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白銀の足跡 ~少女の旅路~ 愛おしい冒険者生活  作者: 火年
第一章 リヴェルからエルフの街へ
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第9話 ギルドへ報告――世の中いろんな魔獣がいるらしい! 

「それで、白い子犬みたいなのとご飯を食べてたら、……ものすごく大きいのが出てきたんです」


ギルドへ戻ったエリナは、カウンター越しに今日の出来事を説明していた。


リオネは途中で口を挟まず、最後まで聞いてから小さく息を吐いた。


「白い毛。銀色に光って見える体毛。それに、あの森でその大きさなら……フェンリルで間違いないと思うわ」


「やっぱりそうなんだ……」

改めて言われると、急に現実味が増した。


テイルが隣で腕を組む。

「あのとき、急に寒くなったよな」

「見た瞬間、普通じゃないって分かった」

「でも子フェンリルはめちゃくちゃかわいかった」

三人はその時のことを思い出していた。


エリナはそこで、そっとポーチを押さえた。

中には、あの白い石が入っている。

「それと、これなんですけど……」


周囲を確認してから取り出すと、リオネの目がわずかに細くなった。


「……ずいぶん変わった石ね」

「フェンリルが置いていったんです」

「置いていった?」

「たぶん、子供にご飯あげたお礼だと思います」


リオネはしばらく白い石を眺めたものの、首を横に振った。

「私にも何なのかは分からないわ」

「少し預からせてもらっていい? ギルドで調べてみるわ」

「はい」

「すごい価値があるかもしれないから、念のため他の人には言わない方がいいわ」

「変に目立ちそうですよね」

「ええ。いろんな人がいるから気をつけて」


「それと、一応その場所は確認してもらうわ。子供を迎えに来ただけみたいだけど、森の浅い場所までフェンリルが出てきたのは事実だから」


そう言って、近くにいた冒険者たちへ目を向ける。


すると。

「おい、今フェンリルって言ったか?」

さっそく一人が食いついた。

「本当にいたのかよ!」

「森の主だぞ?」

あっという間に何人かが集まってくる。


「……なんか始まったな」

テイルが楽しそうに笑った。

「こういう話、好きそうだもんね」

エリナも少し前のめりになる。

髭の濃い冒険者が得意げに胸を張った。


「フェンリルもすげえが、俺は昔、超大型のドラゴンを見たことあるぞ」

「ドラゴン!?」

エリナが声を上げる。


「空飛んでたんだよ。でっかい翼を広げてな。遠くから見ただけなのに、山の上を影が流れていった」

「あれは火竜イグナディスだったかもな」

男は両手を大きく広げた。


「翼を一回動かすだけで、雲が崩れるみたいだった」

「そんなに大きいの?」

「ありゃ相当でかい!」


別の冒険者が笑った。

「ドラゴンもすごいけど、海の方じゃ船よりでかいイカが出るって話だぞ」

「船より?」

テイルが目を丸くする。


「足だけで船をひっくり返すって話だ」

「絶対海行きたくない」

エリナが即答した。


「いやいや、海ならシーサーペントだろ」

別の男が割って入る。

「何それ?」

「海にいる長い竜みたいな魔物だ。船の横に並んで泳ぐだけで、乗ってる奴ら全員黙るらしいぞ」


「襲ってくるのか?」

シアルが聞く。

「基本は無視される。けど機嫌が悪いと、一噛みで船が真っ二つだ。乗ってる奴らは黙って祈るしかないぞ」

「それは怖すぎるだろ」

テイルが笑った。


すると、奥で酒を飲んでいた年配の冒険者が鼻を鳴らした。

「まぁ見やすいのはあれだな」

「なんだよ、じいさん。何か見たことあんのか?」

「フェニックスなら見たことある」

「本当に?」

「あいつは敵意がない人間には無関心だからな」

老人は杯を置いた。


「夕焼けより赤い鳥だった。羽ばたくたびに、火の粉みたいな光が落ちてたよ」

「燃えてるの?」

「燃えてるように見えた。でも森は焼けなかった」

「……すごいな」

「運がよければ見ることもあるかもな」

シアルが珍しく素直に呟いた。


その後も冒険者たちの話は止まらなかった。


テイルは目を輝かせる。

「なあ、そういうのって探しに行けば会えるのか?」

「観光みたいなものはある、それ以外はやめとけ」


「観光なんてあるの?」

「ドラゴンが来る街がある。そこではちょっと離れたところで見れるぞ」

「他はやめとけ」

「出くわすのが幸運か不運か分からん連中だからな」

「フェンリルに会って無事だっただけで十分だ」

笑い声が広がる。


エリナはその話を聞きながら、少しだけ胸が弾んでいた。


怖い。

でも、知らない世界には、まだそんなものが本当にいる。


「いつか見てみたい」

テイルが言う。

「俺も」

シアルも頷いた。


「私も……ドラゴンはちょっと見たいかも」

「観光なんて飼いならしてるのかな?」

「どうなんだろう」


ひとしきり話を聞いたあと、三人は依頼掲示板の前へ移動した。


エリナは財布の中身を思い出す。

装備を揃えた分は、まだ完全には戻っていない。


「明日もウサギにする?」

「またか?」

「手堅いでしょ」

「俺たち、そろそろウサギ専門冒険者になりそうだな」

テイルが言う。

「ちゃんと報酬になるんだからいいの」


そのとき。

「ふふ。ウサギ狩りもいいけど」


カウンターの奥から、リオネが一枚の紙を持ってやってきた。

「あなたたち、そろそろちょっと遠出してみない?」


三人が振り返る。

「遠出?」

「街から歩いて片道1日かからないくらいの場所よ」


リオネは依頼書を掲示板へ置いた。

「本当は別のパーティーが行く予定だったんだけど……」

少し困ったように笑う。

「昨日、全員毒キノコを食べて寝込んじゃったの」

「全員?」

「全員」

エリナは思わず顔をしかめた。


「ちゃんと見れば誰でもわかるのに……」


テイルが依頼書を覗き込む。

「さすがにこの距離、一日じゃ帰ってこられないな」

「そうね。一泊する予定になるわ。テントとかは今回、無料で貸し出すから」

その言葉に、三人の空気が変わった。


野営。

街から離れた場所。

初めての一泊。


エリナはシアルとテイルを見る。

二人も同じようにこちらを見ていた。

「遠征……!」

明日は、初めて街の外で夜を越す。

エリナは、依頼書をもう一度見つめた。


三人は顔を合わせ頷いた。

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