時間いっぱいまで
「さとみくん。おはよう」
「…ん、おはよう。える」
さとみくんとのこのやり取りが当たり前になってきて自然と笑みがこぼれる。でも一つだけ困ったこともあって。
「ねぇさとみくん。さとみくんのクラスは隣だよ?」
「うん。知ってる」
クラスが違うさとみくんは、学校に着いてからもずっと私のそばにいて、中々自分の教室には行こうとしない。そしてそれが毎日続いている。それだけならいいんだけど……
「えっと……さとみくん、そんなに毎日見つめられると…その……」
「──?」
さとみくんは一瞬たりとも目を逸らすことなく私を見つめていた。戸惑う私でさえも目に焼きつけるみたいに。それが毎日は、やっぱり困る……。
そんなさとみくんを
「はいはい、お前のクラスあっちな」
三浦くんが引っ張って隣のクラスへ連れて行こうとする。引っ張られたさとみくんはいつも不機嫌になるけれど
「また後でね。さとみくん」
と笑いかければ
「……またね。える」
さとみくんも笑顔になり、私が手を振ると同じように手を振って自分のクラスに戻って行く。それが学校へ来るようになったさとみくんとの日常になった。
「アイツ学校来るようになってからいつもああだけど、よくかまってられんな」
「ふふ。だって幼馴染だから。それに…さとみくんがここにいるのが嬉しいの」
見つめられるのは困ってしまうけれど、さとみくんと一緒にいられる時間が増えたのはそれ以上に嬉しいことだった。私がそう答えると怪訝そうな顔をした三浦くんから
「変わってんな」
そう言われておかしなことを言ってしまったと気づく。けれど、それでも……この嬉しさを忘れたくなかった。離れていた時間の不安を忘れさせてくれる気がしたから。
やっぱりずっとえるといる方がいい。ホントは同じクラスだったら良かったけど。そしたら授業中もえるを見てられる。今まではずっとそうだったのに。全部春が悪い。そのせいでえると離れなくちゃいけなくなって……まぁでも、離れてた時間が全部無駄だったわけじゃないし。むしろ…離れてた分そばにいられると嬉しく感じる。えるもきっと同じ。離れててもそばにいてもえるはずっとオレを見てくれる。それが知れてよかった。やっぱりオレにはえるしかいない。分かりきってることの方が何回でも感じたい。える以外いらないって他の奴といる度に思えた。えるも……きっとそう。オレ以外いらないって思ってくれてる。もっともっと思ってもらわなきゃ。この時間はえるのだよ。全部あげるから、えるのも……くれるよね──────。




