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第二章 二:初心者狩りにはご注意を②

 洞窟内に入ると、ゆめめが魔法で洞窟内を明るく照らしてくれた。彼女の職業(クラス)は魔法使いということで、主に回復やバフなど補助的な役割をしてくれるという。


 ライムの職業(クラス)は戦士で、近接攻撃が得意なアタッカー。ソーマ@東京の職業(クラス)はアーチャーで、遠距離攻撃と補助魔法が使える。俺の職業(クラス)は、もちろん教えていない。


 なかなかバランスの良いチームだ。俺もこんな感じで誰かと一緒にチームを組んでインフィニティワールドライフを謳歌してみたいものだ。


「あ! いました!」


 洞窟を少し進んだところで、そっさく今回のクエストボスであるブルボアと遭遇した。


 背丈が人間と同じくらいの巨大なイノシシだ。太く丈夫そうで鋭利な牙がたくましい。なるほど、これが白い牙ね。


 ブルボアに向かってさっそく無限刀(むげんとう)を構えた。だが、ブルボアは俺の予想よりもはるかに速く、こちらに向かって突進をしてきた。


 このままでは斬る前にやられてしまう。そう思った矢先、ブルボアは急に立ち止まるとあくびをしてそのまま眠ってしまった。


 ゆめめが魔法で眠らせてくれたのだ。


「ありがとう。たすか……っ!?」


 そのとき、ソーマ@東京の放った矢が俺の胸を貫いていた。


 痛く……ない?


 さすがに痛みまでは再現されてはいないようだ。しかし、すぐに体が痺れる感覚を覚え、さらに脱力感に襲われて地面に膝をついてしまった。


「悪りいな初心者さん。お前に恨みはないがいいカモにさせてもらったよ」


 ライムが俺を見下ろしている。


「初心者でもプレイヤーキルはそれなりにうまみがあるんだわ」


 ライムはそう言うと、さらに「くっくっくっ」と悪どく笑った。


 やられた。これが俗に言う初心者借りというやつか。いくら強い武器があっても、根本的に弱ければこんなにもあっさりとやられてしまう。


「まあお前には教えてやらねーけどな。これに懲りたらもう、一生ログインしないこった!」


 顔を上げてライムの顔を確認すると、彼は敵キャラなのかと思うほどの邪悪な笑みを浮かべていた。だが、やつは気づいていない。とっくに俺の痺れや脱力感が消え去っていることに。


 目の前にある通知ウインドウにはこう書いてあった。



【通知】

モータム高級野菜ジュースの効果が発動しました

攻撃を無効化します

麻痺無効

毒無効

HP全回復

ーENDー



 つまり今の俺は完全に回復しきっているってことなんだよ。


「残念だが……俺は平気だぞ?」


 ライムが至近距離にいたので、地べたに膝をついたまま無限刀で斬りつけてやった。感触は、まあそのなんというか……包丁で大根を切ったときのようなザクリとした感じだ。


「なっ……!」


 ライムの顔は邪悪な笑みから情けない驚きの表情へと変わり、空いた口が塞がらないとはよくいったもので、口を開けたまま映像が乱れるようなエフェクトとともに消えていった。



【通知】

初プレイヤーキル達成

称号「悪魔の笑み」を獲得

アイテム「プレイヤーコア」を獲得

ーENDー



「ひっ……!」


 ゆめめが悲鳴を上げた。

 ソーマ@東京は弓をおろし、愕然として震えていた。


「ゲーム内で死ぬとどうなる?」

「え……?」

「だから、ゲーム内で死ぬとどうなる?」

「ひっ……! ゴールドを10%失って、24時間ログインができなくなります!」


 さすがにキャラロストはしないか。そこはひとまず安心材料だが、ゴールドを失うというのがけっこうな痛手でもある。やられてもいいからと、闇雲に色々試すのはやめておこう。


