第25話 オルミア到着!――報酬はもうちょいほしかったけど、経験を積めたのでオッケーです
昼を少し過ぎた頃。
街道の先に、大きな壁が見えてきた。
最初に気づいたのはテイルだった。
「見えてきたぞ」
エリナも顔を上げる。
遠くに見える壁。
その向こうには、屋根がいくつも並んでいる。
近づくほど、その大きさが分かってきた。
「……でかい」
思わず口から出た。
リヴェルも、クレシマ村から出てきたエリナには十分大きな街だった。
けれど。
オルミアは、それより明らかに大きい。
壁も高い。
門へ向かう人も多い。
荷馬車も一台や二台ではない。
商人らしい人。
旅人。
冒険者。
いくつもの荷馬車が順番を待っている。
「リヴェルより全然でかいね」
「だから中都市なんだろ」
シアルが言う。
「もっと大きい街もあるんだよな?」
テイルが聞く。
ハインが御者台から答えた。
「あるぞ。オルミアでも十分大きいが、イケブルやシンジェルはもっと人が多い」
「これより?」
エリナはもう一度街を見る。
まだ門にも入っていないのに。
「……すご」
テイルが笑った。
「王都行ったら固まりそうだな」
「うーん、否定できない」
「すでにもう固まってたけど」
「そうなっちゃうよ」
そんな話をしているうちに、荷馬車は門へ近づいていった。
簡単な確認を済ませ、街へ入る。
中はさらに人が多かった。
大きな通り。
左右に並ぶ店。
荷物を運ぶ人。
呼び込みの声。
馬車が通れるよう、道幅も広い。
リヴェルとはまた違う。
「店、多いな」
テイルがすぐに周囲を見る。
「あとで見に行こうぜ」
「宿が先」
エリナが言う。
「まだ着いたばっかだぞ」
「だからだよ。寝る場所決まってないでしょ」
「はいはい」
シアルが二人の間から言った。
「まず依頼を終わらせるぞ」
「それもあった」
「その次は武器屋だ」
「武器屋は行く理由ないだろ」
二人が同時に突っ込んだ。
荷馬車はしばらく街中を進み、やがて大きな倉庫の前で止まった。
ハインが荷台を確認する。
「よし。ここまでで大丈夫だ」
ガレスも周囲を見てから頷いた。
「荷物も問題なさそうですね」
「ああ。助かった」
ハインは青い灯の四人を見る。
「今回もありがとう」
それから、エリナたちへ向き直った。
「お前らもな」
エリナは少しだけ姿勢を正した。
「こちらこそ、色々ありがとうございました」
ハインが笑う。
「また機会があったらよろしく頼むよ」
テイルが荷馬車を見る。
「ササクレキノコの話、忘れないでよ」
「お前はそこか」
「成功したら情報料くらいくれよ」
「上手くいったらな。他にも何かあったら教えてくれ」
ハインはそう言ってから、エリナを見る。
「クレシマにも栽培の話が行くかもしれんな」
「ほんと?」
「まだ分からん」
「そっか」
それでも少し嬉しい。
自分の村では普通だったものが、どこかで役に立つかもしれない。
「じゃあな」
ハインが手を上げる。
「またどこかで会うこともあるだろ」
「うん」
テイルが答える。
シアルも軽く頭を下げた。
エリナも手を振った。
「ありがとうございました!」
ハインはそのまま荷馬車と一緒に倉庫の方へ向かっていった。
残った七人は、オルミアの冒険者ギルドへ向かう。
「こっちのギルドも大きいのかな」
エリナが聞く。
ルークが笑う。
「見れば分かる」
しばらく歩いて。
「……大きい」
また同じ言葉が出た。
リヴェルのギルドより、一回りどころではない。
出入りする冒険者の数も多い。
受付もいくつも並んでいる。
「ほんとに何でもでかいな」
テイルが言った。
中へ入り、ガレスが受付へ向かう。
「リヴェルからの護衛依頼。完了報告です」
受付の職員が書類を確認する。
依頼主の確認もすでに取れているらしく、手続きは思ったより早かった。
少し待ったあと、報酬が渡される。
ガレスが青い灯の分を受け取り、別にエリナたちの分も渡された。
テイルが金額を見る。
「……やっぱ少ないな」
「補佐だからな」
ガレスが言う。
今回の報酬は、青い灯の取り分と比べるとだいたい半分だった。
エリナも自分たちの取り分を見る。
「半分かぁ」
「E級だし、護衛補佐だしな」
シアルが言う。
ルークが横から笑った。
「上に行けば受けられる依頼も増えるし、報酬も変わるぞ」
「やっぱランク高い方がいいな」
テイルが言う。
エリナは少し考える。
確かに、お金だけならそうだ。
でも。
「でも、今回は結構得した気もする」
「得?」
テイルが見る。
「夜警とか、護衛の動きとか」
エリナは青い灯を見る。
「色々教えてもらったし」
シアルも頷いた。
「金だけじゃないな」
「俺も聞きたいこと結構聞けたし」
テイルが言う。
ルークが笑う。
「情報代込みなら安いだろ?」
「まあな」
セフィが言った。
「でも、初めての護衛であれだけできたなら十分だと思うよ」
ミレナも短く言う。
「悪くなかった」
エリナは少し嬉しくなる。
ガレスが三人を見る。
「お前ら、実力はありそうだから、あとは経験だな」
「はい」
エリナが答える。
「ありがとうございました」
シアルも頭を下げる。
「色々勉強になりました」
テイルも続いた。
「また一緒になったらよろしく」
「こっちこそな」
ルークが手を上げる。
セフィも笑う。
「怪我しないでね」
「はい!」
エリナが答える。
ミレナも軽く手を上げた。
「じゃあね」
最後にガレス。
「オルミアでも無茶するなよ」
「分かってる」
テイルが言う。
ガレスが少しだけ眉を上げる。
「お前が言うとちょっと不安だな」
「なんでだよ」
ルークが吹き出した。
それから青い灯の四人は、ギルドの奥へ向かっていった。
エリナはその背中を少しだけ見送る。
五日間。
長いと思っていた。
でも終わってみると、思ったより早かった。
「さて」
テイルが言う。
「自由だ」
「その前に」
エリナが即座に返す。
「宿」
「あ」
「やっぱり忘れてたでしょ」
「覚えてたって」
シアルがため息をついた。
「受付で聞いてみよう」
「そうだね」
三人はもう一度受付へ向かう。
エリナが職員へ声をかけた。
「あの、三人で泊まれる宿ってありますか?」
「予算は?」
エリナが少し考える。
「安めで、でもあんまりボロボロじゃないところ」
「ボロボロじゃないところ」
テイルが横から言う。
「大事なことは二回」
受付の職員が少し笑う。
「それなら、ここから少し歩いたところに『銀の枝亭』がありますよ」
「銀の枝亭?」
「冒険者もよく泊まります。値段もそこまで高くないし、食事も悪くないです」
エリナの反応が少し変わった。
「食事も?」
「いつも食べることばかり考えてるな」
テイルが言う。
「それも大事だから!」
語気は強いが否定はしなかった。
シアルが受付に聞く。
「場所を教えてもらえますか?」
簡単に道を聞く。
ギルドを出る。
目の前には、まだ見慣れない大きな街が広がっていた。
テイルが言う。
「じゃあ行ってみるか」
エリナも頷く。
「うん」
まずは宿。
そのあとは。
せっかく来た、新しい街。
見たいものはたくさんあった。
三人は教えてもらった宿へ向かって歩き始めた。




