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白銀の足跡 ~少女の旅路~ 愛おしい冒険者生活  作者: 火年
第一章 リヴェルからエルフの街へ
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第21話 『すぐ戻ると思ってた』――依頼主はテイルのよく知る商人だった

翌朝。


エリナたちは荷物を背負い、いつもより少し早い時間に冒険者ギルドへ向かった。

三人とも一人用のテントを持っているせいで、いつもより荷物が多い。


「重くない?」

エリナがテイルを見る。


「まだ平気。エリナこそ大丈夫?」

「大丈夫。ちゃんと持てる量にしたから」


「荷物は馬車に乗せてもらえるみたいだから大丈夫だろ」

ギルドの扉を開ける。


朝のギルドはすでに人が多かった。

依頼を探す冒険者や、出発前に食事をしている者。


その中で、受付にいたリオネが三人を見つけた。

「おはようございます。ちょうど皆さんも来ていますよ」


「皆さん?」

エリナが首を傾げると、リオネが受付の横に立っていた四人へ目を向けた。


「今回、護衛を担当するC級の『青い灯』です」

四人がこちらを見る。


先頭に立っていたのは、背の高い男だった。

二十代後半くらいだろうか。

装備は派手ではないが、使い込まれているのが分かる。

その隣には、少し若そうな男。


こちらは先頭の男より表情が柔らかく、エリナたちを見ると軽く手を上げた。

少し離れたところには軽装の女性。

荷物も他の三人より少なく、腰回りに細かな道具をいくつも付けている。


最後の一人は、穏やかな雰囲気の女性だった。

他の三人ほど武装しているようには見えない。


最初の男が一歩前へ出た。

「ガレスだ。今回の護衛では俺たちが主担当になる」

隣の男も続く。


「ルークだ。よろしくな」

「私はミレナ」

軽装の女性は短く名乗った。

最後の女性が少し笑う。

「セフィです。怪我したら私のところに来てね。できれば怪我しないでほしいけど」

「はい!」


エリナは思わず少し元気よく返事をした。


それから自分たちも名乗る。

「白銀の足跡のシアルです」

「エリナです」

「テイル。よろしく」


ガレスは三人を順番に見た。

「E級三人だったな。護衛補佐は初めてか?」

「はい」

エリナが答える。


「分かった。道中の細かいことはその都度話す。分からないことがあったら勝手に判断する前に聞いてくれ」


言い方ははっきりしていたが、嫌な感じはしなかった。

リオネが言っていた通り、護衛を任されるだけあって慣れているのだろう。


ルークが笑う。

「そんな緊張しなくていいぞ。俺たちも最初から護衛できたわけじゃないし」

「お前が言うと余計不安になる」

ミレナが言った。

「なんでだよ」

思っていたより話しやすそうな人たちだった。


「では、依頼主のところへ向かってください」

リオネが言う。


その言葉で、エリナは受付を見る。

何度も依頼を受けた場所。

初めて来た日には、何をしたらいいのかも分からなかった。

今ではここへ来ることが、すっかり普通になっている。


「リオネさん」

「はい?」

「今までありがとうございました」

リオネが少し驚いた顔をした。


「悪い知らせじゃなくて、いい知らせを期待してますね」


大きな功績を上げたり、逆に旅先で命を落としたりすれば、登録したギルドにも知らせが届くらしい。


「悪い知らせになる前に帰ってくるね」

「無理せず、いつでも戻ってきてください」

リオネが少し心配しながら笑う。


「三人とも、気をつけて」

「はい」

シアルとテイルも軽く頭を下げた。


三人は青い灯と一緒にギルドを出た。


依頼主との待ち合わせ場所は、街の門近くにある荷馬車置き場だった。

そこには、二頭の馬につながれた大きな幌付きの荷馬車が止まっていた。


エリナが今まで見たものより一回り大きい。

荷台には木箱や袋が隙間なく積まれている。


その横で荷物を確認していた男が、こちらに気づいた。


「お、来たか」

四十代くらいの男だった。

ガレスが手を上げる。

「ハインさん。今回もよろしく」

「ああ。『青い灯』なら安心だ」


そこで男の視線がエリナたちへ移った。

そしてテイルを見たところで止まる。

「……ん?」

テイルが笑った。

「久しぶり、ハインさん」

「やっぱりそうか。お前、ベルドさんの息子じゃないか」

「そうそう」

ハインは少し驚いた顔でテイルを見る。


「冒険者になったとは聞いてたが、本当にやってたのか」

「本当にって何だよ」

「ベルドさんから聞いた時は、すぐ家に戻ると思ってた」

「ひどくない?」

「お前ならありそうだろ」


「否定しづらいな」

シアルが横から言う。


「シアルもいるじゃないか」

「お久しぶりです」


ハインはシアルの顔も知っているらしい。


エリナも、どこかで見たことがあるような気がした。

クレシマ村で、この大きな荷馬車を何度か見たのかもしれない。


「そっちの子は?」

「エリナ。俺たちの仲間」

「エリナです。よろしくお願いします」

「ハインだ。よろしくな」


挨拶を終えると、ハインは荷馬車を軽く叩いた。


「今回はこいつをオルミアまで運ぶ。リヴェル周辺で仕入れた商品が中心だ」

荷台には食料品らしい袋や、木箱、革で包まれた荷物などが積まれている。


「いつもは別の連中に頼むことが多いんだが、今ちょっと里帰りしててな」

「里帰り?」

テイルが聞く。


「ああ。しばらく休むってさ。それで今回は『青い灯』に頼んだ」

ガレスが頷く。


「俺たちもハインさんの護衛は何度かやってる」

「こいつらなら信用できるし、今回は補佐もリオネさんが選んだって聞いてる。ずいぶん安心な旅になったよ」


そう言われると、エリナは少しだけ背筋が伸びた。

自分たちは青い灯ほど経験があるわけではない。


それでも、護衛の一員として数えられている。

ハインが続ける。

「オルミアまでは五日くらいを見てる。天気や道の状態で多少前後するけどな」

「五日……」

エリナがつぶやく。


今までの一泊依頼とは比べものにならない。

本当に別の街へ旅をするのだ。


「食事はこっちで干し肉とパンを用意してある。水は途中で補給できる場所がある」

「干し肉とパンかあ」


エリナは荷物の中にササクレキノコが入っていることを確認した。

「もう食うこと考えてる?」

「カバンの中見てただけじゃない」

「絶対、食うこと考えてた」

「荷物確認してただけ」

「よだれたれそうな顔してたぞ」

「してない!」


ルークが笑う。

「なんか賑やかな補佐が来たな」

「静かな方がよかった?」

テイルが聞く。

「いや。五日あるんだ。そっちの方が退屈しなさそうだ」


ガレスが荷馬車の周囲を確認する。

「そろそろ出よう。最初の休憩場所までは街道をまっすぐだ」


エリナたちも荷物を荷台の隅へ積ませてもらう。

当然、エリナの弓と矢筒や、シアルとテイルの武器は手元に残した。


後ろを見る。

リヴェルの街。

初めて村の外へ出て、冒険者になった場所。

シアルとテイルに出会った場所。


そしてリオネさん、子フェンリルともお別れ。

ほんの少しだけ名残惜しい。

「エリナ、行くぞ」

シアルに呼ばれる。

「うん」

二頭の馬がゆっくり歩き始めた。


大きな荷馬車の車輪が回る。

エリナたちも、その横を歩き出した。


白銀の足跡にとって初めての、

街から街への旅が始まった。

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