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白銀の足跡 ~少女の旅路~ 愛おしい冒険者生活  作者: 火年
第一章 リヴェルからエルフの街へ
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第15話 え、他の街に行くの!?

ギルドでEランクへの更新を終えたあと。


「なんで二人はEランク目指してたの?」

冒険者証を見ながら聞くと、シアルが少し考える。


「その話もあるし、今後のこともある」

「今後?」

「飯食いながら話そう」


そう言って、シアルは併設の酒場の方へ目を向けた。


テイルが受付へ向き直った。

「リオネさん」

「なに?」

「オルミア行きの護衛補佐って、今なんか出てる?」


エリナは横から顔を出した。

「オルミア?」

リオネは依頼書を何枚か確認する。


「今はないわね。荷馬車の護衛ならたまにあるけど、今日は出てない」

「そっか」

テイルが少し残念そうに肩をすくめた。


そのとき。

ギルドの入口の方が少しざわついた。

エリナが見ると、『ゴブリン狩り』の四人が外へ出ていくところだった。


荷物もまとめ終わっているようだ。

「え、もう行くの?」

「みたいだな」

シアルもそちらを見る。

テイルが首を傾げた。


「今日来て、今日ゴブリン倒して、もう次?」

「忙しい人たちだね」


リオネが苦笑する。

「ゴブリン専門でやってる人たちは、いろんな街から呼ばれるのよ」

「そんなにゴブリンっているの?」

「いるわよ」

リオネは即答した。


「それと、増えるのが早いから放っておくと、どんどん危険になるの。それに危険な割に報酬がすごくいいわけでもないから」

「割に合わないってこと?」

「そういうこと」

リオネは小さく頷いた。


「だから、ああいう専門で引き受けてくれる人たちはギルドとしてはかなり助かるの」

エリナはもう一度、外へ消えていった四人の背中を見る。


強いから重宝されている。

そんな単純な話でもないらしい。


「じゃ、飯にしようぜ」

テイルの一言で、話はあっさり終わった。

三人はそのままギルド併設の酒場へ向かう。


ちょうど食事時で、店の中には冒険者たちが何人もいた。

焼いた肉の匂いと、煮込み料理の匂いが混ざっている。


エリナは入口近くの黒板に書かれた値段を見る。

「……これにしよ」

選んだのは、一番安い豆と野菜の煮込みだった。

パンも付いている。


テイルが横から覗き込む。

「それだけ?」

「十分でしょ」

「今日はEランクになったんだぞ?」

「だからってお金が増えるわけじゃないから」

「夢がないなあ」

「財布の中は現実しかないの」


テイルは迷うことなく肉料理を頼んだ。

厚めに切った肉を焼いて、横に芋が添えてある。

シアルは少しだけメニューを見て、

「俺もそれでいい」

とテイルと同じものを頼んだ。

「シアルまで同じの?」

「何でもいいからな」

「それ、一番高いの頼む人のセリフじゃないんだけど」

エリナが言うと、シアルは値段を見た。

「……そうなのか」

「見てなかったの?」

「見てなかった」

「もう」

やがて料理が運ばれてくる。


エリナの前には湯気の立つ煮込み。

テイルとシアルの前には、いい匂いのする焼いた肉。

エリナは一瞬そちらを見る。

テイルが気づいた。


「食う?」

「いらない」

「今欲しそうに見ただろ」

「ただ見ただけ」

エリナは煮込みを一口食べた。

少し薄味だけど、豆は柔らかい。

悪くない。


「で」

スプーンを置いて、エリナは二人を見る。

「なんでEランク目指してたの?」


「ああ、それな」

テイルが肉を切りながら答える。

「Eランクになると、護衛の補佐ができるから」

「護衛の補佐?」

「そう」


シアルが続ける。

「普通の護衛を任されるには、まだ信用が足りない。でもEランクなら、護衛についていく補助役の仕事が受けられる」

「へえ」

エリナは初めて聞いたという顔をする。


少し前までランクそのものを知らなかったのだから当然だった。

「それでオルミア?」

「そういうこと」

テイルが頷く。


「俺たち、ずっとリヴェルにいるつもりじゃなかったから」

エリナの手が少し止まった。

「そうなの?」

「最初からな」

シアルは普通のことのように答える。


「先のことまで考えてるわけじゃないけど、まずはオルミアに行こうと思ってた」

「オルミアって、どんなところ?」

「リヴェルよりずっと大きい街らしい」

シアルが答える。


オルミアは、いくつもの街道が集まる中都市。

商人も旅人も多く、店も宿もリヴェルよりずっと多い。

冒険者ギルドも大きく、いろいろな仕事が集まるらしい。


リヴェルも周辺の村から見れば十分に栄えた街だ。

けれど国全体で見れば、まだ地方の街の一つ。

オルミアは、それより一段大きい。


「都会なんだ」

エリナが少し目を輝かせる。

「たぶんな」

テイルが笑う。


「店も多いらしいぞ」

「お菓子屋も?」

「まぁ、そりゃ多いんじゃね?」

「見たことないお菓子もありそうだね」

シアルは気にせず肉を食べている。


「それで、どうせ移動するなら護衛の仕事を受けながら行こうって話してた」

「歩くだけより金になるしな」

テイルが続ける。


「旅費も浮くし、経験にもなる」

「なるほど」

それならEランクを目指していた理由も分かる。


ただ旅をするだけではなく、冒険者らしく仕事をしながら次の街へ向かう。

エリナは少しだけ楽しそうだと思った。


「じゃあ、すぐオルミアに行くの?」

「護衛補佐の依頼があればな」

シアルが答える。

「急いではないけど」

「向こう行ったら、しばらくいると思う」

テイルがパンをちぎりながら言った。

「なんで?」

「ランク」


エリナは首を傾げる。

テイルが少し笑った。

「説明必要か?」

「今は知ってるから!」


シアルが口を挟む。

「ランクは、その街でどれだけ実績を積んだかが大きいからな」

大きな功績なら別の街にも伝わる。

けれど、小さな依頼を一つ二つ達成した程度では、いちいち他のギルドまで情報は回らない。


だから上のランクを目指すなら、一つの街である程度実績を積む必要がある。

「じゃあオルミアに行ったら、またそこで仕事するんだ」

「ああ」

「Dランクになるまではいるかもな」

テイルが言う。

「そのあとは?」

エリナが聞く。


二人は顔を見合わせた。

シアルが先に答える。

「そこまでは決めてない」

「俺は面白そうなところがあれば、どこでもいいけど」

「それは知ってる」

エリナは煮込みをもう一口食べた。


オルミア。

リヴェルより大きな街。

知らない店。

知らない人。

新しい依頼。

想像すると、少しわくわくする。


そのとき。

シアルが何気なく聞いた。

「エリナはどうする?」

「え?」

エリナはスプーンを持ったまま、二人を見た。


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