その瞳に映り続ける方法
もう戻りたくない春の話。
初めてえるとクラスが違った。一緒にいられないのが嫌で、学校に行かずにその辺で時間潰して、えるが帰ってくる頃に家の前で待っていた。そしたらオレを見つけたえるが駆け寄ってきて、それがすごく可愛かった。オレのために一生懸命走ってきて……寂しかったのはオレだけじゃなかったんだ……って。でも、えるの顔には寂しさだけじゃないものもあった。それは顔を見ればすぐに分かることで、えるは…オレのこと心配してる。どこに行ってたのか、何かあったのか、そんなことを思ってる顔。えるのことなら全部知ってるから。なんでも分かるよ。
「さとみくん…!よかった……今日、学校来てないみたいだったから…。具合悪かったの?それとも……何かあった?」
やっぱりそうだ。えるがオレのこと心配してくれてる。オレのことで頭いっぱいになってる。……うれしい。
……────オレが離れたら、えるの瞳にはオレだけが映るんだ。心配で泣きそうな顔で、オレだけを見てくれるんだ。それなら────学校、行かなくていいや。えるもいないし。
それからはほとんど学校に行かず、えるに会えるまで適当に時間を潰した。そんな時、話聞いてた女の所に彼氏って奴がやってきて、すげー殴られた。体のあちこち痛くて血も出てたりした。そんなオレを
「──!! さとみくん…!どうしたの!?ひどい怪我……」
オレよりもずっと苦しそうな顔をしてえるが見つめてた。その後すぐに手当をしてくれた。しばらくして手当が終わりそうになった頃。えるが俯いてしまった。
「える?」
えるも何かあったのかと心配になった。
もし何かあったなら様子を見に学校行かないと────。
「……っ、ごめん…さとみくん……」
えるがそう言った瞬間、オレの手に雫が落ちてきた。
えるが─────泣いてる。オレが怪我、したから…?えるがオレのために─────。その姿を見たのはずっと昔の話で、あの時が最後だと思ってた。えるがオレのために泣いてるのは嬉しい。けど……やっぱりこの顔は見たくない。もっと気をつけないと。……でも、怪我しないとえるが心配してくれなくなる。だから今度からは軽めの怪我にしよう。オレも痛いのは嫌だし。学校に行かないだけじゃそのうちどうでもよくなる。そうならないように、適度に怪我しとかないと。心配も不安も少しでも多くあった方がすぐオレのところに来てくれる。
えるの瞳にオレだけが映るように。
この時間だけが────オレの救い、だから。




