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白銀の足跡 ~少女の旅路~ 愛おしい冒険者生活  作者: 火年
第一章 リヴェルからエルフの街へ
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第5話 初めての依頼(前編)

第三話(前編) 

翌朝。


エリナたち三人は、リヴェルの街の門の前に立っていた。

昨日までは街の中を歩き回っていただけだった。


けれど今日は違う。

初めて、冒険者として街の外へ出る。


「これが地図ね」

エリナはギルドでもらった紙を広げた。

街の周囲と森までの道。

そして今回交換する五か所の木札の場所が、簡単な印で書かれている。


「最初の一枚は街道沿いみたい」

「残りは森だな」

シアルが地図を覗き込む。


テイルはすでに門の向こうを見ていた。

「じゃあ行こうぜ」

「ちょっと待って。まだ確認してるんだから」


「道一本だろ?」

「そういう油断が危ないんじゃない?」

エリナが言うと、シアルがうなずいた。

「地図くらい見といた方がいい」


「二対一か」

「多数決じゃないからね」


大きな門をくぐる。

外へ出ると、リヴェルの街の中とは空気まで違って感じた。


広い街道。

その両側には草原が広がり、遠くには森が見える。


荷馬車がゆっくりと道を進み、時折すれ違う旅人が三人を追い越していく。


「なんか、やっと冒険者になれた」

エリナがつぶやく。

「登録結構前じゃなかったっけ?」

テイルが言う。

「登録はね。でも、私にとっては今日が冒険者初日かな」


背中の新しい矢筒が歩くたびに少し揺れる。

昨日まで三本しか入っていなかった矢も、今日は二十本。

腰には短剣。

荷物の中には水筒も火打ち石も保存食もある。

お金は減った。

かなり減った。


その代わり、昨日よりはずっと冒険者らしくなった気がした。


最初の木札は、街道脇に立つ一本の木に掛けられていた。

「あった」

エリナが指をさす。

古い木札を外し、ギルドから預かった新しい札へ交換する。


「一個終わり」

「あと四つ」

「意外と簡単だな」

テイルが言う。


「だから簡単な依頼なんでしょ」

「このまま何もなかったら夕方前には終わるな」

シアルが地図を見る。


次からは森の中だった。

街道を外れ、三人は森へ入った。

木々の間から朝の光が差し込んでいる。


鳥の声。

風で揺れる葉。

村の近くにあった森とそれほど変わらない。

そう思うと、エリナの緊張が少しだけ薄れた。


「あ」

エリナが足を止める。

「今度は何?」

テイルが聞く。


エリナは道の脇へしゃがみ込んだ。

「薬草!」

「木札じゃなくて?」

「薬草!」

エリナは葉を一枚つまんで確かめる。

ギルドで五日間、散々見せられたものと同じだった。


「これ、仕分けしたやつだ」

「取るの?」

「もちろん」

「良く見つけたな」

「見つけたら小遣いになるって教えてもらったから意識してた」


持ってきた小袋へ丁寧に入れる。

以前なら、ただの草にしか見えなかった。

それが今は少しだけ違って見える。

五日間の雑用も無駄ではなかったらしい。


「あ、エリンキノコだ!」

「周辺調査だけど採取しに来た感じになってない?」

「昨日いくら使ったと思ってるの?」

「それなりだろ」

「ぎりぎりまで使ったの」

「財布軽そうだったもんな」

エリナは立ち上がった。


「次行こう。薬草か食べられるキノコ見つけたら教えてね」

「俺、分かんないけど」

「今度、薬草仕分けの依頼一緒にやろうよ」

「えー、一人分かれば十分でしょ」

「まぁそうかもしれない」

しばらく森を歩く。


二枚目の札も無事に見つかった。

さらに奥へ進もうとしたときだった。

茂みの向こうで、何かが動いた。

エリナは反射的に足を止める。

「待って」

二人も止まった。


草の隙間。

茶色い耳が見える。

「ウサギ」

エリナは小さな声で言った。

