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帰る場所――忘れたはずの彼が、気になってしまう。 ―琥珀の瞳が、嘘をつくー ミア×キース編  作者: HANABI


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番外②:あの日の髪飾り(2年・初夏)

キース、ミアにプレゼントを送る

初夏の風が、街の通りをやわらかく抜けていく。

学園の門を出た先、小さな石畳の道には、色とりどりの店が並んでいた。


「ねえねえ!これ。見て?かわいいくない?」


ミアの声が弾む。

店先に並べられた小物を前に、目をきらきらさせていた。


「それ、さっきも言ってた」


少し後ろを歩きながら、キースがぼそっと言う。


「だって全部かわいいんだもん」


振り返って、悪びれもなく笑う。


「選べないなら全部やめとけ」


「えー、ひどくない?」

 

軽く頬を膨らませるミア。

その少し拗ねたような表情に、キースはわずかに口元を緩めた。


(ほんとに、よく動くな……)


でも、視線は自然と追ってしまう。

風に揺れる明るい髪。ころころ変わる表情。


急にミアが立ち止まる。小さな装飾品の店だった。


「これ可愛くない?」


手に取ったのは、淡い黄色の髪飾りだった。

小さな花を模した細工が、光に当たってやわらかく輝く。


ミアはそれを指先に乗せたまま、しばらく眺めていた。


「……好きそうだな」


隣から、ぽつりと声が落ちる。


「え?」


振り向くと、キースが髪飾りを見ていた。


「そういう色、よく見てるだろ」


「……見てたの?」


「たまたま」


目を逸らしながら言う。

でも、その言い方は少しhぶっきらぼうだった。


ミアは少しだけ瞬きをして、それから髪飾りを見下ろす。


「……うん。好き」

 

ほんの少しだけ声が柔らかくなる。

値札を見て、少しだけ迷うように視線を落とす。


「でも、どうしよっかな……」 


その小さな“ためらい”を見て、キースは視線を逸らした。


見ていないふりをするには、少し遅かった。

ミアがその髪飾りを気に入っていることくらい、もう分かってしまっている。


キースは何も言わず、店員に声をかけた。


「これ、もらう」


「え、ちょっと――」


「いいから」


短く言って、財布を出す。


「……欲しかったんだろ」


ぽつりと付け足すと、ミアの動きが止まった。


「……見てたの?」


「まあな」


それ以上は言わない。

すぐに支払いを済ませて、箱を差し出す。


「ほら」


「……ありがと」


箱を受け取りながら、少しだけ目を逸らす。


「……つけないのか」


「今?」


「今」


短い言葉。

でも、急かしているというより、見たいだけなのが分かる声だった。


ミアはそっと髪に飾りをつける。


「……どう?」


振り返ると、キースは一瞬だけ言葉を止めた。


淡い黄色の髪飾りが、初夏の光を受けて揺れている。

いつも明るく動いているミアの表情が、その瞬間だけ少しだけ照れたように柔らかく見えた。


「……似合ってる」


ちゃんと見て、そう言った。

その一言で、ミアの顔が一気に熱くなる。


「……ありがと」


さっきよりも、少しだけ小さな声。

風が吹く。髪が揺れて、飾りがきらりと光った。


(……なんだろ)


胸の奥が、少しざわつく。

楽しい、だけじゃない。嬉しい、だけでもない。


でも、嫌じゃない。


(これ……なに?)


まだ名前のつかない感情が、確かにそこにあった。

キースは何も言わず、歩き出す。


「ほら、帰るぞ」


「あ、うん!」


ミアは慌ててその背中を追いかける。

風に揺れる髪飾りが、耳元で小さく光る。


少しだけ、距離が近くなった気がした。


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