第53話 勝者退場
ガタガタッとリプレイのように再度、白尾が倒れ伏す。今度は椅子にもたれかかる形となった。当たりどころが悪ければ死んでしまう可能性もなくはなかったが、それでもいいと皇は思った。
巴はそれだけが心配だった。皇に殺人の業を背負わせたくはない。それも自分のために、こんな形で。足首に絡まる下着を履くのも忘れ、様子を見守る。
「————っぐ」
白尾が呻く。どうやら息の根は止まっていないようだった。
「いってえなあ、お前、顔を2回も殴るなよ。それで死ぬ奴もいるんだから」
そう言って白尾は頬を押さえた。
「先輩に謝れ」上から放たれた皇の言葉に、
「ああ?」白尾は眉間に皺を寄せる。
ペッと白尾が床に唾を吐くと、そこには血が混じっていた。
「まったく、立場が分かっていないのか。——いいか? 画像も、映像もデータがある。三船の顔も。性器も映っている。
——この意味が分かるだろう?」
淡々とした、それでいてどこか愉快そうにも聞こえる口調。
白尾は立ち上がり、服の乱れを直す。
「しかも自動でバックアップもとれている。つまり、もうこの場ではどうしようもない。
——分かってもらえたかな? 君たちの負けだ。金輪際、俺に逆らわない方がいい」
それだけ言うと、近くの床に置いてあった鞄を手に取り、悠然と歩き出す。
呆気にとられる皇。その横を通り過ぎ、巴のことも一顧だにせず出口へと向かう。
「ああ、そうだ」
ドアに手をかけたところで白尾は振り返り、ついでだとばかりに皇に呼びかけた。
「俺を殴ったことも不問にしてあげよう。君も進学したいだろう?
——なかなかの写真が撮れたからね。恩赦だよ」
白尾は機嫌よく白い歯を見せて、ドアの向こうへ消えた。




