第67話 殺人の待ち時間②
——さて。午後4時を迎えた。もうずいぶん長いこと待っている。このままでは文字通り日が暮れてしまう。日を改めるか……?
(——いや、ダメだ)
一瞬脳裏によぎった考えを皇は振り払う。悠長な真似はしたくない。最短で決着を付けるのが望ましい。
(——先輩)
彼女の写真や動画のデータを白尾は持っている。取り返しのつかなくなる前に。
(白尾。奴は先輩に——思い出すことさえ苦痛で、思い出したくもないことをした)
泣かせ、殴り、心に傷を負わせた。果たして癒える時が来るのかどうかすら分からない、深い傷を。
この先、その傷に巴はずっと苦しめられるかもしれない。皇にはそれが耐えられない。薬をあげることもできないし、そもそも心の傷に付ける薬など存在しない。
(それなのに、なんてことをしてくれたんだ……!)
——だから、せめて。
(せめて、先輩の心の平穏は取り戻す)
白尾に怯えなくて済むように。また笑って過ごせる日が来るように。
でもそれは、巴のためではなく皇自身のために。
皇がそうしたいから。
(——白尾には、罪を償ってもらう)
雨は止まず、かといって強まりもせず、精密機械のような正確な速度でアスファルトを叩き続ける。
午後5時を待たず、雨音に紛れ、数時間ぶりに正面玄関の扉が開いた。出てきたのは丸メガネをかけた20〜30代の女性。教師だろう。黒いリュックを背負い、傘を差し、校門へと歩いていく。帰宅するようだ。
——いよいよだ。帰る教師もいる時間になったということだろう。少しの間を置いて、1人、2人と推定教師が帰っていく。皇は無意識に息を潜めていた。
——そうして4人目。ついに、その刻が訪れた。
白尾爽悟が、姿を見せた。




