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白銀の足跡 ~少女の旅路~ 愛おしい冒険者生活  作者: 火年
第一章 リヴェルからエルフの街へ
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第2話 (前編)まずは装備から

翌朝。

エリナが冒険者ギルドの中で待っていると、入口からシアルとテイルが入ってきた。


「おはよう」

エリナが手を上げる。


「おはよう」

「おはよ。早いな」

テイルが答えた。


昨日は食堂で座っている二人しか見ていなかったので、こうして改めて見るとやっぱり大きい。


二人ともエリナより頭一つ以上高かった。


テイルは金色のつんつんした髪に、動きやすそうな服。

服には妙にポケットが多く、腰には片手剣を下げている。


シアルは濃い紺色の髪を後ろで軽く結び、腰にはロングソード。

背中には盾まである。


二人とも、いかにもこれから冒険へ出るような格好だった。

エリナも自分を見る。


村から着てきた動きやすい服。

背中には弓。

腰には短剣。

そして矢筒。


自分だって、それなりには冒険者らしいはず。


「……エリナ」

テイルがエリナを見ている。

「なに?」

「矢、少なくない?」

「え?」


エリナは自分の矢筒を見る。


「ちゃんと三本あるよ」

「三本しかないじゃん」

「三本あれば十分でしょ」


テイルがシアルを見る。


「いや、足りないだろ」

「え!?」

二人とも同じことを言う。


「村ではずっとこれでやってたよ」

「何に使ってたんだ?」


テイルが聞く。


「ウサギ狩り」

「三本で?」

「だって撃ったら拾うし」

「……ああ」


テイルが一瞬納得しかける。

だが、すぐに首を振った。


「いやいや、冒険中もそれやるつもり?」

「使える矢を拾うのは普通でしょ?」


「拾うのは普通だけど、戦ってる途中に毎回拾いには行けないだろ」

シアルにも言われて、エリナは少し考えた。


確かに。

ウサギなら一匹を狙って、一発撃てば終わる。

でも魔物が何匹もいたら。

三本撃ったあと、


「ちょっと矢拾ってくるから待ってて」


とはいかない。


「……それはそうかも」

「かもじゃない」

シアルが淡々と返す。

テイルが笑いをこらえている。


「でも、ウサギならこれで足りてたんだから」

「そんなに当たるの?」

「ほとんど外さないよ」

「ほとんど?」

「ウサギなら外したのいつかなって感じ、一年前くらい?」

しばらく沈黙。


「魔物には?」

「……撃ったことない」

「でも矢が三本って……」

「村じゃ困らなかったの!」

エリナは矢筒を抱える。


すると、テイルがその後ろにある弓に目を向けた。

「それ、村で使ってた弓?」

「そうだけど」

「ちょっと見せて」

「いいよ」


エリナは背中から弓を外し、テイルに渡した。


村にいた頃から使っている弓だ。

派手な飾りはない。

木を削って作られた、ごく普通の弓にしか見えない。


テイルも最初は軽い調子で受け取った。


「ふーん」


弦を見る。

握るところを見る。

弓の端を見る。

何度か角度を変える。


「これ、思ったよりいいぞ」

さっきまで笑っていたテイルの顔が少し真面目になる。


「そうなの?」

昔からこれを使っていたので、他の弓を知らない。


「木も悪くないし、ちゃんと左右揃ってる」

テイルが弓を眺めながら言う。


「握るところも丁寧だな」

それを聞いたシアルも近づいてきた。


「俺にも見せて」

テイルから弓を受け取る。


シアルは弓全体を見てから、軽くしならせた。

「……本当だ」

「でしょ?」

シアルが弓の端を指でなぞる。


「弦を掛ける部分がかなり丁寧に削ってある。左右の曲がり方もきれいだし、変なねじれもない」


シアルの声が、さっきまでより少しだけ楽しそうに聞こえる。

武器が好きなのだろうか。


「そんなにいいの?」

エリナが聞く。


「ああ。高価な材料じゃないけど、かなりちゃんと作ってある」

シアルが弓を返してくる。


昨日までは二人よりずっと装備が貧弱だと思っていた。

その二人から自分の弓を褒められると、思った以上に嬉しかった。


「これ、誰が作ったの?」

テイルが聞く。

「村のおじいちゃん」

「弓職人?」


「職人っていうのかな。弓とか農具とか、いろんなもの作ったり直したりしてる人」

「へえ」


シアルがもう一度弓を見る。

「これ作ったやつはいい奴だな」

「なんで?」


エリナが笑う。


「いい仕事する奴に悪い奴はいない」

「いるだろ」


テイルが即座に突っ込んだ。


「そうかな」

「絶対いる」

シアルがエリナを見る。


「その爺さん、いい人だった?」

「すごくいい人だったよ」

「ほら」


シアルは勝ち誇った顔をした。

それを見てエリナは思わず笑った。


昨日知り合ったばかりなのに、この二人とは妙に話しやすい。


「でも」

シアルがエリナの装備へ目を戻した。


「弓はいいとして、他は?」

「他?」

「短剣は?」

「ある」


エリナは腰の短剣を見せる。


「予備の弦は?」

「ない」

「火打ち石」

「ない」


「水筒は?」

「小さいのならある」

「それじゃ足りないな」


テイルがエリナを見る。


「……冒険者だよね?」

「冒険者だよ」


「登録証貰えた?」

「貰えたよ!」


「じゃあ一応冒険者だな」

「一応とか言わないで!」

シアルが小さく息を吐く。


「まあ、とりあえず必要なもの買いに行こう」


「依頼は?」

「そのあと」


「そんなにダメ?」

「冒険者としてはだめだろう」


シアルが言う。

「予備の弦。火を起こす道具。保存食。水筒は持っておいた方がいい」


言われてみると、どれも必要そうだ。

エリナは自分の財布を思い出す。


五日間、薬草を分けたり、荷物を運んだり、食堂で働いたりして貯めたお金。

そんなに多くはない。


「……あんまりお金ないんだけど」

「必要なものだけにすればいい」

シアルが言う。

テイルも頷く。


「値段は俺が見るよ。変なの掴まされないようにな」

それはありがたい。

商人の家で育ったという話を昨日少し聞いた。

こういうときは頼れそうだった。


エリナは腰のポーチに手を当て、中に隠れたなけなしの銅貨たちの無事を祈った。



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