「もう二度としませんから! ごめんなさいいいいいいいい!」


 ゆめめは捨て台詞を吐きながら、目にも止まらぬ速さで逃げていった。ブルボアは隣で眠ってるし、いま対処すべきはソーマ@東京だけか。


「さて」


 ソーマ@東京に無限刀を突きつけてやった。


「助けてください!」

「いままでもこうやって初心者狩りをしてたんだろう?」

「それは……!」

「なら今からそいつらを全員助けてこい」

「そんなことできるわけないじゃないですかあ」

「なら二度とログインしないでくれ」


 ソーマ@東京もライムと同じく無限刀で斬りつけると、強制的にログアウトしていった。いざ自分たちがやられるとならばあっけない。


 さて、ひとまずクエストを終わらせるか。今度は近くで眠るブルボアを無限刀で斬りつた。するとやはり一発で倒すことができた。おまけにレベルアップもしたようだ。


 というか、どれだけ強いんだよこの武器は。

 ん? もしかしてステータスで確認できるのでは?

 

 レベルアップしたということもあり、俺は確認のためステータスウインドウを開いた。



【ステータス】

名前:ハル

LV:2

HP:30

MP:12


ATK(攻撃力):8+999

DEF(防御力):6

VIT(知力):10

INT(耐久力):6

DEX(器用さ):9

AGI(敏捷):6

LUK(運):1


職業:エッグハンター(1)

エッグハンターは、たまごが大好き


アイテム効果

無限の闘志:ATKダウン効果を無効化する

ーENDー



 プラス999!?

 さすがに強すぎないですか!?


 いや、他の武器がどの程度の強さなのかは分からないけど、プラス999はどう考えても異常値ではないだろうか。あとでしょぼい武器でも買って比べてみよう。


「あ、そうだ!」


 今度はアイテムウインドウを開く。



【アイテムBOX】

無限刀(1)【装備】

モータム高級野菜ジュースの空き瓶(1)

プレイヤーコア(1)

スライムゼリー(3)

ーENDー



 モータム高級野菜ジュースについて確認をしなければ。

 ウインドウをタッチしてさらにアイテム詳細を開く。



【モータム高級野菜ジュースの空き瓶】

モータム高級野菜ジュースの入っていた空き瓶

24時間に一回、モータム農場でモータム高級野菜ジュースを補充できる


メモ

モータム高級野菜ジュースの効果

使用後、次に受けるいかなる攻撃も無効化する

ーENDー



 使用制限こそあれど、めちゃくちゃ強いじゃないか。いかなる攻撃もってことは、つまり一発だけなら無敵になれるということだろう。ボスの直前とかに飲んでおけばかなり有効活用できそうだ。


 さて、そろそろモータム農場に戻って報酬をもらいにいきますか。おっと、あいつらに報酬がいくのは気に食わないからパーティは解除させてもらいます。


 こうして俺はモータム農場に再び向かった。


 Dランククエストの報酬は、モータム野菜ジュースが二つ手に入るだけだった。効果はモータム高級野菜ジュースには到底及ばない、ただのHP全回復アイテムだ。


 初心者狩りにもはめられるし、運がいいんだか悪いんだか分からないな。そもそもエッグハンターでなければ無限刀もモータム野菜高級ジュースも手に入ってないんだ。やっぱり運が悪いような気がしてきた。


 レベルが上がってもLUKだけは上がらなかったし、これは早急に手を打つ必要があるのかもしれない。


***


 モータム農場を去った俺は、メインクエストを進めるべくクエストカウンターに戻り、状況を確認しようとしていた。


 しかし、予期せぬ出来事が起こった。


 クエストボードを開いた時、メインクエスト「最初の一歩」完了の通知は来たのだが、メインクエストはそれ以上進まずに消えてしまった。


 いや、正確に言えばメインクエストは消えてはいない。


 俺のクエストウインドウには、初ログインの時に追加された「真の無限世界」というメインクエストだけが表示されている。


 これはつまり……。

 このメインクエストを進めろということなのか?

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