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第65話 汚れつちまつた悲しみに

 帰宅した巴はリビングから廊下に出てきた母親と早速顔を合わせることになった。

「巴ちゃん。こんな夜遅くまで、ダメじゃん」

 地味にプリプリしている。何も言わずに散歩に行ったのに、寝ないで待っていてくれたらしい。心配をかけてしまった——そういう反省と同時に、自分を心配してくれる人がいることへの感謝の気持ちも生まれる。

(ああ、だめだ。お母さんの顔を見たら——)

 安心感がどっと押し寄せ、少しふらついてしまった。

「おっとと。大丈夫?」

 抱き止められる体勢になり、そのまま抱きつく。

「——大丈夫」大丈夫じゃないけど。

「大丈夫じゃなさそう」母の目は誤魔化せなかった。

 巴の目からは涙が零れ始めていた。

「失恋——じゃないわよね。こんな可愛い巴ちゃんの恋が実らないなんて、橋本環奈ちゃんがフラれるくらいありえないもんね」

「…………」

「突っ込む元気もないか。

 あのさ、巴ちゃん。無理にとは言わないけど、お母さんに言えることなら言ってよ?

 ——言えるようになったら、でもいいけど」

「…………うん」

 本音を言ってしまえば。

 もう、洗いざらい全部吐き出してしまいたかった。優しさに溺れてしまいたかった。


 ——ああ、でも。だけど。あなたの娘は襲われて、恥ずかしい写真を取られてしまいました——なんて。そんな残酷なこと、言えるわけない。

「お母さん……ごめん。

 ——ありがと」


 巴には、言えるわけがなかった。

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