(仮)の写真があった。