「どこ?」

テイルが覗き込もうとする。

「動かないで」


さっきまでの軽い声とは違い、エリナは静かに弓を外した。

矢を一本抜く。

弦にかける。

ウサギはまだこちらに気づいていない。

距離は遠くない。

村にいた頃なら、何度も撃った距離だった。

エリナは息を整える。


ウサギの耳の動き。

風の強さ。

草の揺れ。


嫌というほど体に叩き込んできた感覚が、自然と標的を捉えていた。

短い音とともに、矢が飛んだ。

茂みが一度だけ大きく揺れ、そのまま静かになる。


「……当たった?」

テイルが聞く。

「当たったよ」

エリナは普通に答えた。

茂みへ近づく。

矢はきれいに急所を射抜いていた。


「ほんとに当たってる」

テイルが目を丸くする。

シアルもウサギと、エリナの弓を交互に見た。


「この距離で?」

「練習したからね」

「結構遠いよね」

「この距離ならいけるかな」

二人が黙る。


「なに?」

「昨日の話、本当だったんだな」

テイルが言った。


「だから言ったでしょ!」

「ちょっと盛ってると思ってた」


「一年前から外してないって言ったよね?」

「一年間狩に行ってない可能性もあると思ってた」

「失礼だなあ」

エリナは矢を抜きながら少し頬を膨らませた。


でも。


二人が本気で驚いているのを見ると、悪い気はしなかった。

三枚目の木札を交換したところで、ちょうど昼になった。

少し開けた場所を見つけ、三人は休憩することにした。


「さて」

エリナは荷物を下ろした。

「ついに来たね」

「何が?」

テイルが聞く。


エリナは保存食の袋を取り出す。

「ササクレキノコ」

「ああ」


テイルが思い出したように言った。


「顎が強くなるキノコね」

「違う!」

「肉を柔らかくするやつだろ」


シアルが火を起こす準備をしながら言う。

「そう、それ」


エリナは鍋に水を入れる。

火に掛け、硬い干し肉を小さく切る。

そこへ細かくしたササクレキノコ。

しばらく煮込む。

湯気と一緒に、肉の匂いが広がっていく。


テイルが鍋を覗き込んだ。

「普通にうまそう」

「でしょ?」

「今なら硬くても食えそうではある」

「普通にかなり柔らかいから」


肉を木の匙で押してみる。

昨日店で見たときとは違う。

簡単にほぐれた。


エリナは満足して、三人分を器へよそう。

「はい」

テイルが肉を一口食べる。

数回噛んで。

止まった。

「……うまっ」

「でしょ?」


今度はシアル。

肉を噛んで、少し目を見開く。

「本当に柔らかいな」

「ね?」

エリナは思わず胸を張った。


昨日まで散々疑われた。

ここは言っていい。

むしろ言わなければならない。

「キノコ代は二人持ちね!」


テイルが匙を持ったままエリナを見る。

「そこ覚えてたのかよ」

「もちろん」

「そういうのは絶対忘れないタイプ?」

「そういうのって何?」


テイルはもう一口食べてから、諦めたように息を吐いた。

「……これは負けた」

「やった」

「キノコ代は払うしかないな」

シアルが言う。


エリナは笑いながら、自分のスープを口に運んだ。

柔らかくなった肉。

パンもスープに浸すと柔らかくなる。

少しだけ独特な香りのするササクレキノコ。

いつもの味だった。


でも。


森の中で。

昨日知り合ったばかりの二人と食べると、少しだけ違って感じる。


初めての依頼は、まだ終わっていない。

残っている木札は二枚。

それでも今のところは順調だった。


エリナは空になりかけた器を見て、少しだけ笑った。


森の中で、二人と笑いながら食べるお昼ご飯。

こういうのを、ずっとやってみたかったのかもしれない。


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― 新着の感想 ―
ウサギの血抜き描写が無い。初心者だから?
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