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第二章 五:デート オア キャンセル②

 灯台の屋根に乗っかり四つん這いのまま、海神の槍(ポセイドンのやり)をもった手を上にあげた。すると、槍のまわりにビュウビュウと風が集まってきた。


 あげた手を後ろに引く。そして、イカリのゲソキングに狙いを定める。風は追い風、このままの勢いでいってくれよ。


「うおおおおお!」


 渾身の力を込めて海神の槍(ポセイドンのやり)を放った。槍は風を纏いながらとてつもない速度でイカリのゲソキングに向かっていく。ゲソキングは槍に気づき、つばめを離すと全触手を使って防御をしようとした。


 つばめは勢いよく離されたということもあって、運良く岬の植物の上に落ちた。ダメージは負ってそうだが、デス判定にはなっていなさそうだ。


  イカリのゲソキングがつばめを離してからすぐ、海神の槍はゲソキングの触手に当たった。


「ブオオオオオオ」


 海神の槍(ポセイドンのやり)がイカリのゲソキングの触手を貫く。触手を貫いても槍の勢いは止まることなく、やつの体めがけてさらに突き進む。


 そしてとうとうゲソキングの体を貫いた。体に大きな風穴の空いたイカリのゲソキングは、もはや叫び声すらもだすことなく光の粒子となって消滅した。



【通知】

Dランククエスト「一回きり初心者応援クエスト」クリア


報酬を手に入れました

経験値玉

ルーシーの指輪

20,000G


レベルアップ:Lv2→Lv4

ーENDー



 倒せたという喜びも束の間、海神の槍(ポセイドンのやり)は方向をくるりと変え、そのままの勢いで俺の方に向かい始めた。


「ちょ……! このままじゃやばい!」


 しかし、そんな声をあげたところで海神の槍(ポセイドンのやり)は止まってくれない。槍はもうすぐそこまで飛んできている。俺は思わず目を瞑った。


「うわあああああ……ああ……あ?」


 あれ?

 もう当たっていてもおかしくないはず。


 恐るおそる目を開ける。そこには目の前でピタリと止まって宙に浮いている海神の槍(ポセイドンのやり)の姿があった。そしてしばらくすると槍は下に落ち、屋根を転がり灯台の下まで落ちていった。


 投げた後は持ち主の元に戻ってくる便利システム搭載というわけですか。まったくびびらせやがって。ただ屋根を転がっていってしまったため、アイテムロストが危ぶまれる。


「くっ。急いで回収しないと」


 俺は爆速で灯台を駆け降りた。頼むからそこにあってくれよと願いながら灯台を出ると、すぐそこに海神の槍(ポセイドンのやり)は転がっていた。よかった、こんな強い武器手放してたまるか。


 こうして無事回収を終えたところで、俺はつばめの元へ向かった。彼女はいまだに岬の地べたにへたり込んでいた。


「大丈夫?」

「うん……なんとか」


 こういうときの距離感が分からない。

 でも、ここで手を差し伸べないのは男としてみっともないよな?


「ほら捕まって」


 へたり込むつばめに手を差し伸べてみた。


「ありがとう」


 つばめは俺の手を握って立ち上がった。


「いやー、死んだかと思った」

「まじで危なかったな」

「ねえ、あの槍。なんなの? さすがにおかしくない?」

「まあ、その、灯台の先っぽが槍っぽいなと思って。試してみたらやっぱり槍だった」

「そんなわけあるかい! 誰も気づくわけないじゃん。絶対におかしいって」

「そうだ! さっきの槍をプレゼントするから深い詮索はやめてくれると助かる」

「本当!? いいの!? 楽しみ!」


 俺とつばめはユーザー間でのアイテムトレード機能を利用して、つばめの所有している適当なアイテムと海神の槍(ポセイドンのやり)を交換しようとした。


 しかし、交換はできなかった。



【アイテムトレード】

ハントしたアイテムは交換できません

ーENDー



「なんか交換できないみたい」

「そうなのー」


 万事休すか。

 これ以上、誤魔化すのも難しいのかもしれない。


「ま、いいよ。その槍はいらないし、ゴールドを余分にもらうっていう話もなしで」

「え?」

「誰だって深追いされたくない事情もあるんじゃない?」


 つばめは自分の顔の前で人差し指を立てて「しーっ」と内緒のポーズをしてみせた。その可愛らしい仕草にドキリとしてしまった自分がいるのもまた事実。


「あー、怖かったけど楽しかった。久々にドキドキできたって感じ」


 つばめはとても楽しそうだった。


「このことは内緒にしておくからさ、また一緒に遊んでくれる?」

「……! もちろん」

「じゃあフレンド登録しよ」


 つばめとフレンド登録を行った。フレンドになっておけば、そのフレンドとだけできるダイレクトチャットやログイン状態の可視化など、フレンドと一緒にゲームをしやすい環境が整う。


 どうなることかと思ったけど、まさかこんな良い形におさまるとは。つばめのことを誤解していたというか、クラスメイトだから全員が俺のことを嫌っているというのは少し被害妄想が過ぎたのかもしれない。


 ひと段落がついたところで現実世界の時刻を確認すると、19時近くになっていた。


「じゃあ私は今日はそろそろログアウトするよ。ばいばい」


 つばめはそう言ってログアウトをしていった。


 そうだよな、一般的な家庭ならこれくらいが夜ご飯の時間か。俺の家は……って、それは仕方ないことじゃないか。とりあえず武器を確認しよう。



【海神の槍(ポセイドンのやり)】

ATK(攻撃力)+400

DEX(防御力)+200

AGI(敏捷)+100


アイテム効果

海神の加護:無制限の水中呼吸

荒波の覇気:クリティカル率+50%

特技「海風の咆哮」が使えるようになる


メモ

かつて恐れられた海神の残した槍

灯台の頂上で海を見守り続けてきた

ーENDー



 おお、これは強い。ステータスの上昇値もさることながら、どれだけ水中に潜っていても大丈夫というのが今後の活躍に期待できる。しかもクリティカル率50%って、要は半分の確率でクリティカルが出るってことだろ。


 純粋なATK(攻撃力)は無限刀の方が強いけど、こっちは水中に入った時にかなり使えそうな武器だ。こんなの俺にとっては初心者応援どころか初心者接待クエストじゃないか。


 それにしても、インフィニティワールド内にはどれだけ隠し要素が潜んでいるのだろう。クエストを受けずに色々と探索しながら冒険してみるのもよさそうだな。

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