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第34話 非リア様がみてる

「いやいや、ダメだー! 正気か? こんなとこでぇ!? くそ、畜生、クソガキが! その汚い手を離せえええええ!!」

「うるさいなあ。静かにしてくださいよ」

「これが黙っていられるか! なんでやー! なんで俺には天使が舞い降りて来ないんやー!」

 神社からほど近い、広大な面積を有する市有地。市民の森と名が付けられているその一角で、坊主頭がタブレット型端末のモニタをバシバシ叩きながら盛り上がっている。年の頃は二十代半ばといったところで、名を九島昭。皇とは数年来の付き合いであり、初見では売れないお笑い芸人との印象を抱いたものだった。実際のところは怪しげな——といったら失礼だが、探偵業を営む会社で助手のようなことをしている。

「ハァ……。さっきの暴行シーンはビビりながら見てたのに。怒るポイントが違うんだよなあ」

 ため息混じりに皇が漏らす。

「九島さん。もう行きましょう」

 嗜めるような、呆れたような皇の視線を感じ、しかし九島は唯々諾々とはいかなかった。

「おいおい小僧。あの野郎を止めなくていいのかよ?」

「いやもう今行っても……。どうしても止めるんならさっきですよね。まあこれがレイプとかなら別ですけど」

「れ、お前……! そういう言葉を小僧が軽々しく使うんじゃねえ!」

「じゃあなんて言えばいいんですか。強姦?」

「ご……」

 言葉を失う九島を尻目に皇は指示を出す。

「九島さん。さっさとドローンを引き上げてください。撤収!」

「わーったよ。クライアント様には従わないとな!」

 九島はタッチパネルを操作して、カメラや静音器が付けられたドローンを上空から呼び戻す。

「通報とかは? しなくていいのか?」

「警察からしたら子供のケンカ。注意されて終わりですよ」

 とはいえ、だ。監視を始めてから1日足らず。思いの外、早々に収穫が得られた。皇はドローンが撮影した映像を早送りで再生しながら思う。八神香の暴行の現場を押さえたのだ。リアルタイムでも見ていたが、録画のほうも問題なくできている。多少鮮明さには欠けるが、十分だろう。

(先輩……)

 皇は彼女の涙に想いを馳せる。

(あの涙は、やっぱり——)

 友達のことが心配だったから? 確信は持てないが、そう的外れでもないはず。でも、そうだとしたら、この事実は——。

(どうなんだ?)

 五木碧。暴行には直接加担していないようだったが、加害者側として現場にいた——それが皇の見解だ。残念ながら距離の都合で音声までは拾えなかったので、機微は少なからずあるだろう。だから彼女の関与の度合いは一概に断定できるものではない。だが、確実に無関係でないことは証明されてしまった。


 さて。この事実をどうやって巴に伝えるか——。

 ありのまますべてを話すのには抵抗がある。録画した映像も見せないで済むのならそのほうがいい。かといって、嘘をつくのも憚られる。

(下手な誤魔化しは先輩への裏切り行為だ。僕は任せてくださいと言ったんだ。だから——)

 あの時の巴の表情を皇は忘れない。一人で抱えていたものを共有できて安心したような。それに後ろめたさを感じているような。そして、行動を起こそうとする皇を心配しているような——。

 そして思い出す。八神を尾行すると電話で伝えた時も、巴の声は心配そうだった。

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